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ブルグミュラーとドビュッシーのアラベスク [曲目]

ブルグミュラーの25の練習曲の第2曲目「アラベスク」は,子供の好きな曲としてつとに有名。CeciliaさんYablinskyさんによく取り上げられていた。
「アラベスク」とつく曲は色々あるが,ドビュッシーの2曲が有名。
ビュッシーのアラベスク第1番はブルグミュラーのものとは曲の雰囲気が全く違う。
むしろ第2番のほうが,ブルグミュラーのものにすこし雰囲気が近い。シューマンのアラベスクはいわば元祖的(1839)で独自のロマンティシズムを湛えている。

本記事の主題は,ドビュッシーのアラベスク第1番がブルグミュラーの第21曲「天使の声」と似ているというもの。
対応関係は以下の通り。

ブルグミュラー(25の練習曲)  ドビュッシー
第21曲 天使の声(ト長調)   アラベスク第1番(嬰ハ短調) 
第2曲  アラベスク(イ短調)   アラベスク第2番(ト長調)

ドビュッシーの2曲のアラベスクは,ブルグミュラーの25の練習曲を参考にしたのではないかというのが,私の説。
ドビュッシーがピアノ曲を作曲しだしたのは意外と遅く,このアラベスクが処女作で1888年(25・6歳)の作らしい。ブルグミュラーの25の練習曲Op.100は1851年の作で,フランスで活躍した人だから,ドビュッシーは弾いただろう。2曲のアラベスクはドビュッシーのオリジナリティに貫かれてはいるが,子供の頃弾いたブルグミュラーの練習曲が頭の片隅にあったとしても不思議ではないだろう。
ブルグミュラー・天使の声
ドビュッシー・アラベスクI
類似点と相違点は色々だが,まずぱっと見の譜づらは良く似ていると思う。音を出す前の譜づらだ。3連譜の4拍子。ポピュラーなら,ロッカ・バラード?
違いは,ブルグミュラー先生が正しいト長調を採用しておられるのに対して,ドビュッシーさん嬰ハ短調,というよりもC#エオリアンで独特な雰囲気を醸し出している。しかも,ブルグ先生はト長調のアルペジオを繰り返すことで,調性を確立した上で次に進む。それに対しドビさん,旋法を使いつつつぎつぎと色合いを変えていく。
クラシカルな和声・響きとはすこし違ってはいるが,この音型は似ている。まあ,ドビさんにしてみれば,ブルグ先生からいただいたこの音型はイントロに過ぎないと見るべきかもしれない。テーマははらはらと降りて来る音型のほう。しかも伴奏とリズムがずれている旋律は夢想的な雰囲気を醸しだして見事。しかし,この手法はすでにショパンが幻想即興曲で使っているのは周知の事実。
しかも!このはらはら降りてくる音型もブルグ先生はシメに使っておられるではないか。ドビさんこのはらはら音型パターンを少しアレンジして自身のアラベスクIのテーマに用いたのかも。 ということで,ドビュッシーのアラベスクは名曲だし,オリジナリティーは高いが,実はブルグ先生の練習曲がお手本になっているかも?! こちらはYouTube画像で比較。

子供の演奏が圧倒的に多く,大人が弾いているものを探すのが大変だ。

こちらも子供の演奏が結構多いが,これは大人の演奏。

坂本龍一のエナジーフローの中間部がギロックのサラバンドと似ているという記事を書いたが,今回はそのシリーズ第2弾?
なお,ギターファンにはブルグミュラーなど知らんぞ,と言われそうなので,以下に楽譜をあげておく。アラベスクとアベマリアが編曲で載っている。ピアノのほうが楽だが,やはりギターの音色で楽しみたい向きにはおすすめかもしれない。

内容:
微笑みをあなたに(原 公一郎),ボレロ(ラヴェル),オクラホマ・ミキサー(アメリカ民謡),鳥の歌,聖母の御子(カタルーニャ民謡),組曲「惑星」より木星(ホルスト),クシコスの郵便馬車(ネッケ),家路,スラブ舞曲第10番(ドヴォルザーク),セレナード(グノー),アラベスク,アヴェ・マリア(ブルクミュラー),シシリアーナ・イ短調(カルカッシ),チェンバロ協奏曲第5番BWV1056よりラルゴ(バッハ),アンダンテ(ヴィヴァルディ),サルタレッロ,スパニョレッタ(作者不詳),グリーンスリーヴス(イギリス民謡),バレット(プレトリウス),涙のパヴァーヌ(ダウランド),カノン(パッヘルベル)*,エストレリータ(ポンセ)*,キューバの子守歌(ブローウェル)*[*は二重奏]。
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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 現代ギター社
  • 発売日: 2003/08/21
  • メディア: 楽譜

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コメント 6

Cecilia

なるほど~、似ていますね!
アラベスクと言われてまず第一に思い浮かべるのはブルグミュラーのもの。
好きなアラベスクはやはりドビュッシーです。
シューマンのアラベスクは題名しか知りません。

ドビュッシーのアラベスク、1番2番を以前公の場で演奏しましたが、ぼろぼろで思い出したくありません。
でも傷が癒えたのでまたいつか挑戦したいです。
by Cecilia (2010-05-01 07:36) 

Enrique

Ceciliaさん,nice!&コメントありがとうございます。
印象が強烈なのはブルグミュラーのアラベスクですが,ドビュッシーのアラベスク2曲はいずれもおしゃれですね。取り上げた2曲の冒頭の譜づらは似ていても,難易度は大幅な差があります。ドビュッシーのアラベスクを公開演奏されたということは素晴らしいですね。次回は必ずうまく行くと思います。
シューマンのものも発表会などでよく弾かれた曲ですが,このごろ流行らないでしょうか(生誕200年なんですけどね)。
by Enrique (2010-05-01 08:53) 

nyankome

一時ドビュッシーにはまっていたことがあって、この曲は大好きな曲のひとつでした。
音型はそっくりですが、和声が異なりますね。
ドビュッシーならではの夢を見るような音楽はやはり独特です。
by nyankome (2010-05-01 14:00) 

Enrique

nyankomeさん,nice!&コメントありがとうございます。
ブルグミュラーは古典的な和声の域を出ていませんが,ドビュッシーは得意の旋法を使った彼独自の音楽。違いは一目瞭然ではありますが,ここは大先輩のブルグミュラーに花を持たせてやって下さい。
by Enrique (2010-05-01 16:12) 

yablinsky

私は素人なので、勝手な想像ですが、アラベスクはイスラムの幾何学的模様のことなので、楽譜がイスラム模様に見えるものをアラベスクというのではないかと想像してみました。もしそうならアラベスクという曲はまねではなく、上がったり、下がったり、譜面が似てしまうのかも知れません。
by yablinsky (2010-05-02 11:00) 

Enrique

yablinskyさん,nice!&コメントありがとうございます。
冗談的な記事に,まじめに考えていただいて恐縮です。新説!を拝聴しました。ご指摘のとおりアラビア模様をイメージした曲だと思いますが,譜ヅラは必ずしも関係ないのでは?!と思います。シューマン,ブルグミュラー,そしてドビュッシーの2つのアラベスクはいわば楽式名として共通でも,いずれも異なった個性のものです。譜面も聞いた感じも異なっていますが,たまたまドビュッシーの第1番がブルグミュラーの「天使の声」と最初の音型が似ているのが面白くて記事にしました。細かい音形はアラビア模様でしょうし,最初の音型はイスラム建築のアーチのイメージがあります。
by Enrique (2010-05-02 12:18) 

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