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ギターのむずかしさ [雑感]

こんな題名で,ブログの初期にも書いていたと思います。

ギターのむずかしさの一つは,左右の手の動作の非対称さだと思います。

しかしこれは,とっつきやすさの一つでもありますので,話はフクザツです。
ネックを握って,左手であるコード・パターンを押さえて,右手をジャンとやる。こんな単純な動作で,結構複雑な和音を鳴らす事ができます。右手でテキトーにアルペジオをやってもサマになります。そのテキトーさ加減がカッコ良かったりします。

クラシックギター以外では,ギターの演奏にはピックを使うことも多いものです。
もちろん指で直接弾く事もあるようですが,「フィンガーピッキング」とか言って特殊奏法?のようです。


指で直接弾く弦楽器というのはそう多くは無いものです。擦弦楽器は弓で弾きますし,はじくタイプの弦楽器(撥弦楽器)でも,ピックやバチを使うことが多いものです。

学生時代,エレキの友人の楽器でクラシックギター曲を弾いてみせたら,何故そんな事が出来るのだ?と驚かれました。伴奏とメロディを同時に弾いたり,2声3声を弾き分けたりするのが,エレキの友人には信じられないようでした。

クラシックギターではスケールは,im指などの交互弾弦で弾くのが基本ですが,エレキでは弦をピックで交互に転がすように弾いているようです。ピックで弾くのが基本ですから,同時和音や2声3声の弾き分けは最初から考慮されません。その辺が友人の驚きの原因だったようです。

ヴァイオリンやチェロは弓で弾きます。指でもピチカートをやりますが,あれはタマにやるから良いので,いつもアレだったら弦楽器の魅力は殆ど無いでしょう。

弓と言うのは優れものです。
弓の弾く動作にはアップ・ダウンがあります。ひと弓で長いフレーズも弾けますし,全弦なでればアルペジオが楽に出来ますし,小刻みに往復させればトレモロだって行けます。弓づかい(ボウイング)に関しては,様々なテクニックがあるようです。いわば,弦と言う面倒な細い糸を操る魔法の杖です。

ピック弾きギターのピックと言うのは,いわば擦弦楽器の弓の役目をするものです。もっとも,弓に比べて単純な道具ですから,手首を返さずに右手を固めて6本の弦をカバーするなど,いわば手自体が弓の役目を果たさないといけません。


クラシックギターはまったくの「生指」です。
多少つめを伸ばして,音のクリアさを確保するのがモダンギターの流儀ではありますが,バロックやルネサンスの楽器の流儀で指頭弾弦の人もいます。いずれにせよ,道具は使いません。鍵盤楽器も「生手」ではありますが,メカニズムが発音してくれ,鍵盤はいわばインターフェースです。直接弦をはじく楽器はギター以外ではハープ類のみです。

しかし,鍵盤楽器にしろ,ハープ類にしろ,両手で音が出せますし,ほほ対称的な動作でそれがなされます。

それに対しクラシックギターの演奏動作の特長はその非対称さです。
もちろん,ヴァイオリン類やピック弾きギターの左右の非対称さは最たるものですが,むしろこれらは完全に左右分業されているとも言えます。右手指での発音動作はありません。よく,左手は弦を押さえる労働者,右手は芸術家と言われます。

クラシックギターの演奏動作は,左右の生指を使うものの,その指使いが左右で全く異なるという,まことに厄介なものです。
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Hagi

着目点は、動作の左右非対称性ということですね。なるほど。
私のようにギターしか弾けない(かつ未熟)者は、他の楽器との比較が難しいですが、一般的に難しい楽器だと言われていますね。
それを実感するのは、例えば、
ピアノを習い始めて1年の人の演奏は結構聴けるのに、ギター始めて1年の人の演奏は、「ふ~ん、頑張ってね」という言葉しかいただけないことが多いように思います。
(楽器自体の出せる音が小さいせいもあるでしょうが)

by Hagi (2013-08-30 19:23) 

Enrique

Hagiさん,コメントおおきにです。
動作が非対称な上,両手のシンクロ動作と非シンクロ動作を使い分けないといけません。
たしかに,ピアノだったら初心者の演奏でもそれなりに聞けますが。。。
本当に大変ですが,(滅多にない)うまく行った時の感触を求めて幾星霜。たしかに音の小ささもあるでしょうが,それだけに特別な思入れもあるのでしょうね。
by Enrique (2013-08-31 12:47) 

REIKO

ウチの母はピアノを弾く人に「左右の手を別々に動かすなんてよくできるねえ」と言うのですが、私はいつも「どっちも鍵盤を弾いてるという点では同じだし、片手で弾いたら難しい曲を両手で分担しているだけだよ」と説明しています。
(それでも納得してくれませんが…笑)
それと比べるとギターやヴァイオリンは左右の役割が違うので、仰る通り難しいと思います。
「異なる動作」というだけでなく、音楽にとって重要な時間軸?にもズレがありますよね。
右手で発音のための動作をするより少し前に、左手はフレットや弦のしかるべきところを押さえてないといけません。
ごくわずかであっても、常に左手が少しずつ先行しているわけです。
(もっともこれは、意識しずぎると余計難しくなるので、直感的にやってるのでしょうけど)

ところで今はピックで弾いているマンドリンですが、昔は指だったそうです。
ヴィヴァルディのマンドリン協奏曲が大好きで、子供の頃レコードでモダン楽器の演奏を良く聴いていました。
それでCDになってから古楽器演奏を聴いたら、まるで印象が違ってて…
指で弾くと音量も小さく音も柔らかいので、全体の編成でヴァイオリンなどの弦楽器が多すぎると、埋もれてしまいます。
おそらく当時は、弦は最少人数でやってたのでしょうね。

by REIKO (2013-08-31 13:25) 

Enrique

REIKOさん,コメントおおきにです。
楽器のむずかしさはそれぞれにあると思いますが,私も鍵盤の両手は伴奏とメロディならばいざしらず,バッハなどのフーガ的動きはまず出来ないものと思っていましたが,インヴェンションを練習して見て慣れれば何とかなるものだと思いました。左右で三連符と16分音符とかキザミが違うのも信じられませんでしたがきっと慣れなんでしょうね。
さてギターの場合は(リュートやクラシックマンドリンもそうですが)左右がシンクロしないとダメな場合と,どちらかが先行してもう一方が待ち構えるケースがあります。一般には左が先で右が後と考えられがちですが,逆もあります。
モダンギターの標準奏法ではツメを使いますが,音量と音質を目指した結果でしょう。指頭弾弦では右でふつうに弾いた音と左ではじいた音質がそろうなどのメリットがあり,音量の課題さえなければ独特な味わいです。ヴァイオリンその他の楽器が大ホールでの演奏を志向して進化したのに対して指頭弾弦の楽器は生き残れなかったのでしょう。モダンクラシカルギターは単弦・ボディ拡大・ツメ弾弦でかろうじて生き残ったのでした。
by Enrique (2013-08-31 17:56) 

アヨアン・イゴカー

音の変化について、その幅の広さと言う点では、弦楽器は鍵盤楽器を圧倒しています。トレモロ、detache, pizzicato, portamento。最たるものはvibratoとハーモニクスです。鍵盤楽器や木管楽器、金管楽器、打楽器ではとてもこのような変化をつけることができません。曲の印象がまるで変わってしまいます。どの楽器も個性があって、どれも必要な楽器です。
by アヨアン・イゴカー (2013-08-31 21:49) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさん,nice&コメントありがとうございます。
そうですね,一度に出せる音の数は鍵盤楽器が勝りますが,弓使いに特殊奏法も加えた表現の幅は素晴らしいものがあります。
オーケストラ楽器は皆相補的特徴を持ちますので,「みんなちがってみんないい」のですね。
ギター等の撥弦楽器は弦楽器の特徴も備えつつ和音が強化されるので,独奏が可能です。挙げられた奏法では,弓使いのdetache以外はすべてギターでも可能です。
by Enrique (2013-09-01 08:23) 

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