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プランティングと音のレガートさについて [演奏技術]

あらかじめ右指を弦にセットするプランティングというのは,特にアポヤンドを多用しない現代奏法においては,弦にしっかり初期変位を与えるために重要で私も極力心がけています。

ここで問題となるのは,音のレガートさです。

プランティングというのは,セットしてから,弾くまでに時間差があるわけです。
もちろん拍の頭が弾く瞬間ですから,出音が遅れるわけではありません。むしろ,よーいドンで出るわけですから,タイミングはぴたりと合います。ですから,この方法が優れているのだと思います。

しかし,同弦を連続で弾く場合,前の音価をプランティングの時間分食っている事になり,極端に言えば,音はスタカートになってしまいます。

この事をあからさまに示したのが下の図です。前回の記事のKayserの練習曲Op.20-1冒頭の音波形を楽譜と合わせて見たものです。



ギターの練習曲では単音のものは余り無く,伴奏が入りますから波形はやや分かりにくくなりますが,このような単音の練習曲でみると,タッチの課題があからさまになります。

この練習曲の冒頭のミソミドで,私の演奏ではミとソの間(ミの音価を食ったプランティング時間)が約77msあり,ソと2拍目のミの間が57msとなり,ミとドは繋がっています。これはミが開放弦だからです。続いて,51ms,67ms,54msなどとなっています。
これらの数字を限りなく0にしたいわけです。

下降音型では,アルペジオ的になりますので,場合によっては消音の方が重要になるでしょう。それはそれでまた別の課題です。

なお,プランティングによって同弦の音は間違いなく消えるわけですが,完全に消音されないのは,他弦の共鳴の効果です。

音をレガートにつなげて弾くには,プランティングの時間を極力減らす必要があります。
しかし,プランティングの時間を極小化する為に,たたきつけるタッチになっては元も子もありません。それでは音質,安定性で問題ありです。指が弦に与えられるのは変位であって速度ではありません。エネルギーの観点から言えば,指が弦に与えられるのは弾性エネルギーであって,運動エネルギーではありません。

タッチの速さが音量に必要という説を聞いたことがあり,以前も言及しましたが,それはやはりおかしく,「速さ」というよりは,むしろ時間的なジャストインタイム,タッチして直ぐ弾くことが重要なのだと思います。そして,それは,音量ではなく音のレガートさに効くようです。

私にとって一番難しいのが,右手のタッチではないかなと思うこの頃です。
まあ,プランティング時間を極小化すべく努力するわけですが,機械ではありませんし,私の歳で急激に運動能力が上がる訳もないですから,そこは,音をよく聞いてイメージの力でも借りることにします。
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アヨアン・イゴカー

こういう波形で見ると、問題点、弱点が一目瞭然になります。
私はとても恐ろしくてこういうものでは自分の演奏を見たくないです^^;
私にとって音の均質性、明瞭さは常に課題になってしまっています。
by アヨアン・イゴカー (2015-01-24 14:17) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさん,ありがとうございます。
ある程度欠点はわかっているのですが,その程度を知りたいと思い,波形を見てみましたが,大体思った通りでした。
by Enrique (2015-01-24 18:41) 

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