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大地震 [科学と技術一般]

M9.0(気象庁発表の最終修正値)の超巨大地震が東日本を襲いました。
その後の被災地の惨状,原発の危機的状況等見るにつけ,当方では直接の被害は無かったのですが,仕事が忙しかったこともあり,ブログを書く気になりませんでした。

地震発生当日(3月11日)は,休日の代休で自宅にいました。休日に出ても代休とることは殆どないのですが。地震発生第一報は,のんびりと自宅で代休を過ごしていた金曜日,NHK-FMの「気ままにクラシック」を聞くとはなしに聞いていた時でした。

番組を割って地震速報が入り,揺れへの警戒と津波への注意が促されました。地震の強さを示すマグニチュードは7.9と放送されました。震源の近くで震度7と出たとも放送され,すぐにTVをつけると一斉に津波警報が出されていました。どのくらい時間がたったでしょうか?TVではあまりくわしい被害状況も入らない中,小さな津波が観測されたような報道があったと思います。マグニチュード7.9はかなり大きいですが,沖合でのこと,そうひどくも無いのかな?とつい思っていました。

New York Times始め諸外国の報道では,日本の気象庁がM7.9としていた時点から米国地質調査所USGSの発表値としてM8.9と報道していました。その時はあまりピンと来ず,何かの間違いかと思いました(その後,8.4, 8.8と再修正)。数日後さらに9.0と再々修正されたのはご承知のとおりです。

Mスケールで2違うと地震のエネルギーは1000倍違うことになりますので,0.2上がるごとに約2倍のエネルギーです。1違うと約32倍のエネルギー差です。マグニチュード値にも種類があるようです。気象庁の定義のものもあるようですので,USGSなどのものとは計算方法が異なるのかと思っていましたが,外国報道ではRichterスケールとしており,気象庁もモーメント・マグニチュード(Mw)という新しい尺度を使っており,ほぼ等価なもののようです。観測史上最大であったことや断層破壊に時間が掛かったことなど,USGSでも若干の訂正をしたようでした。実際最初の震動は割と小さく,連鎖的に巨大な揺れが来たようです。事後適切に修正をしており,当事者の責任を言うつもりは全くありませんが,地震発生直後この地震を過小評価してしまったきらいはあるのではないかと思います。もちろん,かりに超巨大地震だぞと直前直後に報道されたからといって被害状況に大きな差はなかったかもしれませんが。

ゆれの後に来た津波の恐ろしさは目を疑いました。地震直後TVの生放送で見た飲み込まれたクルマ,家家家,コンテナ,電車,船,飛行機,街ごとの壊滅,何よりもその中に人がいたかと思うと全くやり切れません。こういう巨大な災害が私たちの国で起こった事に愕然としました。

それから,福島の原発に想定外のトラブルが出ました。
圧力容器や格納容器,それを囲むコンクリートの強度は平時ならば十分すぎるほどです。戦闘機が突っ込んでもびくともしないと言われます。ハード的には何重にも安全対策が施されているはずですが,原発の運転の死活を握る冷却装置のバックアップがまるできかないのでは,いくらでも温度が上がり,機械的にいくら丈夫でも持ちません。それに今回の事故で,一般の人にも明らかになったことは,使用済み核燃料は簡単に吹き飛ぶ建屋内にほぼむき出して水につけて保管されていることです。緊急停止した炉心は頑丈な容器で2重に遮蔽されていますが,使用済みと言っても長期間にわたって崩壊熱[1]を出し続けますので,溶融する可能性もあり,水が止まればむき出しのこちらのほうも怖いことになります。
IMGP2325.JPG
核燃料ペレットの原寸大ダミー。ウランは磁石につく重希土類金属ですが,金属状態では融けやすく危険なので,高融点の酸化物にしてファインセラミックス状に高密度に焼き固められます。この燃料そのものが,放射性物質の飛散を防ぐ第1の防護壁と言われます。1cm大の燃料ペレットが4mのジルコニウム合金製の筒(燃料被覆管)にびっしり入って1本の燃料棒になっているそうです。これが,水を満たした炉心に1基あたり数百本装填されます。水は発電時の熱媒体として,冷却材として,また放射線の遮蔽,中性子の減速材にと重要な役割を果たすようです。

原子炉は5重の壁で守られていると説明されます。第1が燃料ペレット,第2が燃料被覆管,第3が圧力容器,第4が格納容器,第5が建屋です。今回少なくとも,第2,第4の一部,第5が完全にやられています。日本などの軽水炉で用いられる低濃縮ウラン等では核爆発は起こらないとされています。しかし,燃料から発生し続ける崩壊熱の冷却が間に合わず燃料が被覆管だけでなく完全に溶融して水に触れ,圧力容器内で水蒸気爆発を起こして大量の放射性物質が環境にまき散らされるのが最悪のシナリオでしょう。当然それを防ぐための作業は必死に続けられているはずですが,使用済み燃料プールの水がなくなり放射性物質が出続けていると,その作業自体が出来ません。

自衛隊や消防の連日の放水作業もあり,最悪の事態は何とか避けられているようです。20日現在,外部電力を引き込み,試験通電ののち本来備わった冷却設備の再起動を図るようです。関係者,特に現場で決死の作業をしている人たちには頭が下がります。この時点で原子力安全・保安院や電力会社の責任を追及する事は控えたいですが,今後原子力に頼りすぎたエネルギー行政が見直されることは必至でしょう。程度の問題はあるにしろ放射性物質の漏出が起こってしまっています。あとはその濃度の問題でしょう。数値を踏まえ冷静に行動するしかありません。

被災者への義援金などの積極支援はもちろんですが,私含め何も出来ない人は,せめて邪魔をしないよう冷静に自分の責務を果たすこと,燃料や保存食の買いだめに走らないようモラルある行動に心掛けたいものです。
今回際立ったのが,マスコミの姿勢です。ここで細かなコメントは差し控えたいですが,みなさん色々な感慨をお持ちになったのではないでしょうか?何処も競うように地震の被害状況と原発の状況を流し,20日現在,原発の状態がすごく好転したわけでもなさそうですが,報道各社一斉に報道は少なくなりました。好転したのならそれを報道してもらいたいものです。その一方で,ついに連合軍が軍事介入したリビア情勢などが殆ど報道されません。諸外国の主要紙の速報版を見ていたほうがずっと良さそうです。

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Cecilia

私も11日は暇にしていました。
そろそろ軽い記事でも書こうと思っていたところ、今回の大震災。
実家のこともありますし、何らかの形で記事を書きたいと思うものの、なかなか書くことができません。
実家のほうでは地震は日常的に起こっていて、今回もまたかとは思っていたのですが、思いのほか大きな災害で驚きました。
神戸の震災の時も夫の母や義妹の家族が被災し、他人事ではないということを思い知らされています。


by Cecilia (2011-03-21 21:09) 

Enrique

Ceciliaさん,nice&コメントありがとうございます。
私にも中越地震などに関係者が多くいます。今回の東北方面にも何人もいます。かつて阪神の惨状をその後中越地震の震源部となった場所で聞いていました。滞米中には911テロがあり,かの地を去った後,ハリケーン・カトリーナが襲いました。私自身綱渡りで自然災害から逃げ回っているようなものです。いつ遭遇するかわかりません。
今回の地震は本当に凄まじいものでしたが,第一報の評価が正しければ,最初の揺れのエネルギーの40倍以上もの激しいゆれがその後襲った事になります。M7.9と聞き,情報の空白時間があったので,そうたいした事無いのでは?と一瞬思ったものですが,その後のTV映像は目を疑うものでした。
心の余裕がないとなかなか音楽もやれませんね。こういうときだからこそポジティブに行きたいとは思うのですが。
by Enrique (2011-03-21 21:51) 

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