SSブログ

なすに任せる体の使い方 [演奏技術]

ふと,思いました。
人間のやっている行為というのは,いかに自然現象をコントロールするかという事だと。
あまり対象を広げても何を言っているかわからなくなりますので,芸術分野に限ってみます。

EnriqueAutographSmall.png
以前墨絵をやる方に話を聞いたところ,墨の滲みなどの自然現象に任せるのだという話でした。むろんそれを巧みに活用して作品に仕上げるわけで,墨や硯,紙,筆その他の道具の質がそのコントロールに関わってきます。

楽器演奏もその面に於いては同様でしょう。往々にして,自分の力や技術で弾いている積りになっていますが,音は物体や空気の振動であり,それを奏者が直接作り出しているわけではありません。身体と楽器を通して,如何に無理なく響かせるかがポイントでしょう。

ギターを弾く直接的な行為は,指で弦をはじくという事です。むろん,ヒトが爪と指先ではじいている事に間違いはないわけですが,弾かれる弦にしてみれば,指ではじかれるわけではなくて,指先を滑って通過するわけです。スムーズに通過するかぐしゃぐしゃっと通過するか,そしてその後のほぼ自由振動,いずれにしても自然現象には違いありません。それをより良くしたいという欲望があるわけですが,むやみに人為を働かせてもそれは自然現象ですから,超自然的な事は起こりえません。欲望で超自然を望んでも,無いものねだりにしかなりません。

無論やや逆らった事も出来ますが,それには大きな代償を伴い,巧みには行きませんし,それが出来たとして心地よいかどうか分かりません。細野晴臣や坂本龍一らがYMOを結成してテクノポップというものを流行らせたわけですが,直ぐに飽きられたと,坂本自身が語っていました。理由はその無機質さです。音もさることながら,リズムの揺らぎなどが全くなかった。最初は熱狂的に受け入れられて,坂本たちのねらいは当たったのでしょうが,コンピュータの刻むテンポは長くは聴いていられなかった。

坂本氏は,当初人間の弾く不完全性が耐えられなかったが,コンピュータでやってみると今度はその単調さに耐えられなかったと,まあありそうなことです。音響という自然現象を人間がコントロールする。むろん電気仕掛けを使ってもそれは自然現象ですが,そこの操作に原始的なところがあるのが良いようです。ガンガンに電気を使っているエレキギターの音でさえというか,むしろアコギ以上にニュアンスの付け方が音楽の大半を占めるように感じます。

むろんクラギは原始的なやり方を好みます。楽器そのものの構造は改良され一部近代工業の成果は使うにしても,数百年前と本質は変わっていません。何方だったか忘れましたが,「ピアノはタイプライターで,ギターは毛筆」だと仰っていた方がいましたが,なるほどそういう捉え方はあるなと思っている今日この頃です。
nice!(33)  コメント(4) 
共通テーマ:音楽

nice! 33

コメント 4

U3

 私は身の廻りで起きるすべての現象は、必然的に起きているのではなくて、偶然の上に偶然が幾層にも積み重なって、今、目の前に現れているのだという考えです。自然現象とはそもそもそういうものだと考えます。
 ですから、宗教家などが言う、生まれた時から既に運命が定まっているとする考えには、大いに疑問を感じます。なぜならそれでは詰まらない世界になってしまうから。
 偶然≒可能性だと私は考えます。先が分からないからオモシロイ。
by U3 (2021-10-14 16:11) 

たこやきおやじ

Enriqueさん

「ギターは毛筆」のたとえは何か考えさせられるものが有りますね。

by たこやきおやじ (2021-10-14 23:28) 

Enrique

U3さん,
サイズによって偶然にも必然にも見えると思います。必然的に見えても必ず偶然性は付きまとうものだと思います。
運命論は私もくみしませんが,時間軸が反転できるとすれば「あらかじめ決まっていた」とも言えるのでしょうが,後付けのへ理屈と区別できません。
by Enrique (2021-10-15 05:26) 

Enrique

たこやきおやじさん,
色んな捉え方があるとは思いますが,どうしても道具や個人の癖が強く
出てしまいます。
by Enrique (2021-10-15 05:30) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。