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玉掛けに学ぶ [雑感]

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「玉掛け」という言葉をご存知でしょうか。
 
キャタピラー教習所の画像参照。
クレーンなどを用いて重い荷物や部材の吊り上げ下しの作業をするには,この技能資格が義務づけられています。

すべて人力で建てた茗荷亭ではこのお世話にはなっていませんが,もう少し大きな一般民家を建てる際には,梁や桁などの部材を上げる際にはお世話になります。

特にこの作業に関して言及する積もりはありませんが,要は吊る部材へのワイヤ・ロープの掛け方の技能です。

ロープの安全係数(安全率)は基本的には6が使われます。用いる荷重はロープが切れる張力の1/6以下で使いなさいと言う事で,これは法令で義務づけられています。これはロープの痛みなどを考慮して大きめにしてあるようです。ギリギリの細いロープでは心理的にも怖いと思います。実際の作業で大事なのは掛ける角度と本数です。本数と角度を考慮して算出した表がありますので,それを使います。
 
ロープの掛け方
バランスを取れば一本で吊る事も出来ますが,それは禁止されています。2本掛け以上で「玉掛け」しないといけません。柱や梁のような長細い物は2本掛けですし,かさのある部材や荷物ですと3本ないし4本掛けとします。本数が多ければ,本数に応じてロープ1本当りの張力は減りますから,2本なら1本あたりの張力は1/2,3本なら1/3の扱いで良いわけですが,面白いのは,4本では1/4にはならず,1/3としないといけません。

なぜでしょうか?ロープの掛け方にもよりますが,4本独立に掛けた場合,4本のロープに荷重が均等には掛からないからで,多くの場合1本が遊び,他の3本で支える事になるからです。このような事例は何もロープでなくても経験します。三脚なら確実に3本で支えてぐらつきませんが,四つ足の椅子やテーブルの方ががたついたりします。ピアノの足が3本だと言うのも,ボディの形状もありますが合理的な理由です。

力学的事例は単純で分かりやすいですが,何事も揺るぎないものにするには,三つの要素で支える必要があるというのは,必ずしも無茶な例えではないでしょう。三位一体とか言います。音楽の三要素は,リズム,メロディ,ハーモニー。どれか一つでもそれなりに成り立ちますが,三つがバランスがとれて揺るぎないものになると。四つ目の要素はあっても良いのでしょうが,支えるのに必ずしも本質的な役割は果たさないということでしょう。

あとは蛇足です。
玉掛けのワイヤ・ロープの安全率が6というのは随分余裕をみてあり安全な印象を受けます。一方,航空機の機体強度の安全率は1.5程度と言われます。すわっ,「飛行機って玉掛けのロープより危険?」と考えるのは間違いです。言葉の定義と語感との印象は分けて考えないといけません。どう使われるか分からない不確定要素を多く含むものは安全率を高くとっておかないと危険ですし,逆に綿密な強度解析と使用部材の品質管理が厳格にして不確定要素を絞り込めば,安全率はギリギリであっても安全ということになります。
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コメント 4

Ujiki.oO

「たまがけ」の御題に、のそのそと這い出しました。(笑) そう言えば「技能講習修了証」を思い出し、財布から取り出してみました。 キャタピラーで受講した「フォークリフト運転」と、KOMATSUで受講した「玉掛け」+「小型移動式クレーン運転」です。(笑) どれも競技の様子で実地講習が進みます点が楽しかったです。 クレーン検定ではドラム缶の様な錘を指定の通りに動かしますが、特に旋回や伸縮方向に動かした後に「静止させる」のが、なかなか面白い技であります。 「慣性」を相殺させるのは、予測と計画と的確な微調整操作です。 動いている物を「綺麗に静止させる」のが醍醐味です。 いつのまにか・・・・・クレーンに脱線しました。 「玉掛け」は安全確認の周知徹底が試されます。(微笑) これからは、どこで被災するか覚悟しないといけない時代なのかと思いますので、体調が戻れば「車両系建設機械」全般の受講を受けたいなと思い出しました!(微笑)
by Ujiki.oO (2015-10-13 10:03) 

Enrique

Ujiki.oOさん,ありがとうございます。
資格お持ちでしたか。
いろいろお仕事出来ますね。
「玉掛け」は「クレーン」と一体ですね。
私は,その作業もさることながら,そこに現れる力学現象や何かは,色んなところの見方や考え方にも共通する原理だろうと,思うわけです。
チョット類推性が強すぎるのかもしれませんが。
もちろん,実作業ができれば,今後何事があっても困りませんね!
お元気に活躍されることを期待します。
by Enrique (2015-10-13 13:02) 

アヨアン・イゴカー

>3本なら1/3の扱いで良いわけですが,面白いのは,4本では1/4にはならず,1/3としないといけません。
これは面白いですね。多角形の最小単位が三角形なので、納得できますが。水の低きに就く如く。
劇団時代に、トラックに大道具・小道具を積んでシートを掛けた後に、ロープで固定しましたが、その時に「ナンキン(南京?)縛り」と言う独特の方法をつかったのを、この玉掛けとは異なりますが、思い出しました。
by アヨアン・イゴカー (2015-10-18 23:19) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさん,ありがとうございます。
様々な作業には,コツのようなものがありますが,全て力学的基礎に裏付けられています。
ロープの結び方なども知恵の結晶です。こちらも勿論力学的正しさに基づく経験的知恵の蓄積だと思います。
茶道で使うお茶入れの仕覆の緒結びなどは,一種の暗号です(毒を盛られないための)。
by Enrique (2015-10-19 07:21) 

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