SSブログ

ギター奏法でのトリル [演奏技術]

トリル,広い意味での装飾音に関する記事は何度か書きましたが,ギターの具体的奏法には触れていませんでした。

バッハのチェロ組曲の三番のブーレなど,学生時代昔弾いた時は,下から(記譜音から)入れていました。多分ヨノナカ皆そう弾いていたんでしょうね。すでに現代ギターなどに上から入れるとか書いてあったので,そういうことを言うと,「ロクに弾けもしないでリクツばっかり」と言われたものでした。

確かに上から下に掛けるとか,色んな種類の装飾音を云々しても,ギターでキレイに弾けなければ意味がありません。
どちらから開始するにしても,ヴァイオリンなどと違い右手(もしくは弓で)弾きませんから,左手の押さえ(弦長)の変化だけでは音が出ません。ギターのトリル状の装飾音は,ハンマリングとプリングオフの組みあわせ,すなわち左手だけではじいて音を出すことになります。

難しい反面,メリットもあります。技術的にはさらに難しくなりますが,左手だけではじいていて,右手が空きますから,トリルに伴奏を入れることが出来ます。

めぼしいところでは,ソルの第二グランドソナタOp25の第一楽章にそんな部分があります。これは古典曲ですから,トリル部分は下から(というかファから),ファソファソファソファソ・・・・・・・・・と弾くわけですね。
Sor25-I1.PNG

三度下でもう一度出てきます。
Sor25-I2.PNG


伴奏入れながらのトリルは,何分左右でやっている動作が全く異なるので,難しいですが,力が抜けて左手が独立しているかどうかのチェックになります。

プリルトリラー状前打音ですが,カルカッシの練習曲Op60の第21番は,色んな指の組み合わせでトリル状の音を出す良い練習になると思います。譜面のプリルトリラーをさらに二回づつにしながらキレイに力抜けて弾ければさらに良いと思います。
Carcassi60-21.PNG


一弦で弾く弦楽器的なトリルはギターでは難しいわけですが,伴奏入れという技以外に,ヴァイオリンでは出来ない(事も無いのでしょうがその必要も無い)必殺技があります。いわば,鍵盤的もしくはハープ的なトリル,二弦にまたがるトリルですね。この奏法はいわばコロンブスの卵で,ウン十年前は無かった奏法です。現在の奏者はもちろんジョン初め,バルエコでもラッセルでも福田さんでも盛んにやりますし,アマチュアだってやります。

ここ一番決めたいところで,非常に効果的な場合があります。ちょっと思いつくところでは,バッハのリュート組曲第四番のプレリュードの最後です。ここも一部伴奏(他声部)も入れないといけないので,以前弾いた時は一弦のトリルでやりましたが,ジョンのは,二弦トリルを使って印象的でした(この譜面は二段譜で書かれています)。これはソファソファソファソファ(いずれも#)・・・・・と弾くわけですね。
Bach1006aFin.PNG

このような曲で,「ここ一番」を上手く二弦トリルで弾ける場合はいいのですが,あちこちに盛んにトリルなど装飾音が出てくる鍵盤曲を弾く場合は大変です。当然全く無理な場合もありますが,そこそこ弾ける場合でも,一弦のトリルと二弦のトリルを併用しないとイケナイ場合も出て来ます。当然併用するとそれぞれで音色と響きが異なって来ますので,それらの対策が必要です。
nice!(2)  コメント(4) 
共通テーマ:音楽

nice! 2

コメント 4

アヨアン・イゴカー

>二弦にまたがるトリル
これはバイオリンでは出来ないような気がします。

>当然併用するとそれぞれで音色と響きが異なって来ますので
これは、音の一貫性が必要な場合には、やはり使えない技法ですね。
by アヨアン・イゴカー (2012-09-02 18:07) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさん,こちらにもnice&コメントありがとうございます。
音色差の緩和には,一弦トリルと二弦トリルを混ぜると言う方法があります。それから,爪を使用すると音色差が大きいですが,指頭弾弦だといずれも指の頭で弾いていることになり音色の差が出にくいということがわかります。
by Enrique (2012-09-02 21:11) 

黒板六郎

そっかジョンのあのトリルは2段だったんだ。知らんかった。
しかしあの全曲集で4番のプレリュードと998のフーガは別格でしたなあ。なぜかCDでは998がはいってませんね。全然ハナシがちゃいますが。
by 黒板六郎 (2012-09-04 22:05) 

Enrique

黒板六郎さん,nice&コメントありがとうございます。
私が見た(聞いた)のはDVDのもの(セビリアコンサート)だったので画像もありよくわかりました。それではこのプレリュードだけ,998もプレリュードだけでした。私は全曲集というのは聞いていないですが,この辺の曲は正に完ぺきな演奏ですね。この画像ではジョンの練習風景も入っており,間違うところは,ヤラセ(笑)ではないのかなと思ったものでした。
by Enrique (2012-09-05 05:51) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。