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カヴァティーナ組曲について~その1~ [曲目]

「カヴァティーナ」というと,映画ディアハンターで有名になったマイヤーズのカヴァティーナが有名曲になりましたが,ギター曲での元祖はこちら,A.タンスマンのカヴァティーナ組曲です。

もっとも,カヴァティーナはアリアとかロマンスとかと同様,一般的な楽式名です。単発の歌謡形式のネーミングですので,組曲にカヴァティーナと名付けたのは異例と言えば異例なのでしょう*。

この曲は,当方2013年に取り組みましたが,現在見直しています。
また「原典版」とのZigante版を入手しましたので,従来使っていたSegovia版との比較をしてみます。

Frédéric Ziganteという人を知りませんでした。調べてみると,1962年フランス生まれ,ミラノのコンセルバトワールでルジェロ・シエスタ,アリリオ・ディアス,アレクサンドル・ラゴヤらに師事した方のようです。Zigante版では,カヴァティーナ組曲には多数のバージョンが存在していることが前書きに書かれています。それに応じた譜例が後書きに示されていますので,参考にはなります。セゴビア版と共に手元に置いておくべきとは思いますが,譜面そのものの実用版としての機能はSegovia版と大差なく,スラーの不統一などむしろSegovia版よりも劣る様な気もします。こちらの期待としては,Segovia独特の運指を現代風に合理化してもらいたいところなのですが,そのままの所も多いので,自分でやるしかなさそうです。

冒頭にPreludioのTansman自筆譜が示されています(譜例1)。美しい譜面でヘタなコンピュータ・ノーテーション譜面よりもずっと良いです。二段譜で書かれていますが,ソルの幻想曲Op.7のような実音記譜ではなくオクターブ上げた記譜ですので,ギター譜を見慣れた人にも,むしろすっきりと見やすい譜面です。

譜例1. Tansmanの自筆譜冒頭(Zigante版に掲載のもの)
Segovia版の楽譜(譜例2)はすこし詰め込み過ぎかなと思っていましたが,ヘンに間延びした小節(譜例3)よりも雰囲気はあります。


譜例2. Segovia版プレリュード15-17小節目

譜例3. Zigante版プレリュード15-16小節目
次回は,楽譜上の音の相違点について見てみます。

後注:

*単数形のCavatinaでなく,複数形のCavatineとしているため,カヴァティーナ「組曲」とされているのでしょう。"Cavatine pour Guitare"「ギターの為のカヴァティーナ集」くらいが最も正確な曲名だと思われます。
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たこやきおやじ

Enriqueさん

Enriqueさんの分析に期待しています。(^^;


by たこやきおやじ (2020-03-05 17:45) 

Enrique

たこやきおやじさん,
この曲に関してはSegovia版に少し手を加えるくらいでも良いのかなと思っています。
by Enrique (2020-03-05 18:07) 

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