実践的楽式論(4) [音楽理論]
暗譜のための必要最小限の楽式論をかじっている。今回はその4回目。
石桁真礼生の「楽式論」を用いている。今回は第2編・基礎楽式のうち,第4章ロンド形式を概観する。
第4章 ロンド形式
旋回形式と呼ばれる。一つの主要な旋律が他の旋律をはさみながら,何度も現れる形式である。古くからあり,クープランやラモーのものは以下のように表される。
A・B・A・C・A・D・A・・・・・・・・・・・
現代では若干工夫され,構成的な楽式となっている。バッハのホ長調の大ロンドは次の構造になっている。
A・B・A・C・B・A
現代のロンドとしては,
単純ロンド: A・B・A・C・A
複雑ロンド: A・B・A・C・A・B・A
単純ロンドは複合3部形式にC・Aの二つの楽節群が添加されたもの,複雑ロンドはさらにB・Aが添加されたものと考えられる。
さらに,複雑ロンドの前半のA・B・AをまとめてA,CをB,後半のA・B・AもまとめてAと考えれば,複合3部形式と似かよる。しかし,前半・後半部分だけで,複合3部形式を形成しており,構造上の骨格が大がかりなものとなるところが異なる他,経過句の使用や調の選択にも違いが現れる。また「楽想」の相違も,複合3部形式との相違として指摘される。この形式の楽曲にも,その規模始め様ざまなヴァリエーションがある。
(1)各部分が単一楽節からなるもの
譜例107は,ディアベリのソナチネの終楽章。
A・B A・C・A・B A・Coda
となっている。 は経過句を示す。これは,長大な不協和のようなもので,これが解決されるよう主題に連結される。
(2)各部分が楽節群からなるもの
例えば,ベートーベンのパセティックソナタの第3(終)楽章は,
A B(1・2・3) A|C(1・2) A B A Coda
と,完全なロンド形式となっているので,むしろ公式的あてはめだけでなく,相互の関連・対比などを考察する必要がある。
(3)縮小されたもの
縮小の仕方も色々あるが,本書では単純ロンドもこの分類と考える。
(4)拡大されたもの
極限まで拡大され,原形をとどめないものもあるが,
A・B・A・C・A・D・A・B・A
のようなものが代表的。モーツァルトのピアノソナタNo.17,K.281の終楽章などにその例を見る。
(5)自由に変形されたもの
例えば,ウェーバーの「舞踏への勧誘」は以下のような構造になっている。
序・A(1・2)・B(1・2・1)・A(1)・C(1・2・1)・D(1・2)・A(2・1・2)・B(1・展)Coda,終末句
なお,このように自由変形の度が深まれば深まるほど,形式がもつ変化と統一をより敏感強力に感じとらなければならない。
以上,ロンド形式は,組形式としてのソナタ,室内楽や交響曲,協奏曲の終楽章に用いられることが多い形式である。
ピアノを学習した人ならば,ソナチネアルバムの終楽章の殆どが,この形式であることに気づく。主旋律が何度も現れるため,感覚的にもわかりやすい形式だが,次章で述べるソナタ形式の影響を受け,変化と統一のバランスの妙を担う,重要な楽式の一つとなっている。(つづく)
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