SSブログ

教会旋法を鳴らしてみる [音楽理論]

以前,各種旋法に関する記事を書いた(1),(2),(3)。また,「坂本龍一 スコラ 音楽の学校」のジャズ編第3回目(4)で,モードジャズに触れた。

旋法の詳しい解説や,音階や和音を出してくれるページはいくつか見かけるのだが,実例を示したものが案外少ない。ここでは,マチガイを恐れず,noteflightを使って面倒な話は一切カットして,旋法っぽい気分を味わってみたい。なお,旋法が再発見された印象派以降,新しい旋法が次々に考え出されたが,ここでは教会旋法のみに限定する。

そう違和感なく,旋法っぽい気分を味わえるのが,ドリア旋法。これを使っている曲を探してみる。
最も有名なものに,「グリーンスリーヴス」がある。これは色々な版があるだろうが,ここでは耳になじんだものを打ち込む。和音は中抜きで,和声的気分はないことにしている(というか特に旋法における和声はよくわからないので)。そのため飽きないようにパーカッションを入れた。

まず最初の17小節までを聞く。
あれ,前半後半の最後が違うぞ。ということになろうが,ここのドのシャープはとった。普通に流布しているメロディは,ファーミレ♯ドーシ♯ドレーだ。これは終止感を出すため後世の人が変えたものと考えてとった。

最初は,もとになったと思われるドリア旋法(レの旋法)である。おそらく原曲のもとになったと思われ,最後の終止感の無さを除いては,違和感はないと思う。次からは,同じ音の順序で一音づつずらして行く。移調ではなくモード・チェンジだ(そんなご大層なものではないが)。

次からの,フリギア,リディア,ミクソリディアはどうだろうか。それぞれ異なった風変り感がある。殆どまともに終止しない。例えばフリギアには有名な終止形があり,メロディの最後をレードレミーではなく,レードファミーにすれば一応終止するが,ここではこの辺は一切無視。いずれも,基本的に1音づつずらして行っただけ(伴奏の音高は少し変えているところがある)。 ドリアから数えて5番目にくるのが,エオリア。これは短音階の基になったものだけに,もとのドリアよりもむしろすんなり耳になじむかもしれない。その後のロクリアは最も変なもの。音を鳴らしていると,妻が小声で「キモー」と言うのを聞いた。キモイのは先刻承知の上での狼藉である。各旋法に合った旋律もあるのだろうが,音型そのままでただひたすらずらす。段々合っているのかどうかわからなくなってくる。

最後98小節目からは,音を下げて,イオニア。旋法として使われることは少ないようだが,長音階の基になっただけに地に足が着いたどっしり感があるが,それでも旋法の雰囲気。しかし,ちゃんと終止している!これが現在の長音階となった大きな原因だろう。
タグ:noteflight
nice!(7)  コメント(8) 
共通テーマ:音楽

nice! 7

コメント 8

nyankome

興味深い実験です。
Greensleevesは、地域によってメロディや歌詞の内容にいろいろなヴァージョンがありますね。
以前、旋法の講義を受けたことがあるのですが、現代の曲でも(意図的ではないにせよ)部分的に教会旋法になっているものがありますね。
by nyankome (2010-05-27 00:58) 

てですこ

面白い例示をありがとうございます。
C=テデスコやM・トローバなどの音楽に含まれる
ある種の奇妙さに旋法が潜んでいることがわかります。
by てですこ (2010-05-27 01:18) 

Enrique

nyankomeさん,nice!&コメントありがとうございます。
机上の実験なので,グリーンスリーブスのヴァージョンを調べることはしませんでしたが,一般になっているメロディでは旋法が完全に払拭され現在の和声的短音階になっているものも多いですね。終わりの#ドはそう判断しましたが,そのままでさらに始まりのシに♭をつけてしまえばまったく普通のニ短調になってしまいます。
この曲もいつからそうなったのかは調べていませんが,現代の曲ではまるまる固有の教会旋法を使っていることは少なく(むしろモードジャズはほぼドリアンらしいですが),部分的だったり,ミックスしていたりするので分りにくいですね。同じ曲が人によって,ドリアンだミクソリディアンと解釈が別れることもあるのはそのせいでしょう。
それから印象派以降は教会旋法でない人工的な旋法を使っています。
by Enrique (2010-05-27 07:16) 

Enrique

でですこさん,コメントありがとうございます。
ドリアン旋法くらいですと,長調と短調の中間くらいの気分なのですが,フリギアやロクリア(殆ど使われないらしい)は特に変で,耳がおかしくなってきて,合っているのかどうか分らなくなります。
近現代の作曲家は旋法を使っていることが多いですね。テデスコは確かにいまやっているボッケリーニ賛ですが,完全に旋法で,分析すれば音を覚えやすいかなと思っていますが,手についていません(弾くのが精一杯)。4楽章の終わりはフリギア終止になっています。
スペインの音楽もミの旋法,教会旋法で言えばフリギア旋法的になっているようです。
by Enrique (2010-05-27 07:30) 

さとふみ

多くの旋法では終止しない方をよしとしてたのかとも..
by さとふみ (2010-05-27 09:04) 

Cecilia

楽しませていただきました。
パーカッションもなかなか良いです。
こういう旋法をしっかり覚えておいて即興に使えたら楽しいだろうと思います。

by Cecilia (2010-05-27 09:16) 

Enrique

さとふみさん,nice!&コメントありがとうございます。
歴史的な点,よく調べてないのですが,終止に関しては,そういうことなのかもしれないですね。終止がポピュラーになり,和声進行が生まれてきたと。
by Enrique (2010-05-27 09:47) 

Enrique

Ceciliaさん,nice!&コメントありがとうございます。
鍵盤弾ける方でしたら,鍵盤をひとつづつずらして行くだけですから,すぐできる技なのですが,段々きもち悪くなってきます。そのままの旋法なので,調号が一つもついていません。基音を変えずに旋法を変えると,フラットやシャープがついていくことになります。和音を適切に入れられればもう少し聞きやすくなると思います。
by Enrique (2010-05-27 09:56) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。