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旋法について(3) [音楽理論]

前回にひきつづき,今回は各旋法の特徴を具体的に見てみたい。

・イオニアン(ドの旋法)
現在の長音階の元になったもので,特に旋法とは言わないが,あえて言うならば,ハ長調ならCイオニアン,ニ長調はDイオニアンとかいったことになる。そのような,近代的な和声機能を使わない,旋法としての使用法もあることはあるようだ。(後注:この旋法を使った最も有名な例にラヴェルのボレロがある。)

・ドリアン(レの旋法)
レ・ミファ・ソ・ラ・シド・レの並びなので,第3音と第7音がフラットしており,短調(エオリアン)に近いが,第6音はフラットしないので,短調よりは少し明るいのだろうか。長調と短調のあいのこのような,中性感,透明感,開放感のようなものがある。この旋法になる楽曲には,「ノルウェーの森」とか,「スカボロフェア」,「グリーンスリーブス」,「恋はみずいろ」などがある(ようだ)。

・フリジアン(ミの旋法)
ミファ・ソ・ラ・シド・レ・ミの並びなので,第2,3,6,7音がフラットしており,普通の短調以上に暗そうだ。ベースがファー・ミー(II-I)という終わり方,フリジア(フリギア)終止でもその名を知られている。

・リディアン(ファの旋法)
ファ・ソ・ラ・シド・レ・ミファの並びなので,主音をCに移調すると,♯1個。第4音がシャープしており,バルトークの民俗風のフレーズなどに出てくる。

・ミクソリディアン(ソの旋法)
ソ・ラ・シド・レ・ミファ・ソの並びなので,第7音がフラットしており,長音階(イオニアン)と比べて,ややかげっているように感じるのだが,長陽旋法などともいうようだ。主音Cに移調すると,♭1個。1音が訛っているだけなのだが,それにより他の旋法同様導音機能が無い。ドリアンと並んでよく使われる旋法のようだ。例えばかつての西部劇の音楽などに良く用いられたようだ。

・エオリアン(ラの旋法)
現在の短音階の元になっているもので,イオニアンと同様,特に旋法とは言わないが,イ短調ならAエオリアンということになる。主音をドに持ってくると,フラット三つで,これはハ短調でCエオリアン。音階の話で述べたように,その音階の成り立ちはイオニアンほどの単純性・安定性はなく,現在の短音階はこのエオリアン(自然短音階)よりは,旋律的や和声的短音階が使い分けられているので,これも旋法の仲間とみなされることもあるようだ。曲例はもちろん,アランフェス第2楽章のBエオリアン。

・ロクリアン(シの旋法)
シド・レ・ミファ・ソ・ラ・シの並びなので,第2,3,5,6,7音がフラットしている。あまり使われないようだ。普通の短調以上に暗い?

以上,7種類の教会旋法を概観した。長調とも短調ともつかぬ独特な音楽は,たいがい上のいずれかの旋法を用いている。なお国により独特な旋法も生まれた。日本の陽旋法・陰旋法,田舎節・都節,沖縄の旋法,アラブ,スペインなど。最も普遍的に現れる音階に5音音階(ペンタトニック)があり,中国創始のようだ。現在でもヨナぬき音階などと言われて,演歌などでも用いられる。移動ド的に言えば,黒鍵だけで弾く音階にあたる。

近現代では,古典的な和声進行による音楽が飽きられて,和声の新しい試みや音階(新しい旋法)も開発された。一例を挙げれば,ドビッシーが得意とした6音全音音階がある。シェーンベルクらが創始した12音音階では調性は完全に崩壊したはずだった。。。音楽史で聞く話である。(おわり)

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