SSブログ

弦の振動姿態(理想の弦の1/4地点を弾く) [音楽理論]

今回は,前回の弦の中央部を弾いた際の弦振動アニメーションに引き続き,より現実に近いケースである弦の1/4地点を弾いたものを示す。計算方法は前と同じで,初期の変形状態が変っただけだが,ジグザグに変形しながら揺れるのが面白い。
1/4地点は実際の楽器では,サウンドホールの右端付近だから,通常最もよく使う付近に対応する。2倍音が最も豊富に出る。さらにブリッジ側を弾けば,高次倍音が増える(メタリックないしはその奏法指定は"Sul Ponticello",ちなみに前回のソフトな音の指定は"Sul Tasto")のは承知のとおりである。
また,弾く位置は同じでも,弦の初期変形を鋭角にすれば高次倍音が増えるので音質が硬くなる。

ギターの実音は譜面よりもオクターブ低い訳だが,すごく低い感じはしないのは,2倍音が基音に劣らず多く出るからであるが,このような簡単な計算の変形パターンからでも納得することができる。また,ブリッジ側を弾くと,ナット側の振幅も対称的に大きくなることがわかる。

以上踏まえ,少し想像となるが,
(1)ネックは少し順ぞりしていた方が良い
(2)山下氏が演奏中ナットから弦を外した
といった経験則や逸話の根拠としても受け入れらるかも知れない。
(1)に関しては,普通に弾くと5フレット付近の振幅が大きくなるから,順ぞりで逃げないとビリついてしまう。
(2)に関しては,ブリッジ付近を強烈に弾けば,ナット付近の振幅も非常に大きくなるはずだから,起こりえないことではない。

なお,これらの弦の揺れはいずれも理想状態のもので,実際楽器に張られたものとは違うが,大枠としては,高速度撮影したパターンの原形となっていることは確かめている。ジグザグ振動に含まれる高次倍音成分を適当に打ち切ってやれば,実際の弦の振動と似てくる。
また,この解析では一方向に弾かれた弦がその方向にのみ揺れることを前提としているが実際の弦の振動には回転運動が観測される。弦の回転運動に関して,従ってアルアイレとアポヤンドの音質の違いまではこの解析からは得られない。

図2.gif
nice!(3)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 3

コメント 2

やーさん

こんにちは、「アメリカで開始したクラシックギター」ブログを書いている者です。ときどきコメントを入れていただきありがとうございます。
ギター歴30年とのこと、私とは全く経験量が違うので、テクニック等で私が感じる問題レベルとは全く違う所で励んでおられると想像します。
このブログの内容は充実しており、大変参考になります。今後の発展を楽しみにしております。ところで、今回のアニメーションの部分で、横軸のディメンションがよく見えませんでした。多分0-60ミリの長さでサンプルしているのだろうと想像します。ではまた。
by やーさん (2009-02-06 07:24) 

enrique

コメントありがとうございます。

弦のアニメーションに関しては,横軸は通常の楽器の弦長65cmにあわせています。単位がぬけているのはご愛嬌ということでお許しください。
もともと作った画像が縦軸(振幅)を極端に拡大したもので,一般に公開するにはあまりにも不自然なため,縦に1/2程度につぶしました。そのせいか数字や弦の動きが見えにくい場合もあるかもしれません(私のPCでは見えるのですが)。サムネイルをつくり必要に応じて拡大して見られるようにするのが良いのですが,まだその使用法を把握していません。
今後実際の観測画像なども入れられれば良いと思っています。

「アメリカで開始したクラシックギター」は音楽的見解に貫かれておりup to dateな内容ですが,本ブログは行き当たりばったり。特に内容面では,今回のようなacousticsもあれば,曲への取り組み状況,旅行記,思い出話,等々,経験のみの長さにより時間軸も新旧ごちゃごちゃですが,ご本家とcomplementな関係になれれば良いと考えています。
なお,見出しの経験30数年は,誇大広告的なものであり,実際はキセル乗車的なもので学生時代の数年(長く見て10年),最近の10年が,継続してやっていたかな?という期間です。敢えて言えば,ギター歴というのはつめを切らなかった期間ということです。
by enrique (2009-02-07 10:53) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0