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GSIのブログとAntonio de Torres [楽器音響]

たまに楽譜や小物を買っているGSI(Guitar Salon Internatinal)から,ブログを開設したという案内が来ていた。

もうすでに,4/25からスタートしていたようだ。YouTube画像が紹介されていることが多い。6/15の記事は,製作家Teodoro Perezさんのロゼット(モザイク)作りの2回目。 Perezさんは以前Mariano Tezanosさんと共同制作だったが,最近は別々だ。


ブログ初回の4/25は,ショップが扱う1890年製のAntonio de TorresをAlmer Imamovicさんが弾いている。
Antonio de Torresといえば,ギターのストラディヴァリと称賛される楽器だが,この楽器はまだ120年しか経っていない。ヴァイオリンの300年からしたら,まだ青二才だが,ギターの名誉のために言うと,これは現在普通に使われているモダン・ギター(クラシック・ギター)の元祖ということである。バロック・ギターまでさかのぼれば歴史的にはヴァイオリンよりもたぶん古い。昨今よく用いられる19世紀ギターのオリジナルは200年前後経過している。それ以前のものは復弦5コースだ。

手っ取り早く言えば,
約300年前Sanzやde Viséeらが使った複弦5コースの楽器: バロック・ギター。
約200年前SorやGiulianiらが使った単弦6コースの楽器: 今日19世紀ギターと呼ばれるもの。
約100年ちょっと前Tárregaが使った単弦6コースの楽器: これが,Antonio de Torresで,現在のクラシック・ギターはこれのコピーだ。多少流派の違いはあっても,元をたどればこれに行きつく。面白いことに,現在アコースティックギターとかエレキギターの直接のルーツはこれではなくて,色々な形があった19世紀ギターの方に行きつく。

以前にも触れたが,文字通りストラディヴァリ製のギターもあるにはあるらしいが,どうも弾ける代物ではないようだ。一般的にギターはヴァイオリンよりも寿命はやや短いようだ。原因は,楽器のサイズに比べ板厚が薄いこと,ボディへの衝撃が大きいことなどが考えられるが,少なくともちゃんとした楽器は人間の寿命よりは長いようだ。

ストラディヴァリの時代のギターは,バロックギターなので,ヴァイオリンが変わっていない300年の間,ギターには少なくとも2回の大きな変化があるわけだ。その為ギターを「完成されていない楽器」と見る向きもあるが,ピアノはじめ殆どの他の楽器もかなり変わっている。変わらないヴァイオリンが特別なのだ。もっとも,変わらないのはボディのみで,指板のカマボコ型の曲率や弓は結構変わっているようだ。

「気ままにクラシック」の「しょうへいさん」ではないが,気になるのはその1890年製Torresのお値段。お問い合わせしたところ,早速,大量の写真と共にお返事が来た。$225,000だそうである。1ドル91.28円として,2,053万8千円也。やはり並の楽器とはひとケタ違うようだ。トーレスさん(1817-1892)だから,亡くなる2年前の楽器。さすがに,モダン・ギターの租だけに,見た目は,木ペグのヘッドを除いては,私の楽器と寸分違わない(むろん私のがコピーなのだが)。しかし,サイド・バックはcypress,糸杉だ。今日のフラメンコ・ギターの材質。1.1kgの超軽量,フェザーのようだと。当然のことながら大変弾きやすいとある。
Torres7.jpg

非常に状態が良いようだ。財力のある方は如何だろうか。しかしこれ,知らない人だとただの古ぼけたギターにしか見えないと思う。
Torres11.jpg

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koten

 うーん、良いですね、読み応えあります。ギターの寿命のことですが、「イッテツ理論」(笑)だと、「フレットの位置が良ければもう少し(ないし大幅に)寿命が延びるのでは?」ということですよ。その根拠の一例としては、「下記サイトの2001年3月14日投稿の記事は参考になる」とのことです。
http://www.asahi-net.or.jp/~ia8k-ynd/bbspast/971456680753366.html
つまり、「いい音律で弾き込めば楽器の状態もよくなる。」、「いつもミーントーンにして、・・・」などです。「ギターが(和声楽器として)喜ぶようなことをしてやれ」と一徹さんが盛んに主張してます。
 ちなみに私が10数年前に買った60号くらいのスペイン製ギターは、買った当時が一番良く鳴ってました(いわゆる「箱鳴り」がしていた。)。その後だんだん箱鳴りがしなくなり鳴りが悪くなって行きました。気候のせいも有るかもしれませんが。ただその後、純正3度が2つ出来るフレッティングに改造してもらったところ、再び鳴り出したんですよね。まだ箱鳴りのレベルには到達してませんが、使用材料は最高クラスのはずなので今後が楽しみではあります。
by koten (2010-06-17 16:37) 

koten

一徹さんから補足です。
「具体的な実践方法としては、上記サイトの同日付投稿の『1,3フレットは高めに、2,4フレットは低めに調整する』という内容が極めて核心を付いている!」 と述べてます、私の横で(笑)。
by koten (2010-06-17 16:49) 

Enrique

kotenさん,nice&コメントありがとうございます。
良い音で弾けば良く鳴るようになる。とはよく言われる事です。
それが大原則だとすれば,よい響きで弾いてやればより良い響きになるということです。良い響きというのは音律に関わることになります。
論理を追って行けば当然の事でも,いきなり言うと,マニアックな意見と取られかねないのが音律の話かもしれません。
それと楽器の寿命に関しては,難しいですね。ひきつぶれるということもあるようですし。ただ,次のようなことは言えます。楽器の物理モデルは,音源とフィルターです。音源がおかしかったらフィルター(楽器のボディ)ではどうにもならないのです。音源の音の出を決めるのがチューニングとフレッティングですから,こちらをきちんとする方が,フィルター側(楽器のボディ)をどうするかというよりも本質的なんですが,通常は楽器のボディばかりにお値段がつきますね。もちろん単音の美しさはボディで決まりますが。
それとフレッティングの件は,4F,3Fのハーモニクスを弾いてみれば気がつきますね。
by Enrique (2010-06-17 17:51) 

nyankome

お持ちのギターはトーレス・コピーでしたか。
ギターは更に遡れば4コースのルネサンス・ギターというのもあります。
さて、スペイン産の上質のcypressは滅多に手に入らないようですね。
製作家はストックしているのでしょうけど。
現在ではフラメンコ・ギターもcypressではなくローズ・ウッドをつかうようですが。
kotenさんの仰っている「1,3フレットは高めに、2,4フレットは低めに調整する」はミーン・トーンの調律に近いですね。
by nyankome (2010-06-17 23:24) 

Enrique

nyankomeさん,nice&コメントありがとうございます。
ヴェラスケスの古いもので,わりと初期のトーレス・コピーですね。サントス,ハウザーIの影響もあるようです。国産の手工もありますが,余り弾いてません。フラメンコ・ギターに関しては,奏者の方がクラシコの楽器を好むのかなと思っていました。歴史に関しては,ルネサンス・ギターまでさかのぼればヴァイオリンよりも古い可能性ありということですね。
kotenさんは,「ミーントーン大好き」を立ち上げておられますが,純正律にもなみなみならぬ意欲をお持ちのようです。
by Enrique (2010-06-18 06:22) 

koten

 昨日の夜、フレットレスギターについて、「1,3フレットは高めに、2,4フレットは低めに調整」しました。まさにミーントーンです。
 今朝は、ヘンデルの組曲第2番ヘ長調のフーガを純正律で2回ほど弾いてみました。使えます!(笑)しかも凄くエネルギーもらえるし。
 長3度(例えばC-E)とそれを含む5度(C-G)が純正の場合、その5度に含まれる短3度(E-G)までもが純正になるということ、そしてこれが人間にどういう影響を及ぼすかということを、(ミーントーンにばかりとらわれていた)今までの古楽器鍵盤奏者は余り考えてなかったのじゃないでしょうかね・・ミーントーンでは純正短3度はゼロですから。
by koten (2010-06-18 07:57) 

koten

失礼、ミーントーンは、純正5度もゼロでしたね、というか、正確には、

「純正5度がゼロだからこそ、長3度が純正であっても短3度が純正にならない(すなわち5度が純正より狭い分(約5.5セント)だけ短3度も狭くなる(即ち純正-5.5セント)。但し、平均律の短三度(純正-16セント)に比べたら圧倒的に純正に近い短3度である)」

 と述べるのが大人のコメントですね(笑)。
(ミーントーンのフォローのためコメント書き直しました(汗))
by koten (2010-06-18 09:25) 

Enrique

kotenさん,nice&コメントありがとうございます。
ミーントーンは長3度が純正,短3度も平均律よりは純正に近い。ということですね。
私は試したことがないので,頭で考えているだけですが,要所要所の和音が決まればいいのではないでしょうか?メロディ的にも,ここの半音を狭くとりたい!とか言うこともありますが,その辺フレット楽器では困るわけですが。
それでも,例えばソルのハ長調の練習曲Op.35-13などで,伴奏のドソミソのミをずり下げ気味に押えるといった小細工はやりますね。①⑥弦のミも下げ気味にしておけば,少なくともローポジションでのハ長調にはしっくりくるはずですね。
by Enrique (2010-06-18 18:14) 

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