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クラシックギターとフォークギター(アコースティックギター)はどう違うの? [楽器音響]

本ブログは,クラシックギターをある程度以上やっている人を想定しているから,この手のタイトルはありえない訳だが,一般には想像以上にこの疑問は多いようで,ネット検索するとよく出くわす。

初心者には分かりにくいだろうから,これを疑問に感じて調べようと思ってくれるのは良いこと。しかし,「ラ・フォル・ジュルネ」のポスターのデザイナーさんらのように,調べたのかあやしい?方々もいるので,このことは強調しなければならない。この件に関しては,本来しかるべき立場の人たちが正式に抗議しないといけない。無論デザイナーさんには表現の自由があるわけだが,誤解を招く表現で,クラシックギター音楽の表現への悪影響はどうするのか?クラシックギター音楽関係者で,不愉快,当惑を感じるのは当ブロガーだけだろうか?はっきりと,こういう間違いを正しておかないと,ギター音楽は間違った理解になってしまう。東京国際フォーラムが出している,件の表紙のパンフレットの中を見てみると,エレキギターを弾いているバッハのイラストもある。どうもこのデザイナーさん,「ギター」とはフォークギターかエレキギターだと思っているようだ。関係各位に以下のような通告をしたい。

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2009年「ラ・フォル・ジュルネ音楽祭」ポスターのデザイナーならびに責任者,関係者 各位

2009年の「ラ・フォル・ジュルネ音楽祭」で弾かれた,バッハ演奏の楽器はすべてクラシックギターである。このことを理解してかせずか,ポスターやパンフレットのイラストに,全く分野の異なるフォークギターおよびエレキギターでバッハの音楽を演奏するかのような誤解を与える表現を行った意図に対し,見解を求める。もとより,表現の自由は保証されており,貴殿らの表現行為に対しとやかく言う権利はない。しかしながら,今回参加された多くの聴衆やポスター等を閲覧した一般に対し誤解を与え,クラシックギター音楽の健全な普及・発展に障害を及ぼさ無ないとは言い切れない。またなによりも,出演者の音楽ジャンルを無視した非礼なものであり,クラシックギター界および他の音楽関係者に対しても当惑を与えるものである。

一クラシックギター愛好者

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仕事の分業は必要だろうが,やる音楽の内容を理解しないで,自己のイメージの中だけで創作するのは仕事のやり方としてはなはだ問題である。さらに危惧するのは,デザイナーさんだけでなく,これにかかわった関係者が何も気づいていないかのように,これを通してしまっていることである。

クラシックギター界も,多勢に無勢,何を言っても,狭い分野の意見ととられると,声をひそめてはならない。08年の現代ギター誌2月号(No.522)で濱田滋郎さんがピアニスト門光子さんとの対談で,かつて一般音楽評論家の中にも,「ギターは分からない」と言うのを平気で言う人がいた,と批判されていた。そういう人は,評論家をやめなさいと,ギターが分からなければ音楽が分かるわけがないからと。かつては,あたかもギター音楽が一般音楽とは異なる特殊な分野で,知らないと言うのを恥と考えていなかったということだろう。濱田氏の見解に従えば,ギターが分かるというのは音楽が分かるリトマス試験紙ということになる。ギターの楽器の種類を知るのは,ギターが分かる最も入り口である。承知の通り,各種ギターは広範な音楽分野に用いられる。だから,他の楽器に比べ,ギターは音楽のジャンルに応じて分化し使い分けがなされているわけだ。 

音楽祭関係者の見解を聞けない以上,どういう意図で表現されたものなのか憶測想像するしかない。分かった上での所業なのか,単に知らないだけなのか,いずれにせよ,その道のプロたるもの,表現したものに責任を持ってもらいたい。実際の楽器,用いられる音楽,音等,わずかの時間と注意力を持って聞いてもらえれば,その違いはすぐ分かるはずだ。もし,それでも分からないとすれば,以下の文章で違いを理解していただきたい。

 

  •  クラシックギター
もとはガット弦で現在多くはナイロン弦を使う。鉄弦を張ることは想定していない。スペイン中心で発達したが,ヨーロッパでは家庭楽器としても親しまれる。他の弦楽器同様コンサート楽器は個人的な手工で作られることが多く,トーレス(西),サントス(西),ブーシェ(仏),ハウザー(独)などの名器が存在する。指弾き(現代は爪奏法が主流)で独奏が主だが,伴奏や合奏にも用いられる。ギターの親戚にあたり,バッハが愛好したリュートの音楽もこの楽器で演奏される。本来,ギターといえばこれを指すが,分流で発達したフォークギターやエレキギターと区別するためクラシックギターと呼ばれる。メロディと伴奏とが同時にも個別にも演奏できる万能ギターなので,クラシック以外にもフラメンコ,ボサノバ,ジャズ,演歌等にも用いられる。


  • フォークギター
先祖をヨーロッパのギターに持つが,主にアメリカで発達。鉄弦を使う。マーチン社やギブソン社が有名。カントリー&ウェスタン音楽や1960年代の日本のフォークブームで流行し,フォーク音楽の歌の伴奏に用いられることが多いが,この楽器で独奏する人も一部いる。ボティが大型で丈夫に作られ,コードが押さえやすいよう細いネックを持つ。ピックを用いてコードのかき鳴らし演奏をすることが多いので,表面板をキズから保護する目的でサウンドホールの横に黒や茶色のピックガードがついていることが多く,クラシックギターとの外見的差は一目瞭然。バッハのようなクラシック音楽を演奏することは想定されていない。また以下のエレキギターとの対比で生音のギターの意味でアコースティックギターと呼ばれることもある。しかし生ギターには当然本家のクラシックギターも含まれるので,これのみをアコースティックギターというのは本来呼称が不明確。

  • エレキギター

電気増幅で音を出すため,響胴を持たず,分厚いソリッドの板のボディに細めのネック,テンションの低い鉄弦を使う。電磁誘導で弦の振動を電気信号に変えてアンプに送り込むタイプが多いが,エレアコと呼ばれる中間的なものでは,生の音もある程度出,ピエゾ素子などで弦の振動を拾うものもあり,種類が多い。現代曲に使われることもあるが,クラシック曲に用いられることは無く,ロックやジャズなどのポピュラー音楽に用いられることが殆ど。

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ブログ「アメリカで開始したクラシックギター」に,パラグアイの大ギタリスト作曲家のバリオスが過小評価されてきた理由の一つに,彼が民族(俗)音楽家に仕立てられてしまった事があげられていた。善意の無知は悪意よりも性質が悪い一例であろう。


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