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息子に楽典を教える(3) [音楽理論]


高校生の息子に教え出した楽典のつづきで,3回目です。
「楽典」というと,クラシックのそれになるかと思います。ここで見ているポピュラー系のコードの作り方でも対象は同じものをそれぞれの呼称で言っていると言う事が殆どと思います。しかし,妻と話をしていると,どうも根本の考え方で違うとこともある様です。私の場合義務教育で学んだ基礎+独学ですので,両方が混ざっていたり勝手な理解だったりするところもあると思います。


前回は,主要3和音の和音の話をしたが,あれはメジャーコードだけだったので,マイナーコードでもやっておこう。

マイナーコードは考え方の基本はメジャーコードとほぼ同じだが,ちょこっとメンドウなところもある。

調号が何もつかないCのキーに相当するのが,Am(エー・マイナー)だ。
Cメジャーのスケールでいえば,6番目の音がルート音になっているマイナーコードなので,Cのキー上では,VImと表したりする。

しかし,Amがキーの場合は,これがI和音でトニック(T)となるので間違いないよう。メジャーとマイナーに限らず,各種のコードはキーとの相対関係である事に注意しよう。どのキーでも成り立つ原則を示すために,I,V,IVだの,T,D,SDだのキーに依存しない表示を使ったのだった。

Cのキーに対応させて,Amのキーでの主要3コードを以下に示す。
短調主要3和音.png

これですめばすっきりしているのだが,実はそうではない。
初回でメジャースケールを考えた時に,ルート音をずらすだけで#や♭の変化記号を付けないで弾いたら何かヘンだっだ。変化記号を付けるのは,別の音をルートにしながら,あたかもCをルートにした系の音階にしてしまうのが目的だった。これが各種のキーでのメジャー・スケールだった。

実は7種類の個性ある音の並びがあるのだが,これを「モード」と言って,かつて使われた。しかし,Cをルートにするモード(イオニアン)と,Aをルートにするモード(エオリアン)の2種類が生き残って,それぞれをメジャースケール,マイナースケールと言うようになった。どの分野もそうだけど,すごい量の試行錯誤からそのエッセンスを学んでいると言っていい。

実際,Aをルート音にして,何も変化記号をつけないで作ったのが以下の1小節目のスケール。こんなもんだと思えばいいのだが,メジャースケール(イオニアン)の明確さに慣れちゃった耳では,少し違和感がある。
マイナースケール.png

最大の問題は,第7音からルート音への移行に伴う終止感が無いのだ。そこで,第7音を半音上げてガイドトーン(導音)を人工的に作ったのが2小節目のハーモニックマイナースケールだ。3小節目のメロディックマイナースケールではさらに第6音も上げてメロディのいびつさを緩和している。なお,下降時はいずれのマイナースケールにも変化記号は付かないので,譜面は省略した。

ナチュラルマイナーと言うのはエオリアンモードの事なのだが,ハーモニックとかメロディックと呼ばれるマイナースケールは,エオリアンにイオニアンのエッセンスを付加したハイブリッドスケールなのだ。

「モード」なんて持ち出したが,歴史的にはチャーチモードと呼ばれる7種類のモードは,メジャーおよびマイナースケールが確立するまで長く使われた(さらに古い別のものもある)が,その後一旦廃れた。しかしここで学んでいる主要3和音の基本で飽き足らなくなった近現代では,装い新たにまた使われるようになり,ジャズやロックでも使われるようになった。

途中説明が長くなったが,マイナーの場合の主要3コードを示しておく。それがここの説明の主目的だった。
ハーモニックマイナーコード.PNG

ハーモニックマイナースケールで第7音が半音あげられた事に対応して,Amキーでのドミナント・コードがEmからEメジャーに変化した。さらには4つ目の音に第7音を付加して,ドミナント・セブンスすなわちE7とするのが普通だ。

ここでは,Cメジャーのキーに対応するマイナーのキーとして,Amを取り上げた(五度圏ではいずれも0時の対応)が,Cmという対応もある。CとAmでは調号(キーシグナチャー)が同じという対応だが,CとCmとではルート音が同じという対応だ。Cのキーのコードの仲間として扱うことも行われる(むしろそれが普通かな)。Cmの和音ではサードの音がマイナーサード(短三度)になっている。

Amのスケールで規則通り音を拾っていけば,Amのコードが出来たが,CmのコードををC(メジャー)のスケールで扱うと,サード音を半音下げないといけない。CmのコードをCmのスケールで扱えば,そのままになっているね。この辺のツジツマがちゃんと合っていることを自分で確認しておくことがこの辺の理解・納得に重要だと思う。

以前示した五度圏や今回のスケールとコードとの対応関係から,自分で確認できるはずだと思う。ドミナント・セブンスのセブンス音の意味もね(つづく)。


今回出た質問: ハーモニックやメロディックマイナースケールの場合,調号はどうなるのか?
良い質問。調号はナチュラルマイナースケールで行く。元々はそれだし,ハーモニックやメロディックはメジャースケールの安定感を模したやや人工的なスケールといえる。もっとも,こちらの方がよく使われるが。それに,#を付けるのは上昇時のみで下降時は付けない。だから,その音が出て来た時のみの臨時記号で対応する。
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