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頭で聞くか心で聞くか [雑感]

「この演奏は正統派の演奏」だから良いといったような刷り込みが,かつてのクラシック音楽にはあった。本当に良いと思えるかどうかは別として,超一流だから「よいはずだ」と有難く思って聞くといった傾向があったと思う。今でも地方では普段あまりクラシックを聞かない人たちが,たまに超一流オケが来るからと何万円もはたいて聴きに行く。日本では西洋音楽が「教養」と結びついて入ってきたこともあるだろう。

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変なたとえだが,アメリカ人が豆腐を食べるようなものである。Tofuは杏仁豆腐と区別つかないのか甘くして食べたりする。多分,多くのアメリカ人は頭で食べていたのではないかと思う。ヘルシーで,先進的だと。滞米中会った人から「豆腐のおいしさが分からない」という意見を聞いたので,「豆腐はそれそのものはあまり味がなく,しょうゆ・しょうが・ねぎ・鰹節・ゴマ・レッドペッパー等々スパイスとのハーモニーで食べるのだ」と説明したが,良く理解されたかどうかあやしい。一時期すごいブームだった(今は定着?)が,本当はおいしくないというのが,多くのアメリカ人にしたら正直なところだったと思う。これなど,いわば「頭で」食べているのである。

カニかまぼこ冷奴 / Kanikamaboko Cold Tofu by yomi955 with CC License Attribution

Teriyakiはアメリカ人の好きなものの一つらしいが,当地のものは酸っぱ甘いだけで,元来のうまみとコクは全然無い。しょうゆはほぼ共通だが,日本酒やみりんでなく,白ワインと砂糖を使うからだろう。味の好み,スタイル,文字通りテイストを伴うので,音楽とも共通するものがあるかもしれない。白いご飯などは,絶対に味は分からないだろう。日本食が好きという人でも,しょうゆを掛けて食べる。刺身の説明は生魚,もしくは熱を加えない調理は無いので未調理魚としか言えない。

寿司に関して言えば,ご飯に酸っぱ甘い味がついているので,本当においしいと思って食べているのだろう。8年前でも日本食店のみならず,アジア系店でも置いてあった。当初は高級食だったのだろうが,一昨年訪れたフロリダ・タンパのスーパーにパックで売っていたが,これは安くてうまかった。場所によっては回転寿司まで登場しているようだ。滞米中,少し生活が落ち着いてきた2・3ヶ月目ごろ,南部の田舎町唯一の日本食店で寿司を食したが,これが3度くらい冷凍・解凍を繰り返したようなネタ,シャリはかろうじてOKだったが,何かのソースとでも勘違いしているのか濃厚で一口もすすれない味噌汁。日本食に飢えていた時期といえつらいものがあった。そのころ,寿司はアトランタに限ると言う情報を聞き出し,休日,意を決し,州をまたいで訪れた。何でも,NYやLAにも勝る全米随一だと聞いた。時速70マイル以上で飛ばして,往きに5時間,帰りに3時間程かかった(往き帰りの差は時差)。市の一角に寿司店の密集地がある。これは良かった。日本のものにほぼ遜色の無いものだった。しかし店によってはぼられることもあるとの事だった。こちらの方も,日本のすし屋のように本格派だった。

それに例えたわけだが,食べ物の話が長くなってしまった。心から良いと思える音楽か,流行っているからか,人気の人の演奏だからか,色々あるだろう。ギター・ファンは,他楽器からの編曲作品などでも「ギターだから聞く」という傾向もあるが,これなども頭(先入観)で聞いている一例だろう。ふとどこかで流れていた一節に心惹かれる。といったきっかけもあろうが,曲を聞き始めたり,演奏する人ならば演奏曲を決めたりするきっかけには,この頭で聞くという傾向も否定できまい。最初は頭で次第に心で,と言うこともあろうし,逆もあるだろう。


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