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送配電に関して~単位法の活用・その2~ [科学と技術一般]

前回単位法の学習をやりましたが,試験の時間内にその手の計算がスムーズに行くかどうかあまり自信がないので,同種問題をもう一つやってみます。

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今回の例題は以下のようなもの。

図の変電所から,100MVA,遅れ力率80%の負荷に電力を供給。一次・二次・三次の線間定格電圧154kV/ 77kV/ 22kV各結線はY形/Y形/Δ型,三次には30Mvarの進相コンデンサが接続,変圧器の容量及び\(\text{%}Z\)は以下の通り。
H262.png

(1)二次-三次巻線間の\(\text{%}Z\)のp.u.値を一次基準で
今回言葉の意味は重要で,p.u.というのは100%を1とする表し方です。
これは基本問題で,容量変換すればいいわけです。一次-二次巻線間の基準容量が200MVA,二次-三次巻線間の基準容量が50MVAなので,

\[\text{%}{Z_{23}} = \frac{200}{50} \times 2 = 8\text{%} = 0.08\text{p.u.}\] と求まります。

(2)一次,二次,三次巻線間の\(\text{%}Z\)のp.u.値をそれぞれ一次基準で

各巻き線の\(\text{%}Z\)のp.u.値をそれぞれ,\(X_1\),\(X_2\),\(X_3\)とする*と,それぞれ,
\[X_1+X_2=0.15\] \[X_2+X_3=0.08\] \[X_1+X_3=0.08\] という事なので。この連立方程式を解くと,
\[X_1=0.075\] \[X_2=0.075\] \[X_3=0.005\] と求まる。

(3)一次母線の電圧が152kVの場合の二次母線の電圧は幾らになるか
定格線間電圧が154kV/ 77kVなわけですから,一次母線が152kVに低下しても二次母線の電圧は77kVとそう大差ないわけです。むしろ,そう大差ない変化を素早くきちんと正確に求めるのが単位法の骨子なわけで,テキトーな値ではダメで清く正しく算出しないといけません。三次巻き線に接続されている力率改善用コンデンサの扱いもポイントです。電圧降下量を素早く求める必要があります。もし力率が100%であれば,二次側もこの比率で下がるだけですが,実際には負荷が遅れ80%に力率改善コンデンサの無効電力-30Mvarのコンデンサが付いていますので,これらの無効電力を求めます。

\(X_1\),\(X_2\),\(X_3\)を通過する無効電力\(Q_1\),\(Q_2\),\(Q_3\text{[Mvar]}\)を求めると,
\[Q_2=100\sqrt{1-0.8^2}=60\text{Mvar}\] \[Q_3=30\text{Mvar}\] \[Q_1=60-30=30\text{Mvar}\] これを単位法で換算すると,
\[Q_1=\frac{30}{200}=0.15\text{p.u.}\] \[Q_2=\frac{60}{200}=0.3\text{p.u.}\] \[Q_3=\frac{30}{200}=0.15\text{p.u.}\] 電圧降下量\(Δv\)は近似式を用いると,
\[Δv=X_1Q_1+X_2Q_2=0.075\times0.015+0.075\times0.03=0.03375\text{p.u.}\] 従って,二次側電圧\(V_2\)は,
\[V_2=152\times\frac{77}{154}-77\times0.03375\simeq73.40\] となって二次側電圧は73.4kVと求まります。

いずれも,単位法と近似式をつかわないでまともにやったら大変です。殆ど手計算では無理でしょう。なおポイントとしては,変圧器三次側のコンデンサの効果は,電源側に戻す無効電力をキャンセルしているわけで,二次につながった負荷の無効電力はあくまで60Mvarであることが重要です。コンデンサの効果は定性的には分かっていても,計算となると,近似式を使うにしてもその物理的意味と正確さが求められます。(3)は,電力屋さんには常識事項なのでしょうが,門外漢にとっては単位法に関するしっかりとした知識と理解が無いと難しい問題です。解答を見てもなかなかピンときませんでした。あと,Y結線やΔ結線を考慮する必要が無いのも単位法の優位性でしょう。

むろん,こんな計算を手計算でやらなくても,今ならソフト組んでおけば正確に出来るわけですが,解析プログラムも意味が分かって使うのとそうでないのとでは大違いでしょう。何分試験に出るかもしれません。まだまだやらないといけない気がしますが,こればかりやっているわけにも行かないので,単位法はこの辺でひとまず終了します。

今回の学習のポイント:
・一問目,二問目は簡単。順次その結果を使って行く。
・トランスでは各巻線の%Zの和になっている。
・基準容量を統一しての計算は鉄則。
・電圧降下量の近似式は,\(Δv=RP+XQ\),さらに巻線抵抗を無視すれば,\(Δv=XQ\).
*巻線抵抗を無視しているので,記号はZでなく純リアクタンスのXを使っています。
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U3

 ところで成人の頃から関数電卓を使ってもう6代目くらいなのですが、その間、関数機能を使って計算したのは三角関数の解を求めるくらいしかない情けない私です、
by U3 (2021-10-14 15:59) 

Enrique

U3さん,
そんなものだと思います。
こちらの試験は電卓使用可能ですが,関数つきはダメで普通電卓でやらないといけません。如何に四則演算と平方根のみでやるかがポイントです。
紙の辞書が電子辞書になった様に,関数表が電卓になったと思えば良いのでしょうか。
今はどうか知りませんが,昔関数電卓も普通電卓も中のICは同じと聞いたことがあります(キーに配線されるかどうかだけ)。関数電卓で使わないキーがあるのは必然なのでしょう。

by Enrique (2021-10-15 05:10) 

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