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旋法について(1) [音楽理論]

夏に「『音階と音律の話』を読んで」を書いた。そこには旋法が簡単に紹介されていたのだが,あまり触れずにきた。コード進行理論と共に,何となく苦手意識があり避けてきたのだ。しかし,旋法は楽曲の中で独特な効果をあげる。例えば,本ブログの開始直後に練習記をのせたアランフェスの有名な第2楽章は,ロ短調の自然短音階,旋法名で言えばBエオリアンが使われている。エオリアンは現在の短調の元になった旋法なので,さほどこってりとした旋法的雰囲気は無いが,現在の短音階は旋律的や和声的が広く使われているため,少し旋法の香りがする。独特な雰囲気の曲なり,スケールに出会うと,あっこれは旋法だな,とは感じるが,果たしで何旋法やらさっぱりわからない。わからなくても,曲を楽しむ分には問題ないのだが,そこはやはり楽曲の構成を知った方が,暗譜を容易確実にする近道だと言った手前,避けて通れない。ここでは,自分の理解した部分のみを何回かに別けて簡約に記録しておくことにする。

・ドレミの普通の音階
元々の音階は自然発生的に出てきたもの。古くはピタゴラス,比較的新しいのは12平均律。現在はこれが広く使われれているが,転調の自由さや鍵盤楽器の作りやすさなど,メリットが多いからだ。これは必ずしも万能ではないが,以後の議論の分かりやすさからピアノの鍵盤上で旋法を考えてみることにする。

・ドを基準に,白鍵のみで順番に音を弾いていく。ドレミファソラシドだ。知らぬ人はいない。半音が入らないからやさしいと皆が言う。これは,標準的な楽典ではハ調長音階という。第3音と第4音すなわちミとファ,第7音と第8音すなわちシとドの間が半音でそれ以外は全音であることに注意する(もともとそれらの間には音がない)。

・次にレを基準に,白鍵のみで順番に音を弾いてみる。何か変な感じがする。そこで,レを新たな基音として同じ音間隔になるようにするためには,ファと,ドにシャープが付けないと同じような音間隔の音階にならない。(ギターで開放弦を使わずに音階を弾く際,ハ長調の音階を弾いた運指を変えないでそのまま2フレットずらして弾くとニ長調の音階となるので,シャープの場所をあまり気にせずに弾く事が出来るわけだ。)しかし,これでは,普通の音階になってしまい,旋法にならない。最初の変な感じがした音の並びが,旋法(モード)なのである。このレを第1音としたものを,ドリア旋法(ドリアン)と言う。

・そもそも,ドを第1音としたものからして,イオニア旋法(イオニアン)と言うのだ。これはハ長調音階と呼ぶのではなかったかと異論が聞こえそうだが,もともと旋法は現在の音階のご先祖であり,長音階というのは,このイオニアンを拝借したのである。

・以下同様に,を第1音としたものを,フリジア(フリギア)旋法(フリジアン)ファを第1音としたものを,リディア旋法(リディアン)を第1音としたものを,ミクソリディア旋法(ミクソリディアン)を第1音としたものを,エオリア旋法(エオリアン)を第1音としたものを,ロクリア旋法(ロクリアン)と呼ぶ。なお,ドの旋法イオニアンが現在の長音階の元祖と言ったが,ラの旋法エオリアンは現在の(自然)短音階の元祖だ。

・歴史的にはドリアン,フリジアン,リディアン,ミクソリディアンが古く,16世紀にイオニアンとエオリアンが追加されたようだ。その意味でも現在の長音階・短音階は新しい旋法と言っても良いのかもしれない。ロクリアンは余り使われない人工的なモードのようだ。これら7つを教会旋法(チャーチ・モード)という。

・良く5音音階(ペンタトニック)が取り上げられるが,これも旋法の一種ということなのだろう。強いて言えば,イオニアンとリディアンとミクソリディアンの3旋法の共通部分の音のみを持つ。世界中に現れ,これらの旋法の共通の祖先とでも言えるのかもしれない。

・なお,第何旋法~,正格・変格等複雑な名称,さらには,教会旋法はるか以前のギリシャ旋法があり,その名前には教会旋法と同じものが4つあるが,何れも異なった旋法を指しており,この辺もわかりにくさに輪をかけている。ここは実践性を重視して省略する。また,教会旋法に限っても似たような名前で覚えにくいので,ソの旋法とか,ファの旋法とか言う場合もありこれは名前を覚えなくても良くて便利だ。ちなみにこのように言えば,現在の長音階はドの旋法,短音階はラの旋法ということができる。旋法名を覚えたい人は,各旋法の頭の文字をとって,「イ・ド・フ・リ・ミ・エ・ロ;井戸振り見えろ」とやるのだそうだ。(つづく)

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