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練習曲について [曲目]

先日,NHK教育テレビで,作家の平野啓一郎氏解説の「こだわり人物伝 ショパン 魂の旋律」を見ました。ショパンの生涯が大変分かりやすく描かれていた番組だったと思います。本放送は4回編だったようですが,1回でまとめて見たような?気がします。

ところで,ショパンの練習曲は,練習曲の芸術性を高めたと良く言われます。当番組での,その紹介のところでは,比較としてハノンが取り上げられました。「ドミファソ・ラソファミ・レファソラ・シラソファ」と,延々と始まるあれですが,ショパン以前はこういうものしか無かったと描かれていました。わかりやすく極端な例を引いたのでしょう。チェルニーにしても,確かに技巧練習的側面は強いですし。

それまで芸術性の高い練習曲は無かった!と。ショパンの番組ですから,ショパンにスポットライトを当てるのは当然ですが,ピアノ界の歴史はさておき,ギターファンにはショパンより32歳先輩のソルが思い浮かびます。

楽器は違います(ソルはピアノ教師もしました!)が,パリに出て活躍した点では(祖国に戻れなかった点でも)共通です。彼も練習曲を沢山作曲しました。Op.6, 29, 31, 35, 44, 60ですね。しかし,本人がはっきり「練習曲」と記したのはOp.6と29の各12曲のみです。

これに関しては,現代ギター誌などでも取り上げられていますし,昨年出た臨時増刊でもソルの練習曲に関する詳しい情報が載っていました。学習者が使うこと(をすすめられること)が多いセゴビア編の20の練習曲は,これらから,20曲が選ばれています。Op.6から8曲,Op.29と31,35からそれぞれ4曲が選ばれています。他にもイエペス編や,カルレバーロ編,阿部保夫編もあります。現在では練習曲の全集がいくつも出版されていますし,巨匠編にこだわらなくても,オリジナル版にあたる事も容易になりました。(下の写真はMel Bayの練習曲全集)。
IMGP2143.JPG

各練習曲を再記すれば,
12の練習曲Op.6 (1815年~1817年頃)
12の練習曲Op.29(Op.6の続編 1827年頃)
24の漸進的なレッスンOp.31(1828年)
24の非常にやさしい課題曲Op.35(1828年)
24の小品Op.44(1831年)
ギター練習への入門(25の課題曲)Op.60(1836年~1837年頃)
となっています。

ソルの方針は,Op.6の12曲とOp.29の12曲の計24曲を真の練習曲とし,それ以降は,アマチュア向け教材だったようです。特に後期になるにつれやさしくなっている事から見ても作曲の背景にはギターブームでの多くのアマチュアの存在があったのでしょう。いずれにせよ,ブローウェルに,「美しすぎて練習にならない」と言わせたソルの練習曲は,楽器が違いますが練習曲に芸術性を持たせた面で,割とさきがけと言えるのではないでしょうか。

ショパンの練習曲に戻りますと,同番組では,ショパンにもプロ向けとアマ向けの意識があったと描かれていました。ショパンはプロフェッショナル向けにこの曲を書いたと。特にOp.10の練習曲(1929~32年頃)はリストに献呈されていますが,「あなたにはこういう曲は書けまい!」という,激しいライバル心があった,と番組では描かれていました。

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nyankome

有名な「月光」はOp.35-22ですから、アマチュア向けの練習曲に入るのですね。
技術的には易しくても、仰るように芸術的に優れた曲が多いと思います。
私もセゴビア編とイエペス編を持っています。
by nyankome (2010-12-16 17:01) 

Enrique

nyankomeさん,nice&コメントありがとうございます。
Op.35は,24のエクゼルシス(エクササイズ)ですね。「月光」はセゴビア,イエペス,阿部の各版にも入っている名曲です。やさしいといっても,Op.35の終わりの方ですし,決して手抜きした曲ではないですね。Op.6や29は,技術レベルが高く,芸術的に弾くのも一苦労です。
by Enrique (2010-12-16 18:42) 

Cecilia

ショパンの曲ではエチュードが好きかもしれません。
短いのも魅力だったりして。
練習曲、教師の側も効率の良い取り扱い方を知る必要があると思います。
by Cecilia (2010-12-17 00:28) 

夢笛myu

ギターを初めて間もない頃にOp.35の練習曲集に出会って以来、ソルの練習曲集は「生涯の友」のような気がします。といってもOp.6やOp.29は難しくてなかなか弾けませんが・・・。
あとちょっと変った楽しみ方と言えるかもしれませんが、朗読(よみきかせ)の伴奏としてギターを弾く時に、ソルの練習曲をよく使いました。Op.31やOP.35に多いアルペジオだけでできているような曲がよく合いました。
by 夢笛myu (2010-12-17 02:43) 

Enrique

Ceciliaさん,nice&コメントありがとうございます。
上達してくると,当然長い曲も弾き出すのですが,弾く方も聞く方も結構大変ですね。ショパンの練習曲は難しいですが,短いのがいいのですね。
ソルはギター教師でもありましたので,プロ用のみならずアマチュア用も沢山残してくれました。全部やる必要もないので,うまく組み合わせて使えばいいのでしょうが,良薬口に苦しのところはあります。得意技にハマれば好きな曲にもなりますね。
by Enrique (2010-12-17 11:44) 

Enrique

夢笛myuさん,コメントありがとうございます。
そうですね,私は沢山は弾いていませんが,「月光」は暗譜している数少ない練習曲(広い意味での)です。これをアンコールで弾けたらいいと思っていますが,まだその出番は無いです。
Op.6や29をステージでバリバリ弾けたら大したものですが,プロでもあまり見かけないですよね。
昔,ラジオドラマ「アグアドの首」というのがあって(直接聞いたわけではありませんが),そのバックがソルのアルペジオ的な練習曲だったと思います。たしかに,品があって美しく,邪魔にもならず,そう言う用途にもぴったりですね。
by Enrique (2010-12-17 11:58) 

FUMI

このHPは、ギターでよろしいですね?
実は、ピアノの他にもと思い、ギターを手にして嬉しくなったのが、
中1の時でした。クラッシックギターでした。
私は、いくらテキスト本を買っても、練習曲どまりで、曲が弾けません。独学で、ギターを練習するとしたら、超初心者で、どんな楽譜
があるんでしょうか?
それから、楽典についてですが、殆ど忘れていて、今持っているもの
でも良いですよね?

by FUMI (2012-10-18 09:17) 

Enrique

FUMIさん,はじめまして。

ピアノやられる方でギターもという方も結構おられます。ギターは和音が出て減衰音というピアノと共通する面と,音色の魅力や可搬性などピアノに無い面も持ち合わせています。
「ギターは簡単だ!」と言う人と「ギターは難しい!」と言う人がいます。私は後者なのですが,前者の方の言い分もわかります。特に和音を弾くことに関しては最もやさしい楽器ではないかと思います。適当に押えてボローン・ボローンとやれば一応サマになります。いくつか押えるコードを覚えれば2,3日でもカッコがつきます。
しかし,ピアノの様にきちんと音をコントロールして弾こうとすると当然長期間の修練が必要で,練習曲からきちんとやる必要があります。さらにややこしいことに,名曲人気曲の中にもコード奏法的に覚えれば結構弾けてしまう曲があります。たとえ原曲はピアノ曲で結構難曲でも!
反対に「アンナマグダネーラバッハの音楽帳」程度の曲でも,ギターではそれ以上に難しかったりします。要するに,難しい面とやさしい面が異なるのですね。

楽典面はピアノと全く共通ですから,問題ないと思います。

ここで紹介したソルの練習曲集は後期になるにつれてドンドンやさしくなるという特徴を持っています。ですから,ソルのOp.60は入門用としていいと思います。一方Op.6や29はバリバリ上級向けです。
入門用には,カルリが一番良くて,中級ではカルカッシのOp.60が有名です。ちょうど,ピアノではバイエルやチェルニーの様なものです。

新しいものでは,ブローウェルやクレンジャンス,ガルシア,佐藤弘和などもありますが,教室などではまだまだ主流ではないようです。

特にソルの練習曲は,ハノンやチェルニーのような単なるメカニック練習ではなくて,音楽性があるので,やさしい練習曲でも独奏曲として十分通用するものも多いと思いますので,私はソルがお勧めです。
by Enrique (2012-10-18 13:21) 

Enrique

それと,追加ですが,ピアノだとだいたい音符そのまま弾けばいいのが,ギターだと,この譜面どう弾けばいいのか?という疑問もあるかも知れません。私はTVのギター教室で始め,大学のサークルでバカになってやっていましたが,現在ならYouTubeなどの映像で確認するか,状況許せばやはり個人指導受けるのがイチバンだとは思います。
by Enrique (2012-10-18 13:27) 

黒板六郎

セゴビアのソルを、毎年正月今年こそやっつけるぞと思い、はや幾年。
以下省略。
by 黒板六郎 (2012-10-19 23:27) 

Enrique

黒板六郎さん,こちらにもコメントありがとうございます。
私は10年ほど前,師についたころ,セゴビア編のを重要教材としてやりました。それまでは,まともに弾いたのは「月光」など2,3曲。それでもレッスンでやったのは半分の10曲くらいでした。レッスンでやらなければまず弾かなかったでしょう。残り半分やらねばと思いながら,10年以上経ちます。しかし,この20曲ソルの100曲以上の練習曲のエッセンスのように言われますが,別にこれでなくてもソル練習曲全集から拾い出しても良いのではないでしょうか。
カルカッシの方Op60を先にやらないといけなかったのですが,一昨年やりました。師に見せたところ,それではイカンて言われて少しやり直しましたが,面倒くさくなって中座中です。一回弾いたものやり直すのは大変です。
練習曲って大変ですが,マジメにきちんと弾いてみると必ず発見があります。特にカルカッシは良いです。なぜこれを,禁遊やアルハンブラの前にやらなかったのだろうと後悔しました。
でも練習曲は易しいのから難しいのまでイロイロありますし,思い立ったときに取り組めば,それなりに効果はあると思います。
by Enrique (2012-10-20 06:42) 

黒板六郎

楽譜は持ってんですけどねえ。カルカッシもカルリも・・・
またまた全然変わりますが、誰ぞの練習曲でト長調なんですけど、ハ調にうつすと、ソ・ド・ド・ドシラシド・ソ・ミ・ファ・ファ・ファミファソ・ミっちゅう練習曲、なんとなく指では覚えてるんですが、誰の練習曲なのかわかりますか?学生時代なんとなく覚えた曲なんですが。これじゃわかりませんかねえ。例の亀田のあられのEnriqueさんの実力で、もしおわかりでしたら教えてください。
by 黒板六郎 (2012-10-20 14:52) 

Enrique

黒板六郎さん,コメントおおきにです。
うむーっ,最初全く思いつかなかったですが,歌っているうち思い出しました。ソルのOp31-5でした。
わたしも何となく覚えていました。40年近く前弾いたと思います。NHKテキストあたりに載っていた気がします。セゴビア編に入るチョット前の練習曲として大変良い曲ですね。
最初は割と調子の良いのほほんとした感じですが,後半ホ短調になったところで泣かせますネ。

by Enrique (2012-10-20 20:11) 

黒板六郎

おっそっれいりました。30年来の悩みが解決しました。出だしはおぼえているんですが、転調するあたりからあいまいで、とにかく楽譜がほしい、いったい誰の曲だったんだ!?という感じでずううっっっと頭のすみっこにわだかまっていたんです。ありがとうございました。
Enriqueさまは命の恩人ですう。また困ったときは助けにきてね。多謝多謝!!!

by 黒板六郎 (2012-10-20 22:40) 

Enrique

黒板六郎さん,どういたしまして。すっきりされたようで何よりです。こんなところでよろしければ何なりと。楽譜はソル曲集に出ていますし,ネット上にも何通りか。まずはIMSLP。12番まで。
http://javanese.imslp.info/files/imglnks/usimg/5/5f/IMSLP237556-PMLP349595-Boije_478.pdf
こちらは手書きですね。
http://img.kb.dk/ma/RiBSms/RiBSms-218.pdf
こちらは24曲全曲で,ご指摘の曲は5番に当たります。
by Enrique (2012-10-21 06:53) 

黒板六郎

ありがとうございます。コレクションに加えさせていただきます。
by 黒板六郎 (2012-10-21 21:38) 

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