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スケールの練習 [演奏技術]

先日からぼちぼち続けていた,ジュリアーニの120のアルペジオを終了しました。
スコット・テナントのパンピング・ナイロンの左手の独立性の練習はぼちぼち続けていますが,やはり3指は動きにくいです。これは飽きずにやるしかないかなと思います。3,4指は誰でも元々動きにくいので,当然運指は3,4指に負担が行かないように考えますが,かと言って甘やかすのではなく,訓練としては動き易くなるように行います。いわば両面作戦です。これで,演奏に余裕が出ればと思います。

私は再開後,曲を結構いろいろ手掛けてきましたが,かなり難しい曲をやっていても,曲だけやっていたのでは,すべての指やテクニックをやっていることにはならないことに気がつきました。特に,右手のm,aなどはほとんど使っていなかったりします。たまにアルハンブラなどを弾いてみても,トレモロはpamiにいわば循環的な一連の動きとして団子状態で動かしますので,maだけの動きとしては驚くほど動かなくなっている事に気がつきました。もちろん,普通の曲の中でも1つ1つの音を逐次完全に意識コントロール下で弾けば,それだけでも良い練習にはなるかもしれませんが,今度は曲の仕上がりの問題が出てきます。それなら,専用のプラクティスを決めてやったほうが却って効率が良いという結論に達しました。

専用プラクティスとして続けている左手の独立性確保課題ですが,前々から感じているのが,スケール練習の不足です。ギターはアルペジオが楽な楽器で,スケールの方が難しいです。あらゆる楽器の基礎練習でスケールは最も重要なものと言われますが,案外クラシックギターでは定番がないように思います。先日触れた,現代ギター誌上での先生方のアンケート調査でも,スケールの練習曲は大分割れています。

1位がカルカッシのOp60-1,2位がヴィラ=ロボスの練習曲第7番,3位がカルカッシOp60-14までで得票の殆どを占めています。ひょっとしたら定番?と思っていたセゴビアのスケールが大きく差をつけられて4位,次いでプジョールのエチュード第1番が5位です。これらの上位のものだけやればOKなのでしょうか?

この調査は技術部門毎に分けられてはいますが,難易度はごっちゃなので,見極めが必要です。初級中級者にヴィラ=ロボスの練習曲はきついでしょうし,上級者にはカルカッシは卒業済みのはずです。とすると,初級中級者用と上級者に分かれると思いますが,初級中級者にはほぼカルカッシだけ,上級者にはほぼヴィラ=ロボスだけになってしまいます。記事のタイトルも「これだけは絶対に弾いておきたい」ですので,これだけで十分というわけではないでしょう。むしろかなり不足だと思います。短い練習曲1曲,2曲ではさすがに足りないでしょう。

とは言え,決定版がありません。セゴビアのスケールは24調ありますが,2オクターブになったり,3オクターブになったりするのは音域上仕方ないとしても,鍵盤の指換えに相当する位置にあまり一貫性が無いような気がします。とはいえ,デイリー・トレーニングにはこの様な無味乾燥な音階の方が曲になったものよりも有効だと思います。最近注目されている,アーベル・カルレバーロの教本の第1教程がスケールです。音はセゴビアのものと同じです。短調が旋律的のみであることも共通です。運指(ポジションどり)が異なります。また,セゴビアのものは最低音以外開放弦を全く使いませんが,こちらは使える調ではけっこう使います。

どちらがいいのでしょうか?カルレバーロの方が開放弦も使うので実践的かな?とも思えますが,こちらも実際の曲では結構使うポジション移動に伴う,いわゆるペダルの運指は使っていません。むしろそれは,カルカッシやヴィラ=ロボスの練習曲で実践的に身につけるのがよさそうです。

この辺は,考え方の違いでしょう。指の訓練としてやるのか?実際の曲で使う運指そのものを練習するのか?です。ただ,カルレバーロのものも完全に実践的とも言えませんし,セゴビアのものも指の訓練だけではなくてその独特の運指がセゴビア奏法を学びたい人には有効かもしれません。

この辺はシステマティックなスケール教材の限界でしょう。仮にペダルも入れた実践的なスケール運指を作っても,調が限られ,決してすべての調では出来ないので,さらに一貫性が出ませんし,調によっては開放弦を使わない方が楽だったりもします。極端な話,人の数だけスケールが出来てしまいます。

むしろ特定のスケール練習というよりも,完全に指の訓練に特化したものも有効かも知れません。スコット・テナントの「パンピング・ナイロン」にある,スケールの練習法です。彼のものは,非常にプラクティカルなアプローチですが,きちんと拍を感じてやれば,音楽的にも優れたものだと思います。

ここでざっと紹介します。彼のアプローチは単にスケールを弾いて練習するのではなくて,スケールの動作を以下の4つのエレメントに分けて,それぞれ段階的に練習します。(1)速度,(2)同期,(3)弦移動,(4)以上の組み合わせ,です。

(1)右手の速度を出す練習です。右手だけですので開放弦です。まずスタッカートで四拍子で8つ打ちをして,最後の拍は16打ちにします。すべてアポヤンドでやります。
RightHandVelocity.png

最後の拍の16打ち部分を半拍ずつだんだん前倒しにしてきて,第2小節目が全部16打ちになるまでやります。一連の事が出来たら,8分音符はアルアイレでレガートにして同じことをやります。

(2)右手の速度が出たら,こんどは左右のシンクロナイゼーションです。上で開放弦でやったこと(最後の8分音符レガート版)に左手をつけます。③弦を半音ずつ,ソ#,ラ,ラ#,シ,シ,ラ#,ラ,ソ#と上下させます。やはり第2小節目が全部16打ちになるまでやります。
Synchronization.png

(3)右指で弦を歩かせる練習です。これは右手の独立性を養う訓練です。開放弦を⑥,⑤,④,③,②,①,②,③,④,⑤,⑥と,色々な右指の組み合わせで歩かせます。また,符点音符などのバリエーションを付けます。とりあえずここでは指の組み合わせは,imだけでも良いでしょう。

(4)以上を組み合わせて以下のように弾きます。もっと難しいスケールでもこの練習方法でいけるとのことです。
Together.png

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アヨアン・イゴカー

スケールの練習の重要性はよく理解しているつもりですが、やはり充分な時間が取れない時、取らない時にはやらずにいます。
ピアノの場合全部の指の練習、半音階や重音などを、HANNONなどで体系的に練習した方がよいのでしょうが、最近は私はChopinのEtudesだけでこれらを練習しています。
by アヨアン・イゴカー (2013-12-08 11:58) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさん,nice&コメントありがとうございます。
学生時代に1年間だけピアノをやった時,ハノンを1番から20番くらいまでやりました。楽譜には曲を弾く前にこれを最後までやりなさい,みたいな事が書いてあったと思いますが,具体的な目標があれば別ですが,20番まででさえ続きませんでしたが,これで手が鍵盤になじんで,少し弾ける気がして来たものでした。目標に対してどこの部分の技術が弱点かが分かってその部分を重点練習できれば,効果的だとは思います。ギターではヴィラ=ロボスのエチュードがショパンのものあたりに相当すると思います。
by Enrique (2013-12-08 16:55) 

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