手段と目的 [雑感]
こんなパターンが続きます。
手段と目的に関しては辞書を引くまでもないでしょう。
こんなもの言葉の意味で混同する訳もなさそうですが，やっている事が手段なのか目的なのかが分からなくなっていることが案外多いのです。いわば，手段の目的化というやつです。
本来は手段であったものが目的になってしまう。
世の中には本来の目的が分からなくなって，その手段だったものをやる事が目的の様になっていることが結構あります。ここでは，音楽面を取り上げますと，例えば練習曲というもの。本来は練習のための曲です。何のために練習するかと言えば，練習曲でない本物の曲？を上手に弾くためでしょう。しかし，練習曲そのものが立派な曲として目的の曲になっている場合があります。
ショパンの練習曲が有名ですが，ギターではショパンよりも32歳年長のソルの練習曲こそ，それに相当するのではないでしょうか。練習曲そのものが弾く目的になっていると。むしろこのような例は，健全なものだろうと思いますが，本来の目的と手段の観点から言えば，ソルの練習曲はメカニック練習には効率が悪いとも言われます。音楽的過ぎて，メカニックの練習にならないという事です。本来なら，上級者にはソルのOp.6とOp.29は必須課題なわけですが，これら24曲を全曲弾くという事は余り行われない様に見えます。
ショパンで良くレクチャーされるのは，前奏曲を独立した曲としたところでしょうか。元々は組曲の最初に弾く曲ということで，前奏曲（プレリュード）としたわけで，あまり明確な形式を持たず，指ならしの意味もあったようですが，ショパンの場合24調使ったプレリュード集を作りました。むろん，それはバッハをお手本にしたものですが，バッハの場合はプレリュードとフーガを交互に24調で成しました。またこれは練習曲とも言えるもので，現在でも鍵盤学習者はインヴェンションとシンフォニアの後にこれを弾きますし，鍵盤のパルティータ6曲も練習曲的性格を帯びるもののようです。ギターでもお馴染みの無伴奏ヴァイオリンパルティータ3曲，終曲に長大なシャコンヌを持つ第２番なども含めてこれが練習曲というと面食らうかもしれませんが。
以前も書きましたが，練習曲と本物？の曲の境目は極めて曖昧だということですが，いずれにしても曲を弾くと言う行為じたいは手段なのか目的なのか？と問われれば，より良く生きる目的のための手段だと考えています。そのためにより良く曲を弾けた方が，生活の質がアップします。大きく見ると手段である曲を弾くという行為をなるべく改善する目的のために，様々な手段を弄しているというのが当方の生活です。このブログもその目的に対する手段の一つだと思っています。時々書く事が目的になってしまっていることもありますが。
Enriqueさん
う～ん、何か違う事を書こうと思ったのですが、上の文に関しては同感です。（＾＾；
by たこやきおやじ (2019-12-19 14:01)
鑑賞曲としての価値をほとんど捨て、技術向上の効率のみに特化したチェルニーのようなピアノ練習曲は、もしかして練習曲全体のうちでは例外なのかもしれないですね。
ショパンのそれは、練習曲の様式（比較的短い自由な形式で、特定の音型やリズム、運指の連続が多い）を借りた、演奏会用の作品だと思っています。
テクニック的な練習曲は１９世紀に大量に書かれましたが、その後＆現在はそれほどでもないですよね？
つまり、かける時間と労力の割には効果がビミョーなんですよ。
（基礎練習の方がずっと早いです）
ですが日本のクラシック音楽系の楽器では、未だに19世紀信仰が強く、当時の学習方法を無批判に踏襲しているのが気になります。
本来は手段でしかない練習曲や、それに類する（と考えられている）曲集をどんどん進んでいくことを強いられ、いつの間にかそれが目的化してしまうんですね。
それが目的で構わない、楽しい＆面白い人はともかく、そうでない人が手段の途中で疲れ果て、自信を無くし止めてしまうのは可哀想だと思います。
by REIKO (2019-12-20 00:32)
たこやきおやじさん，
むりやり同意（笑）いただきありがとうございます。
by Enrique (2019-12-20 05:49)
REIKOさん，
世の中でいろいろ発生する手段と目的の混同例を日本のクラシック音楽教育面からご指摘いただきましたね。
確かに音楽的な練習曲をきっちりやるのは必要だと思いますが，ご指摘の様に19世紀のメソッドが全てではありませんね。基礎をきっちりやるのは手段として重要ですが，音楽的練習曲の場合，基礎と応用があいまいで，それが目的化してしまうのもどうなのかですね。
by Enrique (2019-12-20 06:08)