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実践的楽式論(3) [音楽理論]

暗譜のための楽式論をかじっている。今回はその3回目。
石桁真礼生の「楽式論」を用いている。第2編・基礎楽式のうち,変奏形式と複合3部形式を概観する。
このシリーズは,自分の気持ち的に実践的と題したが,まずは基礎事項を続ける。一通り形式を見終わった後で,実際の曲の分析に入りたい。
この「楽式論」首っきりでパソコンに向かっていると,妻から,「私の本を勝手に見ないで」とのお達し。しかしこれは妻のものではなく,れっきとした私の本。同じものを持っていることになるが,そのくらいポピュラーな名著のようである。前にもグールドのゴールドベルク変奏曲のCDやら,音楽の友に昭和50年代連載で付録でついた作品小事典やら,同じものを持っていたことがあった。

第2章 変奏形式
一つの主題(1部・2部・3部形式)が種々変形され,しかもその一つ一つが秩序を保つように配列された楽曲。
通常自由な変奏が形態をとるものが多いが,ここでは厳格変奏の方法を次に示す。
(1)伴奏部の変形
(2)主題旋律のリズムの変化
(3)分散和音などを旋律に加味
(4)旋律を経過音その他で装飾

譜例88,89はモーツァルトのピアノソナタ第2楽章冒頭の主題と変形した反復で,厳格変奏の例。
譜例88-89.JPG
譜例90のベートーベンのシンフォニー第5番第2楽章の主題と反復時の変奏にも(2),(3),(4)の手法が巧妙に生かされている。この様に変奏曲でない形式に厳格変奏はよく使われ,かえって変奏曲は自由変奏が多い。
譜例90.JPG

第3章 複合3部形式
三つの部分からなると言う意味では,相似形だが,その編合単位が大楽節でなく,第1章の形式の楽句(楽節群)が三つ編合されたもの。すなわち,「主楽節群」・「中間楽節群」・「主楽節群」の構造を持つ。ただし,楽節群が1部形式とすれば,単純3部形式とみなされるのが普通。構造を示せば以下の様になる。
                 A        B        A
              (a  b)   (a b)   (a  b) 
あるいは   (a b a) (a b a) (a b a)

ただし,ここではA・Bが楽節群を表し,a・bが大楽節を表している。第1章での形式の表し方のくくりが一段上がっていることに注意。

したがって,分類としては,
(1)2部形式の楽節群よりなるもの
(2)3部形式の楽節群よりなるもの
(3)応用・変形されたもの
がある。ただし,三つの楽節群より構成されれば良いので,必ずしも(1)(2)それぞれのように固定したものではないが,(1)の例として,譜例93をあげる。
楽譜93.jpg
(2)の例としてハイドンの軍隊シンフォニー第3楽章Moderatoの部分がある。この曲では,A部分が50小節(a:16,b:26,a:8),B部分(トリオ)が24小節(a:16,b:26,a:8)が,A(同前)で成り立っている。このような整然とした構造のものの他に,(3)に分類される構造の変化が与えられたものが多い。

B部分の中間楽節群はトリオと呼ばれる。これは,2声部の主題に対し,この部分が3声部で作られた古くからのなごり。近世以降では逆に薄い声部で作られるのが普通。

音楽の形式はほとんどが3部分のA・B・Aから成っている。以降のロンド,ソナタ,フーガ等の形式でも大枠この原則から外れない。したがってこの形式は非常に重要なものである。(つづく)

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