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レイテンシー [電気音響]


現在のデジタル環境下での信号の遅れ具合の事を言う様です。

以前,TVのデジタル化で時報が無くなったのは信号処理の遅れのせいだと言う事を書きました。いわばこの遅れの事をレイテンシーと言う様です。
rateは「遅れた」ですが,ratencyは「遅れ具合」という意味なのですね。

音声信号の遅れなんて,人間の所作に比べたら無視出来るものとばかり思っていましたが,それはアナログ時代の感覚で,デジタル時代では100ミリ秒やそこらは遅れるのが当然のようです。

単独の録音には仮に1秒遅れても問題になりません。しかし,多重録音で,前のトラックの音を聞きながら重ね録りする際は100ミリ秒というのは非常に困る遅れです。「んたっ」とずれてしまいます。♩=75で32分音符分の長さです。音符一つ分ズレてしまったら話になりません。特にギターの様にパーンと音の出る楽器では,音のズレはガチャガチャとなって非常に変なものになってしまいます(きれいにズレればアルペッジオ風なのですが)。

そこで,Audacityなどの録音編集ソフトではその遅れ分をプログラムで補正します。録音終了後,あらかじめ設定されている数値分データを前倒しするわけです。Audacityの初期設定ではこの量は130ミリ秒となっています。しかし,専用機器を使わないで私のMacBook Airの内蔵マイクで録音しようとすると,どうももっとずれているようです。

メトロノームの音を1トラック目に録音し,それを再生しながら2トラック目を録音すると遅れ量がわかります。それを私のMacBook Airでやると,遅れ量は約171ミリ秒となり,設定しなおしました。遅れるのは仕方がないとすれば,遅れ量がピッタリ一定していればその値で補正すればいいだけなのですが,いやな事にこれもふらついています。171ミリ秒で設定後,この自己再生録音を繰り返してみたのが以下の波形です。
レイテンシー.png

一番上のトラックが最初のメトロノーム波形です,これを基準に,2段目ではほとんどズレませんが,3段目で十ミリ秒弱遅れが増加したかと思うと,4段目では逆に20ミリ秒くらい遅れが減少,音が前のめりになってしまいます。6段目以降の挙動は意味不明です。

さらに何かの加減で10回に1度くらい400ミリ秒くらい遅れる事があります。困ったことにこの現象は音ではモニター出来ず,その録音後に分ること(波形のズレで分かる事ですが,何分録音中は楽譜とにらめっこで,画面までは注意が行きません)ですから,そうなってしまった場合は諦めるか,録音後さらに130ミリ秒くらいデータを進めて救済できるかどうかです。ちゃんとした録音機器ではなるべく信号をアナログ処理してレンテンシーの絶対値やそのフラツキを軽減しているようです。ピッタリ合った多重録音を作るには(せめてここの下の方で紹介した程度の)専用機器を使わないと難しそうです。

以前WindowsPC上でRadioLineFreeを使って多重録音してみた際はこのレイテンシーというものを全く気にせず,ズレたのは演奏の責任だと思っていましたが,無いわけがなかったと思います。
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Cecilia

多重録音に取り組んだ時のことを思い出しながら拝読させていただきました。今はあのようなことをする時間的余裕がありませんが、また挑戦してみたくなりました。今ならPCの状態も良いので録音時に雑音も入りにくいのでは、と思いますが。
by Cecilia (2012-09-24 08:25) 

アヨアン・イゴカー

私が使っているYAMAHAのXG WorksSTと言うソフトウェアで
は、quantizeと言う機能が付いています。keyboardで入力した場合、微妙な音符の長さのずれが生じますが、それを「四捨五入」して、八分音符や十六分音符などに纏めてしまう機能です。意図的にずらす場合は、この操作をしなければいいのです。
このような機能があれば、簡単に処理できそうな気がしました。
by アヨアン・イゴカー (2012-09-24 08:34) 

Enrique

Ceciliaさん,nice&コメントありがとうございます。

以前試してみた環境とはハードもソフトも異なりますのでなんとも言えないのですが,そのときは音のズレよりもノイズを気にしていたと思います。(以前:Vaioノートに外部マイクとヘッドホン+RadioLineFree, 現在:MacBookAirの内蔵マイクとヘッドホン+Audacity)

現在の環境ではやはり内蔵マイクのためか結構ノイズが入ります。
http://youtu.be/ixdhGHKzeyo
それとこの記事のレイテンシーの問題があります。

PCで多重録音するには,やはり専用機器を使わないときっちりとは行かないと思います。現在Audacityなどのソフト自体はフリーでもかなりのものなのですが,何分ハードウェアは音楽専用のものでないと,音のズレの処理なども上手くいかないようです。

単発の録音にはやはりICレコーダが一番ですので,やや不便ですが,ICレコーダーで1トラック目録音,1トラック目を別の再生機でヘッドホンで聞きながら,別に2トラック目を録音,というようにパートを別々に録音して,ミックス作業だけをパソコン上のソフトでやればかなり高品質なものになると思います。

しかし録音からパソコンで出来たほうが絶対楽なので,先日紹介した機器を購入して試して見ようと思っています。
by Enrique (2012-09-24 12:49) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさん,nice&コメントありがとうございます。

そうですね,生の演奏をしている人間は楽譜どおりに弾いているつもりでも結構ずれているようです。鍵盤入力などの際はズレを補整してくれるのですね。

生の重奏ですとメンバーは協調して合わせようとしますが,機械的な多重録音だとカラオケ状態になります。生の多重録音でも,人間のようにうまく合わせてくれるような機能があれば,便利だとは思いますが,そういうことが出来るのでしょうか?今のところ録音系にはなるべくレイテンシーがなるべく小さく,ふらつかないことを期待してはいます。
by Enrique (2012-09-24 13:01) 

glennmie

そうなんですか。
デジタルの世界では遅れるのが普通のことなんですか。
そのことにびっくりしました。
だって、オンタイムじゃないなんて、それが普通って、だめじゃない?って、しろうとには不思議です。
by glennmie (2012-09-25 22:17) 

Enrique

glennmieさん,nice&コメントありがとうございます。
ソフト的な補正は出来るようですが,遅れはイカンともしがたいようです。何でもデジタルの時代ですが,遅れは最大の課題ではないでしょうか。
今年のイグノーベル賞で,おしゃべりな人に200ミリ秒くらい遅れた本人の話を投げ返す装置が選ばれましたが,デジタル装置って,そのまんまですね。
高級な装置を使えば遅れは小さくなり,音楽収録に問題はない様にはなっているようですが,アナログ装置と違い,瞬間的という訳には行かないですね。
by Enrique (2012-09-26 07:59) 

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