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マリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコ [作曲家]

カステルヌオーヴォ=テデスコの名前は何度か挙げていますが,前回紹介の書籍,「ギターの名器と名曲」によれば,カステルヌオーヴォ=テデスコの名前は面倒なので単にテデスコと表記するとありました。たしかに通称はテデスコで困りませんが,アルファベット順で検索する場合はTではなくて,"C"である事に注意する必要はあります(50音順でも「カ」です)。

一般の音楽愛好家にはあまりなじみのない名前です。妻など,エネスコと勘違いしていました。でもギター界ではかなり有名です。生まれはイタリアで,後年アメリカに渡った20世紀の作曲家です(1895-1968)。

テデスコには沢山沢山の作品がありますが,アマチュアが気軽に弾いて楽しめるものはそう多くはありません。てですこさんが特別です。てですこさんの過去の記事を見ますと,沢山のギター曲にチャレンジしておられるのが分かります。

名前の由来に関しても,よく把握しておられます。昨年この作曲家に関する記事を書いた時,まずCeciliaさんが興味を持ってくださいました。コメントの内容を引用再掲させていただくと,

>カステルヌオーヴォ=テデスコ
直訳したらドイツの新しい城になると思います。(笑)
今知りましたが、名前はマリオなのですね。
ギターの方にはおなじみの作曲家でお好きな方が多いようですね。
私もNMLで気になった作曲家です。(名前がかっこいいので)

そのあと,てですこさんから解答のコメントをもらいました。

”Mario Castelnuovo-Tedesco”ってへんな名前ですよね。彼はユダヤ人で、ご存知のようにファシズムの台頭によりアメリカに渡りました。彼はイベリア半島由来のセファルディムとよばれるユダヤ人。”テデスコ”という名はドイツやポーランドのユダヤ人、いわゆるアシュケナジムの名前です。2系統のユダヤの名前がハイフンで結合してあります。この理由は、マリオの大叔母さんの夫がドイツ系ユダヤ人でテデスコと名乗っていました。しかし二人には子どもがいませんでしたから、名前が途絶えてしまう、と考えて、マリオのおじいさんにテデスコという名前を付け足して受け継いで欲しいと頼んだのです。それでこんな名前になったようです。
ちなみにCastelnuovoは文字通り新城さんですが、由来はスペインの Castilla Nuevaという地名からきているようです。

このコメントが名前の由来を雄弁に語っています。略称される「テデスコ」は,むしろ遠縁の方の名字だったのですね。てですこさん,このことを過去に記事にしておられました。

確かに長ったらしい名前で何とかしないといけません。欧米人で複合姓などで長くて難しい名前の場合,イニシャルで表わすことがありますが,そうするとC.T.と言うことになります。ファーストネームはマリオなので,「マリオ・C.T.」,親近感は湧きますが,長年呼び慣れた「テデスコ」はそう簡単に変わるものではありませんね。

日本語では複合名の場合「=」でつなぐことが多いようです。ギター関係では,ヴィラ=ロボス(伯),モレノ=トローバ(西),一般音楽分野では,リムスキー=コルサコフ(露)などがいますね。モレノ=トローバはトローバとつめることもありますが,その他は,複合名全部言いますね。ロボスとかコルサコフとか言ってもピンと来ないかも知れません。逆にテデスコの場合,フルで言う事は少ないですね。多分長さのバランスの問題だと思います。日本語的発音では,カステルヌオーヴォが長くテデスコが短くてバランスが悪く感じてしまいますが,欧米では,Cas tel nuovo - Te des co で,バランスは良いので,略されることは余り無いように思います。

一般には,ギター協奏曲第1番が有名です。ギター協奏曲の分野では,アランフェスが別格で,音楽一般でも十指に入るくらいの超有名人気曲なので,その次となると意見が分かれますが,この曲が最右翼だと思われます。

てですこさんのコメントにもあるように,ユダヤ系であったため大戦前夜アメリカにのがれ,当地で映画音楽も多く作曲しています。「名犬ラッシー」の映画の音楽もテデスコ作だとのことが「ギターの名器と名曲」にも書かれています。やはり,てですこさんの過去の記事にもありました。

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REIKO

彼だけのCDは持っていませんが、名前は「一度聞いたら忘れない」「長いわりには覚え易い」人だと思います。
単に「テデスコ」ってやっちゃうと、近年流行の「ステテコ」みたいでカッコ悪い。(笑)
「カステルヌォーヴォ」が付いてるから印象に残る気がしますね。
今、手元の作品名辞典を見たら、「平均律」ギター曲集」なんてのを作曲してるんですね!!
1962年作だから、これは(バッハの例のヤツとは違い)正真正銘の平均律なんでしょうね・・・ヤだなあ。(^ ^;)
by REIKO (2011-06-15 21:00) 

Enrique

REIKOさん,コメント有難うございます。

ステテコ流行っているのですか?超クールビズですね。往年の植木等を思い出してしまいます。

C=テデスコはギター音楽やアメリカに渡って映画音楽なども手がけたせいもあるのか,マイナー感はぬぐえませんが,現代のしっかりした作曲家だと思います。

やはり音律の観点からのコメントですね(笑)。
近現代の作曲家は音律の適用に関しては難しそうです。12ETの使用を前提としても,ある想定音律の記憶の中でやっているような気もしますし,無邪気に近代化=12ET化に乗っている面もあるかもしれませんし。

「平均律」ギター曲集は無論バッハのを模したもので,その名もWell-Temperedなので,本来12ETでないはずですが,誤訳の連鎖を生んでしまうのでしょう。但し,想定した楽器は現代のもの?ならば,それも含んでしまうかもしれませんが。

私は譜面も見たこともありませんし,録音もきわめて少ないです。しかし私が取り組んだ彼のソナタの譜面では,重変化記号も頻出し何らかの音律を想定している様にも見えます。62年当時,専門家の間でもWT=12ETが固く信じられていたのならば仕方のない事ですが,賢いユダヤ人の彼が無邪気に12ETを想定しているとも思えないのですが。

いすれにしろ難曲で二重奏(ギター独奏ではとてもムリ)なので腕達者が揃わないと,実演もままなりません。研究が進むことはあまり無さそうですね。
by Enrique (2011-06-16 18:18) 

てですこ

興味深い話題をありがとうございます。
C=テデスコのギター2重奏作品の楽譜はすべて持っていますが、
大変難しく、私にはほぼ手が出せないくらいなのですが、24曲のうち
17番のフーガは家内と演奏したことがあります。
カノン風ソナチネはプレスティとラゴヤに献呈された位なので、
そういうレベルの作品のようです。
しかし、楽譜が書棚の飾りかというと、そうでもなくて、実際弾いてみると、仕上げることは出来なくても、とてつもなくすばらしい感覚を体験できます。なんと言ってよいのかわかりませんが、私のようなレベルのアマチュアでも、優れた音楽性を感じながら、十分楽しめる、不思議な作品です。
by てですこ (2011-06-16 22:22) 

てですこ

24の平均律ギター曲集もプレスティとラゴヤに献呈されています。念のための補足です。失礼しました。
by てですこ (2011-06-16 22:26) 

Enrique

てですこさん,コメント有り難うございます。
C=テデスコの平均律はプレスティとラゴヤに献呈でしたか。貴重な情報有り難うございます。今ならさしずめアサド兄弟とか。
普通2重奏だと各パートは比較的やさしいものですが,そうはならない,音楽重視の姿勢がうかがわれますね。ギタリストの作品は弾きやすくても,残念ながらそうはならない事が多いですので。
やはり彼に関してはてですこさんですね。
テデスコに取り組んでみたいが中々難しいというのがプロでもあるようですね。
by Enrique (2011-06-17 07:45) 

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