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譜面の位置 [演奏技術]

至って形而下の,かつ細かい話ですが,譜面(台)の位置について考えてみました。

もちろん,暗譜で弾ければのその位置など関係無いわけですが,暗譜するまでの練習時の譜面の位置です。

今まで,あまり考えずに正面にテキトーな高さで置いていましたが,それが最適だろうか?(まあさして影響ないからドーでもヨイのか?)と思うわけです。


ピアノなどの鍵盤楽器では,楽器の譜面台に楽譜を載せますので,これ以外の場所はなさそうです。
あまり何も考えなくても正面に向かって,良い姿勢が保たれます。形容に困る超運動オンチのウチの上の娘でも,ピアノをやっていたせいで姿勢は保たれ,体幹だけはしっかりしていると医師に太鼓判を押されました。

鍵盤を目で確認する際でも,アタマの移動は上下,もしくは視線の移動程度で可能かもしれません。
IMG_1760

ヴァイオリンはどうでしょうか,正面に向かって斜に構えます(他意はありません)が,その視線の先に譜面があれば,1番見やすいのではないでしょうか。

フルートも,やや斜です。

それではギターは?というと,どうも私含め正面に置いている場合が多いのではないでしょうか?

ギターでは,体は正面を向きますが,指板を見ると,アタマは完全に横を向きます。これはもう,斜に構えるというよりも,知らんぷり状態です。


大変ミスしやすいクラシックギターと言う楽器で,極力ミスを防ぐためには,左手の押弦移動先をしっかり目で確認するということが重要の様です。

大きなポジション移動に合わせて首を振ると,クラクラして来ます。フォークギターの様に楽器を寝かせるとなおの事です。フラメンコギターでもやはり楽器を寝かせますが,こちらは足を組んで右腿にのっけますので,楽器は身体寄りになり立てられません。奏法に応じた構えでしょう。

位置確認のためには楽器を立てるほどラクになると思います。しかしそこはプレイアビリティとの兼ね合いで妥協的な角度で構えるものと思われます。

ほぼチェロの様に構えるポール・ガルブレイスという人もいます。楽器をほぼ立てることで,位置確認というよりも左手の移動域にムリが無くなるようで,彼のバッハは躍動感に満ちています。ただそのためには,楽器の固定が課題になりますので,全くモダンチェロの様にエンドピンを立てています。しかもそのエンドピンは床に刺すのでなくて,共鳴箱に刺し,音量の増大まで図っています。彼のシステムは独創的すぎて常人にはマネができませんから,まあ一つの参考例です。

Bach: Lute Suites (Guitar Arrangement) / Galbraith

Bach: Lute Suites (Guitar Arrangement) / Galbraith

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Delos Records
  • 発売日: 2000/02/29
  • メディア: CD


独創的でない通常の構え方でギターを構えますと,どうしてもアタマの左右の移動を伴います。左右の移動と言うのは,イヤイヤをする動きですから,気分もネガティブな状態になりそうです。

位置確認はギターの宿命にしても,せめて譜面の位置だけでも,指板側にして,譜面と指板が両方視野に入るようにしておけば,譜面のイメージと指板のイメージが両方目に入って,練習の効率が上がるような気がします。画像では左45度くらいの位置に譜面台を置いています。
IMG_1759

試しに,譜面を反対の右側に置いてみると,その弾きにくさはひとしおです。


それと,これは別の話になりますが,ギターの本番の暗譜奏ですと,前方に何もない状態で向き合います。これはやはり結構メンタル面できついものがあると思います。

譜面を前方に置くのでなくて,左にずらすことにより,練習時から前方になにも無い状態を疑似体験する効果もあると思います。

もちろん,グーグルグラスみたいなやつを掛けて,空中像で譜面も見られれば理想だとは思いますが。
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Hagi

いつも、深い洞察と機知に富んだ文章を楽しみに読ませていただいています。今回いちばん感動したのは次の文章です。
「左右の移動と言うのは,イヤイヤをする動きですから,気分もネガティブな状態になりそうです。」
う~ん、素晴らしい!

本題からズレてすみません。
そう言えばPoranさんは左45度付近に譜面台を置かれていますね。
by Hagi (2013-07-25 09:41) 

REIKO

ヴァイオリンもギターも、弦を押さえる左手が腕をねじったような無理な体勢ですが、前者は楽器を構えた顔の向きとそう違わない位置に指板があるのに対し、後者はかなり「横」ですね。
指板と譜面をどちらも無理なく見たい…となると、ギターの方がより「斜め横木き」が必要なんでしょうね。
チェロのようにギターを構える人がいるんですね、ビックリしました。
中学の時部活でチェロを弾いてましたが、ヴィオリンやギターのように腕をひねらず弦を押さえられるので、体勢としては自然です。
楽譜は弦楽器の合奏だと二人で1つの楽譜を見る(後輩が譜めくりw)ので、常にちょっと「横」でした。
リサイタルなどで聴く側から言うと、ギターやチェロの場合、譜面台の位置や高さ(そして客席の位置)によっては、音が遮断されるように思えたり、肝心のところが見えなくてイライラする事があります。
やっぱりステージ上では「暗譜」がいいですね。
by REIKO (2013-07-25 18:01) 

てですこ

興味深いお話です。私は左手を見ないで、正面の楽譜だけを見て練習するようになってから、まるっきり暗譜できなくなってしまいました。間抜けなことに、左手も見たほうが良いことに今頃気がつきました。しかしよく考えてみると、私の場合、演奏中は譜面を読んでいるのではなく、曲の進行を確認しているだけのようです。記憶を再生している(暗譜)のではなく、記憶を再認(視奏)しているみたいですね。古楽器はたいていの場合タブラチュアの視奏です。
 ところで譜面台の位置ですが、私は膝のあたりに低めに置くのが好みです。暗譜しているけれど、念のために置く場合は真横に置きます。客席からギターが隠れないようにしたいのです。練習会などでは譜面台でギターが隠れてしまう場合がありますが、ちょっとがっかりです。
by てですこ (2013-07-26 00:20) 

Poran

私は「ど忘れ恐怖症」のため、最近は人前で弾く時も楽譜を置いて弾くことが多いです。その場合、Hagiさんがご指摘の通り、左ななめ横に、低めに楽譜を置いています。その理由は、楽譜を正面に置くと、聴く人からギターが隠れてしまう事と、Enriqueさんのおっしゃるように、左側の方が、自然と視線の先になるためです。しかし、やはり楽譜なしで暗譜で自信を持って弾けるようになりたいですね。
by Poran (2013-07-26 23:59) 

Enrique

Hagiさん,ご愛顧ありがとうございます。
アタマの動きに限らず,手の動きでも上下の動きの方がスムーズですね。ギターの左手も,本当はチェロ式の方が日常的な動きに近くて自然なのだろうと思います。
楽譜や指板に目を向けるとしても,本当は視線だけで済めば理想的だろうと思います。昔クルマの免許を取った時,路上検定に受かるためには左右確認をアピールするために(見ていなくても),顔だけを振るのが必要でしたが,楽器演奏はタテマエではありませんしね。路上でも視線だけの方が安全のようです。
譜面の位置に関して,Poranさんは先刻実施済みのようですね。
by Enrique (2013-07-27 14:02) 

Enrique

REIKOさん,コメントありがとうございます。
そうですね,ギターはあまり日常的でない動きをすると思います。右手は表向きで左手が裏にひっくり返っている感覚があります。左右独立に動かすのは結構メンドウなことをしていると思います。ヴァイオリンは移動量は小さい分精密なコントロールが必要なのでしょう。チェロは大きいですが,左手の動きはずっと自然ですね。
譜面の位置は,見やすさもありますが,楽器や顔を遮るようだとパフォーマンス半減ですね。暗譜と言うのは技術面とともに,見栄えの問題も結構あるということですね。
by Enrique (2013-07-27 14:14) 

Enrique

てですこさん,コメントありがとうございます。
全く,私も似た感じだと思います。譜面を見て指板を見ないで弾いていて,いざ本番で指板を見て弾こうとすると却って混乱して間違ってしまいます(ので見ません)。また音を練習と違うポジションで弾いてしまって次に繋がらずミスってしまうこともありました。指板の位置・移動先をしっかり確認することはミスを防ぐ上で重要だと思いますが,練習時からの心がけが重要ということでしょう。
どうもタブラチュアはぱっと見れません。多分慣れなのだと思いますが,やはりギターの左手は裏返っているイメージがあります。
by Enrique (2013-07-27 14:33) 

Enrique

Poranさん,コメントありがとうございます。
やはり譜面を置くと精神的に楽です。右手を確認しないといけないケースもたまにはありますが,やはり殆ど位置確認は左手ですので,譜面と指板とが視野に入り視線の移動くらいで両者確認出来ると大変楽ですね。人前演奏もそうですし,練習時も随分楽そうです。それでいて正面の視線は遮られませんので,コロンブスの卵ですね。
私は譜面の位置に関しては今まで特に考えずに正面に置いていました。
練習時もこのように置く事で,暗譜にも有効な手段に見えて来ました。
by Enrique (2013-07-27 14:42) 

アヨアン・イゴカー

譜面台という一つの定点から、いろいろな楽器を考えてみる、と言うのは興味深いです。

>楽器の固定が課題になりますので,全くモダンチェロの様にエンドピンを立てています

面白い発想をするギターリストですね。こういう発想が、ギター演奏の新たな領域を開拓するのかもしれません。
by アヨアン・イゴカー (2013-07-28 16:02) 

黒板六郎

演奏についてなんか固定観念みいなのがあって、譜面台はカラダの真ん前に置かないとだめと勝手に思い込んでました。確かに真ん中にあると客からはみにくいし、ネックと譜面を目がうろうろするんで、Enriqueさんの発想はコロンブスの卵です。使わせてもらいます。
by 黒板六郎 (2013-07-28 18:41) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさん,nice&コメントありがとうございます。
譜面台の位置は楽器の構えとも密接に関係していますね。鍵盤奏者は全く考えない事柄だと思います。ギターは正面を向くので楽譜も正面と思っていましたが,斜めの方が良さそうです。
チェロ式の人は結構前からやっています(20〜30年前?から)。手がスムーズになり私も絶対に良いと思うのですが,誰も追従者が出ないのは,楽器の改造が大変だからだと思います。エンドピンのみならず,フレットも斜めっていたりします。弦の数(8本)や共鳴箱はオプションだと思いますが。
by Enrique (2013-07-28 21:47) 

Enrique

黒板六郎さん,コメントありがとうございます。
予想外の反響で驚いております。左側に置くのは,Paronさん始め既に実行されている方もいらしゃるようです。ヴァイオリンやフルートでもやや左でしょうか。具合を見ていただければ良いと思います。
by Enrique (2013-07-28 21:54) 

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