平面スピーカの話 [電気音響]
最近,平面スピーカーと言うものを知りました。
ついでに調べてみると,何通りかの方式がある事が分かりました。
従来のラウドスピーカーの原理では駆動力として用いられる力は電磁力か静電力です。
前者の電磁力は効率が良いので,従来からスピーカのほとんどはこれが使われて来ています。さらに近年,強力な磁石が開発されたため,スピーカユニットもずいぶん小型化しました。ダイナミック型と呼ばれるもので,磁石の作る磁界内で信号電流が流れるヴォイス・コイルが通常紙製などのコーン状の振動板を駆動します。
もう一方の力は静電力です。こちらは原理的には平板コンデンサの片方を振動板にしたものですが,これでは余りにも能率が悪いので,電極間で帯電させた振動板を静電力で駆動します。振動板を帯電させる直流電源が必要な上にこれでも依然と静電力は小さく扱いにくいですが,振動板が精密にコントロール出来て音が良いとされ,従来の平面型スピーカはこちらを用いた駆動方式とセットだったようです。いわば駆動方式と平面振動板が相性が良いわけです。コンデンサ型と呼ばれるもので,ごく一部のマニアの方が使うシロモノでした。
ちなみにマイクロホンは音を電気信号に換えるものですから,原理的にはスピーカーを反対に使ったもので,ダイナミック型・コンデンサ型いずれもあり,特に楽器収録などではコンデンサ型が主流です。
さて,ここまでは従来のスピーカの復習ですが,最近の平面型スピーカは,必ずしも上述の駆動方式と振動板形式のセットにははまらないものが登場しているようです。
一つは,小型のスピーカ・ユニットを鈴なりにつけて平面化したものです。この会社のものが結構有名のようです。駆動力自体は電磁力のようです。磁石が高性能化したのでユニットの小型化が実現したのでしょう。
この手の平面スピーカの優れた点は従来のスピーカの様にボックスに入れる必要が無い事です。発生する音は,平面波に近く,音の指向性に優れ,遠くまで届きます。この辺は,ギターの音とも共通する事です。表面板の薄い楽器は近くでは良く鳴りますが,音が拡散したり,表面板の分割振動によって音を近接でやりとりしてしまい,遠くまで届きません。表面板のしっかりした楽器の音は,より平面波に近いかたちで遠くまで進んで行くとみなせます。
長年のキャリアから生み出されたこちらのものは,原理は従来のダイナミック型と変わりませんが,ユニットの振動板がコーン型から平面板になったものです。平面の振動板は多分ダンマンやレドゲイトなどのダブルトップ・ギターの材質と似たものではないでしょうか?これは,ほぼ従来通りのボックスに入れられますが,ユニット自体の振動特性が良い(平らなまま揺れる)ので高音質のようです。
また,スクリーンや液晶パネルなどを平面スピーカとしてしまう技術もあるようです。
大手企業の製品でも,平面スピーカ的な発想はあるようです。パイオニアのTS-STH1000は,自動車用の薄型スピーカ。飛び出す絵本のしくみをヒントに開発されたそうです。
また,平面スピーカとは又別かもしれませんが,新原理?に基づいた方式のスピーカ・システムも幾つか開発されているようです。
「波動スピーカ」と呼ばれるものがあります。筒の両端に従来型のスピーカーユニットをペアでつけたもので,従来型スピーカでは必ず何らかの処理しないといけない背圧をユニット同士で打ち消し合う,うまい方法だと思います。その音質は素晴らしいらしいですが,そのネーミングは全くの謎です。もともと音は波動ですし,何か新しい原理を使っている様にも見えません。
「物質波スピーカ」。これもネーミングはいただけません。「物質波」は電子などの極微の粒子が波動としても振る舞うという量子力学上の概念で,スピーカの振動などの機械的な巨視的な振動にこのネーミングはまずいでしょう。このスピーカは音を通常言われる粗密波(縦波)ではなくて,横波として扱っているのだそうです。ここで使っているのは「物質中を伝わる波」という位の意味らしいです。この意味としては,地殻中を伝わる地震波のP波(縦波)S波(横波)が有名です。例えて言えば,空気中の音は縦波のみだと言われていたのが横波もあって,このスピーカはそれを具現化しているのだということ(らしい)です。横波の発生には媒質の硬さが必要です。空気にも僅かの硬さがありますから,横波も僅かに存在してもおかしな事はないでしょうが,ハッキリと知覚出来る様なものなのでしょうか?空気を介さずに床や体を通して伝わる音のことを言っているのならば分るのですが。
どうもスピーカ技術には,ナゾな部分も存在します。突っ込んだところは「企業秘密」とからしいですが,楽器音響がナゾな部分と同根だと思います。細かなところは説明しようにもしにくい,ノウハウなんでしょう。
ダイナミック型スピーカはもう何十年も主流です。最近の変化は,磁石の強化とか,振動板の材質に新素材が使われるとか,そのような改良・改善が主だとばかり思っていましたが,平面スピーカがらみは結構技術的ブレークスルーもある様です。
ついでに調べてみると,何通りかの方式がある事が分かりました。
従来のラウドスピーカーの原理では駆動力として用いられる力は電磁力か静電力です。
前者の電磁力は効率が良いので,従来からスピーカのほとんどはこれが使われて来ています。さらに近年,強力な磁石が開発されたため,スピーカユニットもずいぶん小型化しました。ダイナミック型と呼ばれるもので,磁石の作る磁界内で信号電流が流れるヴォイス・コイルが通常紙製などのコーン状の振動板を駆動します。
もう一方の力は静電力です。こちらは原理的には平板コンデンサの片方を振動板にしたものですが,これでは余りにも能率が悪いので,電極間で帯電させた振動板を静電力で駆動します。振動板を帯電させる直流電源が必要な上にこれでも依然と静電力は小さく扱いにくいですが,振動板が精密にコントロール出来て音が良いとされ,従来の平面型スピーカはこちらを用いた駆動方式とセットだったようです。いわば駆動方式と平面振動板が相性が良いわけです。コンデンサ型と呼ばれるもので,ごく一部のマニアの方が使うシロモノでした。
ちなみにマイクロホンは音を電気信号に換えるものですから,原理的にはスピーカーを反対に使ったもので,ダイナミック型・コンデンサ型いずれもあり,特に楽器収録などではコンデンサ型が主流です。
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さて,ここまでは従来のスピーカの復習ですが,最近の平面型スピーカは,必ずしも上述の駆動方式と振動板形式のセットにははまらないものが登場しているようです。
一つは,小型のスピーカ・ユニットを鈴なりにつけて平面化したものです。この会社のものが結構有名のようです。駆動力自体は電磁力のようです。磁石が高性能化したのでユニットの小型化が実現したのでしょう。
この手の平面スピーカの優れた点は従来のスピーカの様にボックスに入れる必要が無い事です。発生する音は,平面波に近く,音の指向性に優れ,遠くまで届きます。この辺は,ギターの音とも共通する事です。表面板の薄い楽器は近くでは良く鳴りますが,音が拡散したり,表面板の分割振動によって音を近接でやりとりしてしまい,遠くまで届きません。表面板のしっかりした楽器の音は,より平面波に近いかたちで遠くまで進んで行くとみなせます。
長年のキャリアから生み出されたこちらのものは,原理は従来のダイナミック型と変わりませんが,ユニットの振動板がコーン型から平面板になったものです。平面の振動板は多分ダンマンやレドゲイトなどのダブルトップ・ギターの材質と似たものではないでしょうか?これは,ほぼ従来通りのボックスに入れられますが,ユニット自体の振動特性が良い(平らなまま揺れる)ので高音質のようです。
また,スクリーンや液晶パネルなどを平面スピーカとしてしまう技術もあるようです。
大手企業の製品でも,平面スピーカ的な発想はあるようです。パイオニアのTS-STH1000は,自動車用の薄型スピーカ。飛び出す絵本のしくみをヒントに開発されたそうです。
また,平面スピーカとは又別かもしれませんが,新原理?に基づいた方式のスピーカ・システムも幾つか開発されているようです。
「波動スピーカ」と呼ばれるものがあります。筒の両端に従来型のスピーカーユニットをペアでつけたもので,従来型スピーカでは必ず何らかの処理しないといけない背圧をユニット同士で打ち消し合う,うまい方法だと思います。その音質は素晴らしいらしいですが,そのネーミングは全くの謎です。もともと音は波動ですし,何か新しい原理を使っている様にも見えません。
「物質波スピーカ」。これもネーミングはいただけません。「物質波」は電子などの極微の粒子が波動としても振る舞うという量子力学上の概念で,スピーカの振動などの機械的な巨視的な振動にこのネーミングはまずいでしょう。このスピーカは音を通常言われる粗密波(縦波)ではなくて,横波として扱っているのだそうです。ここで使っているのは「物質中を伝わる波」という位の意味らしいです。この意味としては,地殻中を伝わる地震波のP波(縦波)S波(横波)が有名です。例えて言えば,空気中の音は縦波のみだと言われていたのが横波もあって,このスピーカはそれを具現化しているのだということ(らしい)です。横波の発生には媒質の硬さが必要です。空気にも僅かの硬さがありますから,横波も僅かに存在してもおかしな事はないでしょうが,ハッキリと知覚出来る様なものなのでしょうか?空気を介さずに床や体を通して伝わる音のことを言っているのならば分るのですが。
どうもスピーカ技術には,ナゾな部分も存在します。突っ込んだところは「企業秘密」とからしいですが,楽器音響がナゾな部分と同根だと思います。細かなところは説明しようにもしにくい,ノウハウなんでしょう。
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ダイナミック型スピーカはもう何十年も主流です。最近の変化は,磁石の強化とか,振動板の材質に新素材が使われるとか,そのような改良・改善が主だとばかり思っていましたが,平面スピーカがらみは結構技術的ブレークスルーもある様です。
はじめまして
平面スピーカーにブログ読みました。いろいろな方式から私もダイナミック方式でものづくりしています。
私の作品はライト・イア合同会社の製品で採用してくれています。
販売品(amazon)へ上市しています。
100%手作りユニットですがピロースピーカーとして人気が出てきました。
よろしかったらのぞいてください。
http://bookspeaker.right-ear.com/Bookspeaker/homu.html
by 池島 博文 (2012-09-03 09:32)
池島 博文さん,コメントありがとうございます。ページ拝見しました。
なるほど,原理了解しました。昔のコンデンサ・スピーカを駆動する静電力のかわりに効率の良い電磁力を使った訳ですね。ダイナミックスピーカのヴォイスコイルに働く電磁力が平面振動板に分散されたうまい仕組みです。技術的には磁石板への周期的な着磁が難しかったのではないでしょうか?
by Enrique (2012-09-03 18:35)
こんにちは
はじめまして音の世界は苦手ですが
興味があります
これからもお邪魔させていただきます
SILENT
by SILENT (2012-09-19 10:09)
SILENTさん,初めまして。nice&コメントありがとうございます。
御ページを拝見しました。素晴らしい画像です。ものの見方や造形的な美,大いに鑑賞させていただきます。拙ページ何かご参考になれはよろしくおねがい致します。
by Enrique (2012-09-19 11:17)
SILENTさん久々にブログは意見しました。
平面スピーカーをライフワークにして独立し2年+目です。
ホームページも工事中ばかりで反応無いのですこし力入れたいと思っています。磁石への着磁はプロですから難しいことはないのですが、着磁をする間隔は治具で決まります。3mm~6mmぐらいで作ります。治具は最低で50万円程度かかります。(治具の自作もしてきました。)
今超音波領域の再生用スピーカーを音楽以外の用途で・・・と考えています。
ではまたコメントします。
健康にはお気を付けくださいね。
by 池島博文 (2012-10-31 05:06)
池島博文さん,コメント頂いていました。ありがとうございます。
以前の平面スピーカーのページ工事中ですね。
磁石に関してはプロでいらっしゃるとのことなので,着磁はどんな風にでも自在なのでしょうね。あのスピーカの構成はやはりあの磁石がポイントの様に思います。
平面波で遠くまで伝わると言う性質は色々用途ありそうですね。
by Enrique (2012-11-01 20:25)