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フレッティングと音律について [音楽理論]

アグアドだったか銘器の製作家が,結び目のついたひもを手がかりにフレットを刻んでいた,と言う話も聞く。平均律で刻めば簡単なわけだが,平均律で精密に刻んだから必ずしも良いというものでもないところが難しさ。案外勘のほうが良いこともあるのかもしれない。

4137813.pngオクターブが合わないなどと言うフレット音痴は,音律とは問題外なので,ここでは触れないが,音律の原理的な話と,フレッティング誤差,弦の不均一や押さえ方といった実際面のずれ等をごっちゃにしてはいけない。ギターの場合,弦間は純正に合わせることが可能だが,フレット側は無理。もしやるとすれば,弦毎にぎざぎざなフレットとなり,しかも調によりパターンを変更しないといけない。過去にそのような楽器も作られたようだ。面白いところでは,種々の音律の指板を取り替えられる楽器が米国特許に現れている(Drawing from US Patent 4137813)。

前にも書いたように現在用いられる12平均律は,すべての調に誤差を拡散した究極の妥協案。ギターと相性の良いフルートなどでも,きっかり平均律では面白くないらしい(吹き方で微調整はしているが)。現在,ピリオド楽器が広く興味を持たれている。その響きを再現するためには,楽器の構造や音質のみならず,当時の音律を用いたフレッティングを試行してみるのも直接的である。

音律を議論する際,ずれを表すのに1オクターブを(平均律的に)1200分割した,セントと言う単位を使うのが一般的(平均律の半音が100セント)。2倍(オクターブ)が1200セントだから,比率をLog2して1200倍すれば求められる。「チューニングの作法と原理」で述べたホ短調チューニングの平均律からのずれでセントで再記しておく。但し,これは押さえる途端に狂うし,他の和音では平均律チューニングよりも悪い。弾く調に合わせるという一例をあげたもので,より良いチューニングはこれと平均律チューニングとの中間にあるはずだ。

なお,この合わせ方は,基準音から全てハーモニクスで合わせることに対応している。1弦7Fと2弦5F,2弦の5Fと3弦の4Fなどである。厳密に言えば,平均率フレットではフレット直上でないはずだが,うまく出たハーモニックスは正確に倍音となっているとする(7F:3倍音,5F:4倍音,4F:5倍音)。ただし,3弦は太く,ハーモニクスが正確な倍音より少し高く出る(これはピアノの調律曲線の理由と同じ)ため,開放弦の音程は+17.6セントまでは上がらないだろう。

 ホ短調の響き重視(平均率との差:セント)

  • 1弦: 330.000Hz(+1.96)
  • 2弦: 247.500Hz(+3.91)
  • 3弦: 198.000Hz(+17.60)
  • 4弦: 146.667Hz(-1.96)
  • 5弦: 110.000Hz(0)
  • 6弦: 82.500Hz(+1.96)

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