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カッコーの音程 [音楽理論]

録音ものが続いてしまった。

カルカッシ演奏はお休みにして,日曜の朝近所で鳴いていたカッコーさんに登場してもらう。たまにやってきては電線などで鳴いている。

この音何だろうか?
ソッミーと鳴いているように感じるが,コーのほうのミが低いようだ。確かめてみる。 何かこちらの方がくるっているような気がしてしまう。
ちなみに昨年書いた記事ではミッドーだったとある。

そこで,周波数を調べてみる。
フーリエ変換して一番低いスペクトルが音程になるわけだが,それをしなくても,
 f=1/T
で周波数が求まる。Tは周期[秒]。
波形表示ソフトを使って,Tを求めてみる。
一つの周期の測定では精度が悪いので,たくさんの波形を入れてみる。カァッ↑コーと鳴き出しに音程がつり上がるように感じるが,たくさん波形を数えると平均化されてしまうが,まあそれはおいておく(フーリエ変換だってそうだ)。
カッ.gif


「カッ」のTは,3144サンプルで56周期入っていたので,
T=3144×1/44100÷56=0.001273081秒となり,周波数は約785.5Hzと出た。44100はこのサンプリング周波数[Hz]で録音しているため(もっと上げると音質は上がる)。
同様に,「コー」のTは,7168サンプルで103周期入っていたので,同様の計算で633.7Hzとなった。
コー.gif
ソが正確に合っているのには驚く。A音440Hzの平均律のソは784.0Hzなので,わずか3セントの差である。へたな楽器より音程がいい。
ミの方は平均律のミよりも低く,純正律のミよりもさらに低いようだ。
ではミの♭かというとそこまでは低くない。
ミが♭ならば,有名なベートーベンの「運命」冒頭になるわけで,ハ短調だが,そこまで低くない。
はっきりミならばハ長調だが,やや翳ったハ長調(というかやや明るいハ短調),「ハ中調」くらいで鳴いている。

昨年は録音しなかったが,「ミッドー」でほぼあってたと思う。個体により音程や鳴き方も異なるのだろう。
昨年のものとの2例だけ(1例は感覚のみ)では何ともはっきりしないが,現代のピッチにほぼ合っているのは間違いなさそうだ。鳴き出しのソは驚くほど合っている。
学習して身につけるのは間違いなさそうだ。

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後注: 「音律と音階の科学」著者の小方厚氏のブログに,これに関する話題があった。 氏が集めたデータによれば,うちに来た鳥は,国内産のものでも低めのもの。昨年の鳥のミッドーが正しければ,欧米産に属することになる。

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nyankome

さすがEnriqueさん、私なら電子チューナーで調べるところですが、短い音なので難しいかも知れません。
人間の作ったピッチにあっているのは偶然でしょうけど、地域によって音程が異なるのは興味深いですね。
by nyankome (2010-07-12 19:45) 

Cecilia

郭公が来るような場所にお住まいなのですね!
うちの近くでも山のほうに行けば鶯の声は聴こえるのですが、郭公はなかなか聞けません。
郭公の学習能力(?)すごいですね。
by Cecilia (2010-07-12 20:15) 

yablinsky

カッコーといえば、マーラーの交響曲第1番ですが、次の記事は第1番にしようかなと思い立ちました。しかし、周波数解析するところがさすがEnriqueさんです。
by yablinsky (2010-07-12 20:52) 

Enrique

nyankomeさん,nice&コメントありがとうございます。
私は音程があっているのは偶然ではなくて,カッコウが学習しているとにらんでいます。いくつか集めないと断定は出来ませんが。小方氏もそのような言い方ですね。バロック時代はバロックピッチで鳴いていたはずです。地域差はやはり聞いている音の違いでしょうか。
by Enrique (2010-07-12 21:47) 

Enrique

Ceciliaさん,nice&コメントありがとうございます。
カッコウはうちの近くに良く来ますし,キジが時々庭を走りますが,そんなとんでもない山ではありません。平野の住宅地です。カラスもいっぱいいます。
そうなんです。カッコウの学習能力はすごいと思います。にわかに信じられないと思いますが,カッコウは人間の活動音を聞いて鳴くピッチを調整しています。
by Enrique (2010-07-12 21:52) 

Enrique

yablinskyさん,nice&コメントありがとうございます。
カッコウ動機というのはあちこちで使われているようですが,あまり良くは知りません。マーラーは今確認しました。確かにカッコウですが,D-Aのようです。この鳥よりもかなり高いのと4度間隔ですね。
一応周波数解析でしょうか。波の数を数えただけですが。
by Enrique (2010-07-12 22:38) 

てですこ

面白いですね。ミの音が微妙な音程なのですね。
繁殖期に長調になるとか、夕暮れ時は♭がつくとか、
状況による変化があったらさらに面白いかと(笑)
by てですこ (2010-07-13 01:20) 

Enrique

てですこさん,コメントありがとうございます。
かなり個体差があり,なかなかはっきりとしたことも言えませんが,長短に関しては,4度音程のものもいるようで,これだと長調と短調どちらでも良くて,うまく逃げています(笑)。サンプル数集められれば面白いですが,あまりやる人いないでしょうね。
by Enrique (2010-07-13 09:07) 

ながぐつ

こんにちは。
「名曲探偵アマデウス」の番組で、マーラーの第1番を紹介していたときに、このカッコウの音程が紹介されていました。ベートーヴェンの田園交響曲をはじめ、ほとんどの作曲家はカッコウを3度音程で表現しているそうです。マーラーが第1交響曲ではじめて4度音程で表現した、と紹介されていました。
by ながぐつ (2010-07-17 09:29) 

Enrique

ながぐつさん,nice&コメントありがとうございます。
なるほど,そういうことでしたか。作曲家たちの想像力をかき立てたのでしょうか。自然描写にもってこいですね。しかしどうもカッコウは人間の決めた長調にも短調にもしたくないように感じます。その点4度音程は巧妙ですね。
by Enrique (2010-07-17 09:53) 

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