スピーカの話(1) [電気音響]
マイクロフォンと同様,スピーカも見たとおりアコースティック機器で,音の出口なので当然音質には重要な働きをする。
原理的には各種あるようだが,電磁力を用いたダイナミック型が依然主流である。コンデンサ型もマイクロフォンと同様,高音質だが,マイク以上に取り扱いが難しく高価で一般的ではないようである。ただし,小型のスピーカであるヘッドホンは別で,高級機種にコンデンサ型がある。またダイナミック型とほぼ原理は同じだがコイルでなく鉄片が動くタイプの,マグネチックスピーカと呼ばれる音は小さいが殆どパワーを食わない高インピーダンスのものが大昔あった。これを使って電源なしで夜中中ラジオを聴いていた思い出がある。中学生くらいだったと思うが,当時すでに骨董級のラジオから取り外したと思う。これは高音質時代にはもちろん全く使い物にはならず,現在これは骨董屋さんにも無いだろう。
現パイオニアが福音電機製作所として,このダイナミックスピーカの特許を基に戦前スタートしたことを考えると,変化の激しいこの業界にあって,この技術の息の長さが伺える。いわば楽器的アコースティック技術である。ついでながら,電機分野でもっと息の長い技術として磁気記録がある。これはデンマークのポールセンが19世紀末のパリ万博に出展したものが初出と言われるから,現在のハードディスク装置の元祖は足掛け3世紀目,優に110年を越す長寿技術である。ちなみに戦後ソニーが,東京通信工業としてテープレコーダの開発で,一躍その名声を高めたのも,関係者ならずとも有名なところ。
脱線しそうになった。スピーカは最終的に電気信号から音を作り出す装置であり,振動を発生させる点で楽器と共通性がある。クラシックギターもそうだし,ヴァイオリンに至っては300年も前のものより良いものが作れない。如何に「音」の扱いが難しいかという事を物語っている。
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