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茗荷亭の10年(その2) [日常]

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2005年の夏上棟,翌2006年の夏に外壁まで完成した茶室風建築物・茗荷亭ですが,その続報です。

3年で出た外壁のはがれ(2009.09頃)
 
内壁は2007頃完成も丸窓の処理は未完(同上)
 
化粧屋根裏と照明(同上)
 
出窓で簡易な水屋(同上)
 
外壁剥がれがぼつぼつ(同上)
 
連子窓(同上)
 
壁床(同上)
名称は構想した頃から決めていました。周りにミョウガが大量に生えているというだけのことです。胡桃の厚板に墨で揮毫しました。木に直書きだと緊張します。それはそうと,着工後4年,外壁塗り後3年で手抜きした漆喰が剥がれて来ています。

壁は,土壁にしたかったのですが,無理だと判断しました。何故なら壁素材の粘土の入手が難しい上に,ただこねただけではダメなのです。古い土壁を配合した上に,切り藁を混ぜ込んで練って寝かせ,枯草菌を繁殖させてねっとりさせないと,塗れません。さらに,土の壁材もさることながら,土壁の下地は竹小舞を編み付けないといけません。一般民家ですと,木製の小舞を荒縄などで縛りつけて行きますが,茶室ではそれを竹でやり,藤蔓やあけび蔓で編んで行きます。極端に言えば竹籠を編む様なものです。

屋根は1ヶ月ほどで完成しました(平日の夜も作業したりして,がんばりました)が,壁をそれでやっていると,何時まで掛かるか分かりません。屋根はあっても,横から風雨が吹き込んで内部が痛みます。ここは割り切って,現代風に外側は9mmのOSBボード(場所により構造用合板),内側は石膏ボードとしました。内部は30mmの断熱材(商品名スタイロフォーム)を使いました。まず柱のセンターに30mm角の竿を打付け,内外壁を打付けました。ここは強度面もありコーススレッドを使いました。

まず,外壁材を張った後,内側からスタイロフォーム断熱材をはめ込みます。その上に9.5mmの石膏ボードを張り,パテ処理の後,和紙風の壁紙で仕上げました。外装は妻部分はアスファルト紙にメタルラスを塗ってモルタルを塗り,上塗りを漆喰で仕上げました。妻以外の壁はついつい手抜きをして,ボードの上に直接漆喰を塗ってしましたが,これが失敗の元,数年で殆ど剥がれてしまう事になってしまいました。特に西日が当たり庇も浅い西側が酷くなったので,数年後にはモルタルに塗り替えました。

屋根には少し工夫をしました。本格的な茶室でも,屋根にトタン板を使ったものがありますが,私にはそれはいただけません。屋根葺き材には,和の素材を使いたいところですが,そこも割り切ってアスファルトルーフィングを敷いた上に,アスファルトシングルを張りました。濃いグレーのものを使い,さほど違和感がありません。

むしろ,屋根の内部は凝りました。屋根の野地板の室内側は化粧屋根裏とする為電気鉋で,垂木は手鉋で仕上げました。数寄屋風な軽快な薄い屋根にすると,断熱が悪くなり日光の直射で内部が暑くなりますので,野地板の上に直接屋根材を張らず,30mm浮かせて通気させました。厚いほど断熱は良いですが,外観が重くならないギリギリです。野地板上に熱線をカットするため蒸着フィルムを敷き詰め,室内部分のみ25mm厚の断熱材を配置し,隙間を作り通風させます。ごく薄い屋根ですが,軒から入って暖められた空気が妻の頂上の穴から逃がす仕組みになっています。なお,断熱材があるのは室内に面する部分のみで,かなり広い庇部分の屋根内部は30mm厚分がスカスカに通気するようにしています。外見からは何の変哲もないシンプルな屋根ですが,その効果は真夏に見に来た一級建築士の義兄に太鼓判をもらいました。

既に壁を張っていた部分を出窓状に切り開いて,簡易な作り付けの水屋を作りました。8寸ほど出しただけですが,これが結構便利です。内部は杉板などを配して,それらしい雰囲気にしました。水道工事はしていません。

入り口(貴人口)の軒の屋根と水屋に付けた小屋根にはルーフィングの上に杉皮を張りましたが,これが現在ぼろぼろになってみすぼらしくなっています。中途半端に自然素材使うよりも,アスファルトシングルで統一した方が良かったと思っています。この中途半端さは,手抜きでボード上に直接薄い漆喰を塗ったことについても言え,これは僅か2,3年しか持ちませんでした。

下地窓は,本来は土壁の下地の竹小舞を見せるものですが,何分ボード壁ですので,そこだけ竹格子をはめ込んで連子窓としました。これはインチキですので,偽物感がありありです。

茶室に床は必需品です。ここは凝ったものは止めで,最もシンプルな壁床としました。織部板と称するものをはめ込み,軸を吊るせる様に金具をつけます。この時点ではまだ金具は付けていません。

電気配線は,表に出ると興ざめですので,配電は母屋から地下ケーブルで引き,なるべく見えない様にしましたが,室内は真壁作りの上,天井を張らず化粧屋根裏なので,どうしても一部見えているところはあります。今後工夫の余地があります。照明器具は,古家で使っていたものを再利用していますので,蛍光灯4灯に,貴人口上の茗荷亭のカンバンの場所には小さな裸電球をつけました。そのスイッチが2箇所,3Pコンセントを2箇所に付けました。

「茗荷亭」では照明器具に限らず,母屋をリフォームした際に出た建具類等を再利用しています(つづく)。
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コメント 6

majyo

物事を深く観察し、分析し、そして的確に言い
いつもすごいなあと思っていましたが
今回の茶室については、度胆抜かれます
建物についてももう玄人ですが、茶室内部に至っては
仕事の合間に、素人が出来るものではありません。
再利用の建具をうまく使われたという事にも驚きです。
次回を楽しみに
by majyo (2015-09-26 10:10) 

シロクマ

枯草菌ですが、確かカルピスから出ているビオマインとかいう発酵大豆食品にあったような。
by シロクマ (2015-09-26 13:25) 

Enrique

majyoさん,ありがとうございます。
最初は母屋をリフォームする際の物置小屋を作ろうと思って構想し出しましたが,せっかく手間を掛けるのならとだんだん欲が出て来て,何時の間にか茶室風のものに変化して来ました。物置小屋⇒建具類の再利用⇒茶道の見立て,と考えかたが一致したのだと思います。柱建てという伝統工法にしたのも基礎工事がメンドウだという理由です。鉄筋コンクリートも重機もない古代でも人力で立派な建物が建った訳です。何も商業ベースの現在のものが必ずしも一番優れている訳でもなく,お金さえ掛ければ良いものが出来ると言うものでもないという,私なりのアンチテーゼです。
by Enrique (2015-09-26 13:55) 

Enrique

シロクマさん,ありがとうございます。
確か納豆の粘りが枯草菌の働きだと思います。納豆菌はその一種と思います。枯草菌の働きは食品だけではなく,壁材にまで働いているというのは驚くべき事だと思います。
by Enrique (2015-09-26 14:01) 

アヨアン・イゴカー

>切り藁を混ぜ込んで練って寝かせ,枯草菌を繁殖させてねっとりさせないと,塗れません。
壁塗りにも、随分手間の掛かるものなのですね。
納豆菌と言えば、これで納豆樹脂の研究もあるようですが、こういう素材の研究は国が補助を出して、どんどん進めていって欲しいと思います。

>杉皮を張りましたが,これが現在ぼろぼろになってみすぼらしくなっています。
昔は祖父の家に竹の垣根(四つ目垣)がありましたが、竹垣は数年で作りなおしていたような記憶があります。ですから消耗品という認識がありました。
by アヨアン・イゴカー (2015-09-26 15:55) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさん,ありがとうございます。
土壁に切り藁を混ぜるのは,漆喰に寸莎をまぜたりするのと同様のつなぎ材の意味だと思っていましたが,それだけでなく枯草菌で醗酵させて粘りを出し,恐らく壁の強度も増すのだと知ってその奥深さに驚きました。
木の皮は厚さがあれば結構耐久素材だとは思いますが,モンスーン気候の日本にあっては確かに木や竹,藁などの自然素材で作るものは寿命の長短はあっても消耗品でしょうね。雪吊りなどでも,実用性4割見た目6割と聞いた事があります。気持ち新たに作り替えることが日本的美学なのでしょう。障子を張り替えて心機一転するのもそのような風土習慣からでしょう。石造りで半永久的に持たせる西洋文化との大きな違いです。
by Enrique (2015-09-26 16:47) 

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