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間違う練習と間違わない練習 [演奏技術]

以前も書いた事ですが,練習に対して最近感じている事を書いてみます。


力を抜くとか,オフに気を使うとか書いていましたが,一生懸命練習をすればするほどついつい悪い練習もしてしまいます。そのことはアニーリング手法により過去の悪弊をリセットしなければならないという事も書きました。

もう大体言う事はあまりないのですが,ならば新たに練習する曲は,どんなことに気を付ければよいのか?それを弾き古した曲にも適用して矯正しないといけません。アニーリングにより過去を完全にリセットできれば良いのですが,中々そうもいきません。


単純化して言えば,過去の練習は「間違う練習」をしていたのです。間違わないために練習するはずなのですが,間違いながら間違わない状態を目指して練習をしていました。

むろん,一生懸命努力することも必要で,その中で見えてくるものもあります。なかなか最初から最短コースと言うのは見えないものです。それが見える人は天才的な人で,それが見えた上でさらに努力するのですから常人の及ぶところではありません。

常人のしろうとは,どう心がければいいのでしょうか?
そこでハタと気づいたのが(気づくのが遅すぎるところが常人のなせる業),「間違わない練習」です。練習初期は,どうしても,つっかかり,やっとこさの練習になりがちです。前も書いたかもしれませんが,上手い人は初見でもきれいに弾くものです。もちろん部分練習を要するところはみっちりそれが必要ですが,自己の技術レベルで可能な初めて弾く部分でもきれいに弾かないといけません。


「それが出来れば苦労はないわ!」という意見が出そうですが,一回でも間違ってしまうと,間違った状態が脳にインプットされてしまいます。しかも,間違わない様に頑張れば頑張るほどその矯正が難しくなります。当方の場合,過去に弾いた曲はそういう状態になることが多く,全くの新曲を練習するよりも仕上がりに時間が掛かってしまう事が起こります。

そのためには,自己の技術レベルに適した曲を弾くのが一番いいのですが,どうしても背伸びした曲に挑戦しがちなものです。過去に取り組んだ曲は,悪い弾き方で弾いていたという事もありますし,そのことも含め,当時の技術レベルで背伸びして無理に演奏していた曲だという事も言えると思います。「こんな酷い弾き方をしていたのか!」と思い出せればまだしも,無意識状態で弾ける状態になっているような曲は,何分無意識下で悪い状態ですからたちが悪いです。


むろん,アマチュアが自己のレベルを顧みずに難曲を無理やり弾く事に対する歯止めはありません。
あるとすれば,指導者の「その曲はムリだからやめときなさい。」というアドバイスですが,「死んでもこの曲を弾きたい」となれば,何人たりともそれを引き止められません。ただ,その行為は本記事的な言い方で言えば,一生懸命「間違う練習」をしている事に他なりません。間違いなく上達に悪影響を及ぼします。しかしながら,頑なにムリな曲に修行僧の様に取り組む姿勢は,ゆがんでいるとは言え音楽への愛情であり,楽器の愛好を持続するモチベーションとなるのであれば,とめられません。

「間違わない練習とは具体的にどういうことか?」と言えば,むろんどんな新曲でもサラサラと初見演奏出来れば理想ですが(作曲家の新垣隆さんはピアノでそれができるそうですが),ギターの場合,運指付けの問題がありますので,全く初見というのはある程度のレベルの曲ではムリですが,信頼できる人が付けた運指にしたがい,ゆっくり止まらずにきれいな音で譜読みできる程度の曲に取り組むのが良いと思います。そうでないと,「間違う練習」をしてしまう事になるからです。


むろん,ゆっくり弾く以外にも,弾く前に曲のなりたちを理解する事や,強弱・アクセントの付け方で弾きやすさが俄然変わることもありますし,難所対策として運指や練習法の工夫も欠かせません。音を減らしてみるとか,声部ごとに分解してみるとか,そのようなことが自ら出来れば良いですし,スーパーバイザーの指摘を貰って出来れば良いでしょう。

そういう事も含めて,常人の上達には音楽的基礎の学習と共に適切な基礎練習や練習曲を沢山やったかどうかに掛かっていると言えるでしょう。
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REIKO

「間違う練習」をしないためには
・現在の自分の実力に見合った曲をやる
・楽器で練習する前に、楽譜をよく読んで分析・準備しておく
・地道な基礎練習を欠かさない
…に尽きると思います。
しかし多くのアマチュアが「難しい曲がどこまで弾けるかで躍起になる」「事前に楽譜を読まず、いきなり楽器で弾いてしまう」「基礎練習はやらない」なんですね。

私のツイッターのタイムラインは何らかの楽器をやっている人が多いのですが、アマチュアは「譜読みが大変」「なかなか思うように弾けない」「でも練習頑張る」などなど、そんなツイートばかりです。
やるべきことをやってないのだから、苦労するのは当然でしょうがぁ~~~!と私なんかは思うのですが、レッスンを受けていても「曲を見てもらっている」だけで、根本的なことは全然教わってないようです。

ただ、そういう人たちの様子を見ていると、真の上達や音楽を追究する姿勢よりも「一生懸命練習している自分が好き」「頑張ってること自体に価値がある」的な気持ちが勝っているように感じます。
それなら間違いだらけの効率の悪い練習でも構わない、むしろ少ない時間でサラッと曲が仕上がってしまったら面白くないのでしょう。
いかにも日本的な話だなあ…と思います。
by REIKO (2020-10-20 19:03) 

Enrique

REIKOさん,
同じ様なことをたびたび書いているのですが,指導者でも「無理だから止めときなさい」という人と,「生徒の希望をむしろきいてやる」という人がいる様です。むろん,やめなさいと言っても,「どーしてもやる」という人を止められません。生徒から「これを弾けないなら辞める」といわれると先生もどーしようもありません。「好きでもない他の曲(特に練習曲)などは弾けなくて構わないから,好きなこの曲『だけ』を弾きたい。」というパラノイア的嗜好,無駄な努力でも一生懸命やるのが良いと,一種マゾヒスト的欲望もこれまたとめられませんね。
手段が目的化しているのでしょう。苦節8年だったかの海苔漁師の人が典型でしたが。残念ながら労働生産性は上がらないですね。
むろん,趣味でやるシロートがどんなやり方したってご随意なわけですが,どうもプロを目指す若者にもそういう傾向があるらしいことは由々しき事です。
by Enrique (2020-10-20 22:37) 

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