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上手く弾きたい~欲望面からの考察~ [演奏技術]

先月,インナーゲーム論を用いた練習法の紹介などについて書いて来ましたが,ここでは,自分の考えを中心に述べてみたいと思います。

「上手く弾きたい」というのは欲望ですが,欲望というのはナカナカ達成されないと募りますし,ある程度達成されると,また次々とハードルや対象を変えて湧いてきます。人の欲望には限りがないもののようです。

例の本には,どうしてもいい歳になってから始めた初心者の場合,巨匠の演奏をターゲットにしていることが多いので,自分を追い詰めることも多いと書いていました。

しかし,演奏の良しあし(の評価)なんて,全く定性的なものですし,コンクールなどでの専門家の採点ですら,時々物議を醸します。一般聴衆の評価とのズレなんてざらです。ミスが非常に気になる人もいるようで,ちょっとトチルと咳払いする人がいます。確かに最近の演奏者はミスしませんが,ギターの様に音を出そこないやすい楽器で,ミスだけに気をつける減点主義の聞き方はつまらないと思います。弦を直接押えてはじくという原始的な奏法ですから,メカニクスは鍵盤楽器にかないません。ミスだけが気になる人は鍵盤楽器を聞いた方がいいでしょう。

最終的には,「自分が良いと思う」これだけのことですね。仮に人が聞いて「?」と思っても自分で満足出来る人はシアワセです。逆に「あんなに弾けているのに」マンゾクできない人は不シアワセ?とも言えるかもしれませんが,そういう人は少なくとも上達に対する適性を持っていることになります。


前おきが長くなって主題からずれそうですので,演奏の欲望面からの考察に戻します。
演奏の欲望・欲求にマトモに取り組んでもなかなか分かりにくいものです(自分自身の事とか,身近な事の方が見えなくなっていることも多いものです)。そこでここでは,他の社会的・身体的な欲望と対比させて考えてみたいと思います。

まず,社会的な欲望としての名誉欲。これは社会的に評価されたい。身近なところでは上司や先生から褒められたいというのも小さな名誉欲を満たしたい欲求でしょう。仲間や家族からも賞賛されたい。これもささやかではありますが,その手のものでしょう。人前で弾いてうまくいくのは名誉で,ダメだったら不名誉なのでしょうか。多分そうなのでしょうね。不名誉な自分になりたくない,名誉欲を満たしたいが,うまく行かない現象が「あがり」なのでしょう。「そこそこに弾けて,自分で納得できて,自分が幸せならいい。」と思ってみても,負け惜しみを言っている様な気になって来ます。それが落ち込む原因です。幸不幸よりも,名誉をとると言う事もあるでしょう。プロは仕事ですから,それが商売に関わりますし。

あと睡眠欲なんてのもあります。これは寝ずに練習したほうがいいかとかそういう課題ではなくて,たとえ話です。あえてこじつければ,睡眠欲的な欲求を音楽表現上感じたらどうするか?これは自然な身体的欲求ですから,自然にまかせた方がいいのでしょう。時間的な制約がなければ,休みたくなったら休む,眠くなったら眠るわけですから,弾きたくなったら弾く,疲れたら休む,感じたものを素直に生かす,これでいいのだと思います。こうしなければならないとか,ごちゃごちゃ考え出すと余計あがるような気もします。

食欲。これは,ありすぎるのも困ったものですが,無いと体がもちません。音楽表現に必要な技術を食欲に例えれば,あまり貪欲過ぎても,音楽が肥満(たぶん)になりますし,無いと音楽が成り立ちません。

性欲。うーむ。英雄色を好む。生理的なものですから,食欲と似ているのかも知れません。色気のある演奏とそうでない禁欲的なものと言うのは確かにあります。

金銭欲。お金は有ればいいに決まっていますが,お金持ちは,お金を使いません。というか,お金を使わないからお金持ちになったのでしょう。これを演奏技術に例えれば,有り余るものを持っている人と言うのはそれをムダには使わないはずです。貧乏な人ほどそれを使っている,あるいは使わざるを得ないのでしょうね。うーん,お金の話となるとナカナカ切実です。収入の乏しい身としては浪費を避ける対策と注意が必要です。

何事も,欲望だけ強くても却って逃げていって達成出来ない事(自分で逃げている面)も多いですから,そこは理性も発揮してより深い満足が得られる様,模索する日々です。結局は「上手く弾きたい」というのも「人生をよりよく生きたい」ということですから,リアル生活を超越した解答などあるわけは無いのですが。
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