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旋法について(2) [音楽理論]

前回からのつづき。

7種類の旋法があるので,かりに何も調号がついていない楽譜でも,7種類の旋法の可能性があるわけだ。ではどうやって見分けるのだろうか?何も調号がついていなければハ長調ではないのか?これは始めや終わりの音や和音で見分ける。旋法を使っていない普通の楽曲でも,調号なしでハ長調(Cイオニアン)とイ短調(Aエオリアン)の可能性があったわけだ。もちろん,見わけかたは,始まりや終わりの和音がドミソになっているか,ラドミになっているかの違いがある。旋法音楽ではこれが7種類の可能性があるということだ。

・さらに,注意が必要なのは,各旋法は移動ド式の使い方がなされることだ。その際,主音をドに揃えると,対応する長音階につく調号を裏返した状態になっている事に気づく。例えば,ドリアンに対応したレが主音の長音階はニ長調であり,レミファ#ソラシド#レとファとドに#が付く。しかし,レの旋法ドリアンでは何も付かず,レミファソラシドレ。これを移動ド式に主音レをドに移調すると,ドレミ♭ファソラシ♭ドとなって,ニ長調のシャープと同じ数だけフラットが付くことになる。ミの旋法フリジアンならば,ミが主音のホ長調(シャープ4つ)に対応して,主音ミをドに持ってくると,フラット4つである。以下,リディアンはヘ長調の裏なのでシャープ1つ,ミクソリディアンはフラット1つ,エオリアンはフラット3つ(これはハ短調に相当),ロクリアンはフラット5つといった具合だ。一言で言えば,現在では旋法は絶対音高ではなくて,相対音高で用いられると言うことである。

・その上さらに注意が必要なのは,最初につく調号と各旋法との対応である。これがあまりあてにならない。現在の楽典では,例えば,シャープが一つならばト長調かホ短調。最初か最後の音を見れば,いずれか調がぱっと分る。コードとも一致する。いわば有理単位系のようなもので,何からどうたどっても,矛盾なく出来ている。しかし,現在の長短の調性を確立したはずのバッハでさえ,現在の楽典では標準的ではない調号の記譜が見られる(例えば,現代ギター社,名曲演奏の手引きpart III 「バッハリュート作品のすべて」の自筆ファクシミリ参照)。最初の調号の付け方は,旋律でいくのか,和音で行くのか,現在の記譜法にあわせた最大公約数的なもの(臨時記号がなるべく少なくなる?)を使うのではないだろうか。たぶん,絶対的なものではない。各旋法と,現在の各調の長短との記譜法とのはっきりとした対応があるのかどうか良く知らない。だから,現在の楽典をある程度まじめに理解していても,旋法の音楽には当てはまらないことが多い。旋法の取り違え(いずれともいえるというのもあるのかも知れないが)もこの辺から起こるのではないだろうか?

・7種類の旋法(モード)には,性格の違いがある。現在の長調と短調になっているイオニアンとエオリアンは明るいものと暗いものの代表だろうが,他のものはどのような性格を持っているのだろうか?(つづく)
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