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弘法筆を選ばず? [雑感]

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諺は意味が逆の様に見えるものがセットになっているものです。

本来の意味を逆に捉えてしまう事も時にありますが,「弘法筆を選ばず」も,誤解の多いものでしょう。


「ギターを弾けるそうだから」と,オンボロのフォークギターを渡されて「弾いてくれ」と言われた事があります。

仮にちゃんとした楽器であっても,鉄弦のフォークギターでクラシックギター曲は弾けないものです。楽器の構造も違います。ヴァイオリン奏者にウクレレを弾けと言っているようなものです。

「弾けない」と断ると,「弘法筆を選ばず」だ。「どんな楽器でも弾きこなせない様では,弾けるとは言えないだろう!」という乱暴な言葉。そういう無知レベルは,殆ど犯罪です。


そのようなトンデモな誤解にお墨付きを与えてしまう「弘法筆を選ばず」(の解釈)は罪です。
額面通り捉えれば,「名人はどんな筆でも使いこなせる」というふうにとれますので,「適切でない道具でも名人なら使いこなせる」みたいな,間違った拡大解釈がなされるのでしょう。

むろん,オンボロな筆でも素人よりは上手いでしょう。しかし,一流の名人がボロな筆を使ったのでは,全くの名折れ。才能を無にする行為です。弘法を称賛した積りで,筆を作る名工の技をも全面否定するトンデモない諺といえるでしょう。

筆の種類にしろ,墨にしろ,紙にしろ,名人にはシロートが知り得ない信念があるはずです。全ての技芸は道具の進化と車の両輪の様なものでしょう。


「そういう言葉もあるが,弘法はものすごく筆にこだわったのだ。」と物知り顔な解説がありますが,ソンナコトアタリマエです。名人が,ボロい道具を使う訳がありません。道具を研究しつつ技を磨いてきたはずです。

「名人はボロい道具でも大丈夫」という解釈は,理屈上も現実にもあり得ない事です。


むしろ,使う道具を見ればその人の腕が分かるものです。
「弘法筆を選ぶ」とはっきりさせておいた方が,おかしな間違いが無くて良いでしょう。
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ロートレー

塗装用の刷毛はピンからキリまでありますが、性能差は歴然としていて、素人の私でも実感しています。
塗料の含み具合、伸び具合。毛先の復元性などなど
刷毛目を残さないように塗るためには、山羊毛などを使用したレベルの用具は必須と感じています。
by ロートレー (2023-02-10 09:00) 

アヨアン・イゴカー

大工さんも道具を見れば腕が分かるといいますが、宮大工の棟梁は弟子を道具の研ぎから指導する、というようなことを読んだ記憶があります。鉋や鑿や鋸の歯の研ぎをみれば、技術、大工についての熱意、知識などが見えてしまうのでしょうね。よい道具は大切です。
by アヨアン・イゴカー (2023-02-10 11:33) 

Enrique

ロートレーさん,
一般論の記事ですが,私の想定では,楽器(ギター)とその他もろもろの道具です。
確かに塗装用の刷毛は適材適所がありそうです。例えば漆塗り用のものは平たくて柔らかくて。
用途に合った合った良い道具によれば,仕上がりの差は歴然としています。おかしな道具ではいくら名人でも上手く行きませんね。
by Enrique (2023-02-10 16:04) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさん,
そうですね。道具の重要さは,論を待ちませんね。
大工道具などは典型例ですね。道具そのものと,その手入れが大事です。正しい研ぎには,技術と共にやはり良い砥石が必須です。むろん砥石そのものの手入れも重要です。
鉋ですと,台の調整も刃と同程度に重要ですね。
by Enrique (2023-02-10 16:10) 

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