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息子に楽典を教える(2) [音楽理論]

高校生の息子に教え出した楽典のつづきです。


前回はメジャースケールの成り立ちの話をしたが,今回はコード(和音)の話。

Cのキーで考えるが,他のキーでも相対的に移動させるだけでリクツは同じ。
音を2つ以上重ねたのがコードだが,下の譜例で示す最初のものは,ルート音Cとフィフス音Gのみの和音。中ヌケ和音(空虚五度)とも言う。グレゴリオ聖歌などに使われた。メジャーともマイナーともつかない響き。サード音が入って,メジャーとマイナーが区別されるようになった。現在エレキの人たちが使うパワーコードと共通なのが面白いところ。

主要3和音.png

ここで示したのは,メジャーキーの主要3和音だ。
簡単な歌の曲などは,この三つでいけてしまう。クラシックではハイドンやモーツァルトあたりで確立したものだけど,これを基本にする。

Cのキーでは,そのキーのルート音Cをベースにして,フィフスのG音,サードのE音を加えて団子状にしたものが基本の和音になる。

2小節目に,Gのコードを示した。やはり,ベースのG音(キーのCに対してフィフス音)に団子状にフィフスとメジャーサード(長三度)の音を加えている。
実はどの和音でもそうなのだが,きれいな団子状の基本形に加え,構成音の順番を入れ替える事がある。そうすると同じコードでも少し雰囲気が変わる。クラシックでは転回形なんて言うけども,コード理論ではベース音が変わったとして,隣の譜例のようにG/BとかGonBとかで表す。ベース・ランニングの都合とか楽器の奏法上の都合で転回形にする場合もある。和音構成音にないベース音を加える場合は全く雰囲気が変わる。

3小節目はFのコード。F(キーのCに対してフォース音)ベースに団子状。やはり転回例も示しておく。クラシックでは,基本形に対して第一転回とか第二転回といか言うけど,私もどれがどれか覚えてない。

ようは,これらの主要3和音(もしくはそれらの転回形)をどう並べて楽曲が構成されるかだ。コード進行という言葉は聞いたことがあるだろう。だいたいそのことだ。もう少し細かくとらえてケーデンス(終止形)ともいう。

こういう話をする際,キーによってそれぞれのコード名が変わるのではメンドクサイから,どのキーでも成り立つ主要3和音の役割に名前を付けておいて,それを使って話をする。

ここの説明ではCのキーだが,基本形がCをベースにするコードをトニック(T)という。Iの和音とも表す。ここのGコードに相当するのが,ドミナント(D)。V和音とも。同じくFコードに相当するのが,サブドミナント(SD),同IV和音だ。

Tは曲の最初や最後に使われる場合が多く,最も安定したコードだ。しかし,これだけでは曲の展開がしにくい。

一番簡単なやつが,お辞儀を強要されるあれ。

T ⇒ D ⇒ T

なにか,お辞儀しないとバツが悪いような気持ちになってしまう。お辞儀した状態は不安定で疲れるから,必ず戻る。この,D ⇒ T の動きは,バネが復元する様なものだ。T ⇒ Dへの移行そのものは,コード進行を進める推進力になるもので,ドミナント・モーションとか言う。

なお,D ⇒ SD というのは,基本では禁止されている。理由は不自然だからだろう。コードは「進行」するものだが,この動きだと何か道に迷いこんだような感じに聞こえないだろうか。

T ⇒ SD ⇒ D ⇒ T

これはあり。

T ⇒ SD ⇒ T

これもあり。

コードを弾いて見て,「ああこういう流れはあるな」と確認すればいいのだと思う。メジャー・スケールの成り立ちとその記譜法もそうだったけども,音楽のリクツというのは,「初めに規則ありき」ではなくて,長年の経験を体系化した「経験則」だからだ。

実はそのキーで使えるあらゆる和音が,このT,D,SDの機能に大枠分類されている。ここで挙げたのは,メジャー・コードだけだったが,これから説明するマイナー・コードも含めて,大ざっぱなルールでイロイロ並べていわゆるコード進行を成している。


前回も含め,以下息子から出た質問と回答です。
質問1: なぜ#と♭があるの?
原始的なペンタトニック(5音)音階では,そう言うものは要らなかったが,12音まで使う様になって,必要になった。例えば#だけでもいいが,そうするとFの音やFのキーがなかなか出てこない。Fのスケールを#で作ると,#が11個もいる。♭で下げる系も作れば,それぞれ5,6個ですべて行けるから良いんだろう。
本来は,#と♭との体系では少し食い違いが出る。例えばF#とG♭は少しずれる。それを均したのが現在の平均律だ。転調が自由な反面,響きが悪くツマラナイという批判もある。

質問2: 4つ以上の音の和音もあるの?
あるある。ここでは,3つの音からなる和音(トライアド)を示したが,4つ目以降の音を加えることもある。和音構成音をオクターブで加えるだけならば,和音の性質は変わらないので,コードネームは同じだが,音を加えることで,様々なコードが存在する。おいおい述べていくが,一番よくあるのが,7の音を加えるセブンス・コード。CのコードならばB♭を加えて(ここではBでなくてB♭なのに注意)C7となる。Cのキーならば,ドミナントとして使うG和音に7の音であるF音を加えたG7というドミナント・セブンス(属七)が最も重要。これにより,DからTへの復元力がさらにパワーアップしている。「属七」という言葉が出たところで,母親からタオル(つづく)。
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Tommy

音楽に日の浅い初心者には今回少々難しく感じた。おそらく経験不足による音の感覚がつかめていないためかもしれません。そもそも和音がなぜ必要なのか、その役割もはっきり理解できていないのもあるようです。
最近やっとドレミ・・・を弾いていて間違いに気づけるレベルです。
by Tommy (2014-04-11 10:05) 

Enrique

Tommyさん,コメントありがとうございます。
どの分野もそうだと思うのですが,何千年の歴史を,短期間で再構成してたどるわけです。
原初的なものは,わらべうたのようなもので,5つの音でメロディを構成するもので,どなたでも,特別な技術や知識がなくても,歌えますが,ここでいう和声の終止形などにはあまり乗りません。
和音の働きは,伴奏してハーモニーを付けられ音楽としてのバランスが取れる事だろうと思います。現在の音楽の基本はリズム,旋律,ハーモニーですが,最後のハーモニーが一番最後に出来上がった概念なので難しく感じられるのだと思います。実際に音を出して確認していくという作業が重要だと思います。
もちろん知らなくても技術練習により演奏は可能ですが,ご存じなほうが,演奏表現にも(暗譜などの実用面でも)役立つものと思います。例えば「禁じられた遊び」は,マイナーとメジャーの主要3和音で構成されているお手本的な曲です。
by Enrique (2014-04-11 14:50) 

Tommy

丁寧な説明を頂きありがとうございます。これまであまり音楽の知識を吸収してこなかったので少々時間はかかりそうですが、引き続きよろしくお願い致します。
by Tommy (2014-04-11 20:10) 

Enrique

Tommyさん,再コメありがとうございます。
かつては「音楽は好きだけど,学校のはキライ」という人が多かったと思いますが,そのせいか,現在は学校では余りやらないようです。知識よりも,実際の音楽との結びつきが大事なのだろうと思います。
by Enrique (2014-04-11 22:46) 

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