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高スペックオーディオ考 [雑感]

ここでいう高スペック・オーディオというのは,SACDとDVDオーディオのこと。 従来のCDは縦軸分解能16ビット(96dB),横軸分解能44.1kHz(再生音帯域はこの1/2以下)であることはご承知のとおり。

このスペックを大幅に上げたもので,ちなみに,SACDでは,縦軸分解能120dB以上,再生音帯域100kHz以上といわれている。いわれているというのは,デジタル化の方式が違うため,単純に比較できないからである。実際には,はるかに高い周波数(約2.8MHz)でサンプリングされているが縦軸は1ビットである。

300px-Elcaset.jpg大昔(70年代だったか),エル・カセットというものが鳴り物入りで登場した。当時,コンパクト・カセットでは音楽録音に向かず,愛好家には,オープンリール・デッキが神器のようなもの。今は無きA電機やT社,M社のもの。いわゆる,サンパチ・ツートラである。当時大学生にもなっていない私には高嶺の花であった。(家にあったレコードプレーヤで若き荘村清志さんのグラナドス/スペイン舞曲第5番などを何度も繰り返し聴いた記憶がある。冒頭の伴奏の装飾音などどうやって弾くのか想像もつかなかった。)オープンリール・デッキ並みの音質でコンパクト・カセット並みの手軽さ。いわば従来技術の「いいとこどり」をした製品であったが,あっという間に消えてしまった。その後,コンパクト・カセットは広く使われ現在まで長寿を全うしている。

コンパクト・カセットの後継として出たMDもロングプレイ版や高規格版が出たが,それが普及しないうちに終わりそうである。MDの対抗馬として,DCC(デジタルコンパクトカセット;コンパクト・カセットのサイズでデジタル記録)があったということはすでに記憶すらないかもしれない。

さて,この高スペックオーディオ,従来の録音情報を入れるには,明らかにオーバー・スペックである。新録音を入れるにしても,デジタル部分はいくらでもスペックを上げることはできるが,原音を扱うアナログ技術はそう簡単に進歩するものではない。アナログ時代,製品の特性を測るB&K社の業務用測定機器そのもののS/N比が90dB台出せるかどうかだった記憶がある。電気的部分ですらそうなのだから,マイクやスピーカーなど,音と電気信号との変換部分は楽器に近いものがあり,これはさらに高性能化が難しい。

デジタル上の高スペック,いわば入れ物だけ大きくしても,入れられる音楽情報そのものがありえない。メーカーの目的はコピー防止など,別のところにあるようだ。従来CDとも互換性を保ちつつ,次世代規格として狙っているのだろう。エルカセットやDCCのようにすぐ消えることはなさそうだ。
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