SSブログ

特殊調弦について(1) [曲目]

ウォークマンのニュースから,記録媒体の話,コンピュータ関連の話へと行ってしまい,かなり音楽とはかけ離れてしまいました。本来のクラシックギターの話題に戻ります。

さて,ギターの調弦は,上から,①E ②B ③G ④D ⑤A ⑥Eとなっているのは,ギター弾く人ならば誰でも知っている標準調弦ですが,これと異なる調弦が特殊調弦です。

標準とは異なる調弦をすることは何もギターの専売特許ではなく,ヴァイオリンやチェロなどでもあるようで,スコルダトゥーラ(scordatura)と呼ばれています。

ギターで一番多いのは,⑥E → Dですね。

ギターを始めたころ,この調弦が好きで,これを使う曲を探したものです。バスが1音下がっただけで,スケールが大きい感じがして,オーケストラルな響きがしたものです。この調弦で取り組んだ最初の曲は良く記憶がありませんが,

 ・ソルのメヌエット・二長調Op.11-5
 ・「禁じられた遊び」の中に収録されたイエペス編のアメリアの遺言,ド・ヴィゼーのサラバンド,もしくはラモーのメヌエット

のいずれかだったと思います。もっとやさしい曲でカーノのアンダンティーノというのもあったと思います。ひょっとしたらそれが最初かも知れません。

オーケストラ的な響きがするという点では,ソルのメヌエットが最右翼です。出だしの,バスを伴った装飾音的な音形,しびれました。クラシックギターならではの独特な響きで,ちょっと他の楽器にないと思います。低音の伴奏を入れながらの三度の速い動き,独学初心者にはかなりむずかしかったですね。それとやはり,終りのほうの伴奏を入れながらのターン,どうやって弾くんだろうと思いました。

その後,取り組んだ曲では色々あります。
・バッハの「プレリュード・フーガ・アレグロ」BWV998
原調は変ホなのですが,ギターでは例外なくニ長調で弾かれます。
最近では,
・テデスコの「ソナタ・ニ長調ボッケリーニ賛」
楽章により5弦もソに下げます。 
・V.ガリレイの「サルタレロ」
似たような曲に,La Voltaを含む,
・プレトリウスの「テレプシコーレ」,
・アランフェスの第一楽章,
・リョベート編のカタロニア民謡集の「聖母の御子」,「盗賊の歌」,
・ヘンデルの「サラバンド」,この調弦を使えば,鍵盤の楽譜ほぼそのまま弾ける珍しい曲です。
・サンスの「カナリオス」,原曲もロドリーゴの編曲も。どれも好きな曲です。

変わったところでは,エトヴェシュ編のバッハ「ゴールドベルク変奏曲」やラッセル編の「主よ人の望みの喜びよ」は,ト長調でこの調弦を使っています。

⑥弦D(レ)に下げるのは,基本的にはニ長調もしくはニ短調の曲ですが,上の例のように,たまにト長調ということもあります。特にト短調だと⑤弦もソに下げることが多いですね。このケースは次に書きます(つづく)。

nice!(6)  コメント(8) 
共通テーマ:音楽

nice! 6

コメント 8

koten

ギターの⑥弦D(レ)調弦の曲、とにかく沢山ありますよね。6年前に大学ギター倶楽部OBのMLで「変則調弦曲DB化の野望!」と題してスコラダトゥーラのギター曲を書き出したことがあるのですが、⑥弦D(レ)調弦だけは沢山あり過ぎて途中で断念しました(笑)・・あまりに沢山ありすぎて、これはもう「変則」ないし「特殊」調弦とは言えないな、というのが実感です(汗)。
私も古典調律フレット化する前まではこの調弦が大好きで、ポンセのガヴォット、ヘンデルのサラバンドと変奏、聖母の御子、クレンジャンスの舟唄第1番、タルレガの前奏曲1番、など色々と発表しました。
by koten (2010-10-31 19:21) 

Enrique

kotenさん,nice&コメントありがとうございます。
確かに,ありすぎて特殊(変則)チューニングとは言えない感じです。
タルレガもかなりありますね。「アラビア風~」を忘れていましたし,「エンディチャ・オレムス」,ソルの「グランソロ」も忘れていました。そうそうポンセの「南のソナチネ」,編曲モノでも,アルベニスの「マジョルカ」,グラナドスの「献呈」等々,いくらでも出てきそうですね。
ニ長調・ニ短調だと,通常の調弦の方が特殊かもしれないですね。
by Enrique (2010-11-01 00:38) 

nyankome

6弦をDに下げる曲はたくさんありますね。
弾いた曲では、「グラン・ソロ」が一番スケール感があって、ソルはオーケストラの響きを表現したかったのだと感じました。
ポピュラーでは変則チューニングはいろいろありますね。
ヨークの「サンバースト」は1と6弦をDにしますね。
ドメニコーニの「コユンババ」に至っては、とても実音の楽譜だと弾けないだろうなと思いました。
by nyankome (2010-11-01 01:48) 

Enrique

nyankomeさん,nice&コメントありがとうございます。
沢山ありすぎて,有名曲忘れています。弾き出した頃の記憶をたどってみました。「コユンババ」あたりは本当の特殊調弦と言えそうです。引き続き書きたいと思います。これは「実音」の楽譜でも半音ずれていますね。
by Enrique (2010-11-01 07:59) 

koten

ちっちっち、 Enrique さん、ソルの「マルボローの主題の変奏曲」を忘れちゃいけないですぜ(笑)。 これも学生時代に発表したかったのですが(セルシェルの演奏に魅了されました)、結局挫折して発表できなかったのが、今になってどうにも心残りです。
by koten (2010-11-01 12:43) 

Enrique

kotenさん,再コメントありがとうございます。
「マルボロー」弾きましたねー。発表はしていませんが。第何変奏だったかD音をガツンと弾く爽快感はたまらなかったですね。ボロボロー出てきますね!この話題はちょろっとした記事では書ききれないですね。

by Enrique (2010-11-01 14:38) 

夢笛myu

⑥弦Dの変則調弦の利点について、わたしが感じるは、
ニ長調やト長調の場合、
⑥弦Eのままだと時々気になる⑥弦の倍音Gisの音がなくなること、
よく使う高音弦のDの音に⑥弦の倍音が協力してくれることなどでしょうか。
私はバッハの変ホ長調(の曲)が大好きで、
バッハの「プレリュード・フーガ・アレグロ」BWV998は、
ギターで弾ける格好のEs-durの曲として私も(若い時)やりました。
今から思うと、あのフーガをよく暗譜したなと思います(汗)
その時は⑥弦=D、③弦=Fisの調弦でやりました。
③弦Fisのリュート式調弦は、シャープ系の曲の時には今でもよく使います。
by 夢笛myu (2010-11-01 16:48) 

Enrique

夢笛myuさん,コメントありがとうございます。
「プレリュード・フーガ・アレグロ」の特にフーガは暗譜大変ですね。私も一時期は覚えていましたが,いい歳になってやったので,すっかり忘れています。プレリュードだけならある程度思い出せるかもしれません。この曲は,その昔セルシェルのパリコンの演奏をFMで聴き,えらく感動しましたが,こんな曲をギターで弾くのは絶対無理だろうと思い,一時期鍵盤に走っていました。
③弦Fisはルネサンスリュートの印象しかありませんでした。⑥弦Dと併用すると良いというのは目からウロコですね。確かにシャープ系には良さそうですね。
by Enrique (2010-11-01 19:25) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。