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リットルの単位記号から単位の話 [科学と技術一般]

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1リットルと言うのは,小学校で1kgの水の体積だと習いました。そして,1ℓと書くと習いました。
いつ頃からか,[L]という表記も良く見かけます。そもそも,リットルという単位は有理単位としては落第ですが,生活に便利だからか現在は一応SI単位系に入っている様です。

一応というのは,体積の単位は[m3]だからです。
リットルを入れるならば,面積のアールなども入れないといけません。しかし,こちらは1アール=100m2で表されるからか,SI単位系には入れない様です。

でもそれを言えば,リットルだって1L=0.001m3のはずでは。
そして,1L=1dm3と表されるはずです。
殆どこれで良いわけですが,厳密には異なります。
リットルという単位の定義が,長さの3乗という有理単位的な考え方ではなくて,小学校で習ったように,1kgのの体積としたところが諸悪の根源で,水という現物を単位の定義に入れてしまったため,1kgをきちんと決めても,今度は水の1kgの体積の決定する際の測定条件を揃えることが困難だからです。1kgの水の体積は1.000 027Lから1.000 029Lまで測定条件によりばらついてしまうそうです。

そこで,現在では,1Lは水とは関係なく,1L=1dm3として,高精度な体積測定ではあまり使わないという事にしたそうです*。

そういえば,栄養学関係で使われる,calという単位も,有理単位ではありません。やはり,水1ccの温度を1度上げる熱量と中学で習いましたが,水という現物を使うので誤差が出る上に,熱量をそのように決める理論的な裏付けで無く便宜的に決めただけだからです。現在では,仕事やエネルギーを表すSI単位系のジュール[J]を使う事になっています。

さて,このごろ,kwとかkwhという誤表記を良く見かけます。これはもちろんkWであり,kWhです。[W]というのは,蒸気機関を発明したワットから取っているSI単位で,人の名前を取った単位は大文字を使う事になっています。[W]=[J/s]であり,単位時間あたりの仕事,すなわち仕事率のことです。なお[kWh]は電力量にのみ使われSI単位ではありません。1kWh=3600kJ=3.6MJのことです。

また,KgとかKmという誤記も良く見かけます。もちろん,kgとかkmが正しいわけです。現在メガ以上の接頭語は大文字を使う事になっていますが,キロはそのルールが出来る前から使われており,Kは温度の単位に使われていますから,Kをキロに使うと混乱してしまいます。

音楽にも良く使う,周波数の単位[Hz]は,昔はサイクル毎秒[c/s]と書きました。しかし,サイクル[c]というのは,何回ということですから,これは単位をもちません。SI単位的に書けば[s-1],これを電磁波を発見した**ヘルツにちなんで[Hz]としたわけです。ただのHではインダクタンスの単位を表すヘンリー[H]と区別出来なくなりますので,小文字のzをつけています。

そういえば,電磁気の単位の換算は,おそらく最も煩雑なものの一つでしょう。詳述は避けますが,リットルの比ではありません。単位の換算に4πが入ったり,光速度のcが入ったりします。電磁気現象を支配するMaxwellの方程式と,そこから導き出される電磁波までをある程度理解しないと,単位換算が出来ません。

慣用的なものは致し方ありませんが,量の表現に違和感を感じることがあります。「ヘルツ数」とか「アンペア数」といった量表現と単位表現を混同したもの,「高圧電流」と言った様な修飾句と修飾される量の質が合わないものなど,世の中では,間違った表現が時々あります。量の表現と単位の使い方を見ると,その人が少なくとも基本を分かっているかどうかが分かります。商品説明などに間違った表現をしているメーカーのものは買わないのが得策でしょう。
*https://www.nmij.jp/library/units/si/R8/SI8J.pdf
**電磁波の存在を実験的に証明したというのが正しいでしょう。電磁波はマックスウェルによって理論的に予想されましたから。
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