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モンポウのコンポステラ組曲に再挑戦〜プレリュード〜その2 [曲目]

モンポウのコンポステラ組曲に再挑戦し出しました。プレリュードに関しての「その2」です。

18小節目の中間部から,原典版,セゴビア編,いずれにおいても2ページ目からです。
原典版では,E, A, Bと実音で書かれ,伸ばすE音だけがハーモニクスです。セゴビア編では,⑥12フレット,⑤12フレット,⑥7フレット,⑤7フレットと全部ハーモニクスです。これもギターの特性を使っていて良いかなと思いましたが,他の部分との統一を考えると,やはり原典版のほうが良い様な気がしてきました。

ここの部分は,音の上昇時はG#となり,一瞬モードの遷移を感じますが,下降時はG♮となり,E-Phrygianから変わらない様です。このようなポリフォニックもしくはポリコード的な動きを2小節続けた後,ここに入る前と同じアルペジオ的山形音型を2小節,E音の連打を2小節続け,B-Phrygianに戻してポリフォニック的な動きの2小節をやります。今度はモティーフ全体が完全4度下がっていますので,先ほどのG#に対応してD#となります。なおPhrygianを保つため,Fに#が付きます。

次は,同じことをやっているように見えるのですが,A-Aeolianに遷移しています。


そして,安定したA-Aeolianの響きを打ち破るように,突如スフォルツァンドで,G#7/D#の厳しい響きです。2小節目は長3度下げてE#7/B#と,先ほどのポリフォニック的なモティーフ2小節分が調(モード)も音型も変えて現れます。先ほどまでの2小節は緩やかな山型でしたが,こちらは短2度の上昇音程2回の,音の断片と言った動きです。何かこれまでとの結界を表しているようで,これから始まる混沌を暗示するような部分です。

案の定というか,なにやら妖しげな動きです。音型的には,今まで何度も現れた,山型のアルペジオ的な動きなのですが,全く調(モード)を変貌させています。もとは,E-Phrygianだと思われますが,先ほどB-Phrygian部分で現れたD#と,その前のE-Phrygian部分で現れたG#が現れて混沌の入り口です。16分休符で入りますので,直前の音型というよりは,冒頭のカンパネラ部の次の5小節目からの音型を模倣しているようです。

2小節づつ繰り返しながら,色合いを変えて行きます。次の2小節では音が増三度上がり,新たにC#とB♭D♭の臨時記号が発生します。次の2小節では音が増三度上がり,新たにC#とB♭D♭の臨時記号が発生します。次は短2度上昇,と言った感じで,音型もカンパネラ奏法とアルペジオがミックスした状況で上昇音型に入り,第47小節目で頂点に達し,更にE#,A#を追加しながら下降,第49小節目で一旦思い直して再下降。この辺の調を分析したらしたになるのでしょうが,分かったからどうということもなさそうなので,止めておきます。


奏法技術的には,新たに付加される臨時記号にのみ気を付ければ,案外読めます。音的には純度が高いと思います。フーガのストレッタのような様相です。現代の曲ではありますが,古典的な枠組みの中に高純度の新奇さが入っているのが,この曲の魅力ではないかと思います。

ストレッタ的な部分のしめくくりはEメジャー的な和音です(つづく)。
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アヨアン・イゴカー

>古典的な枠組みの中に高純度の新奇さ
ヴィラ=ロボス、プーランク、ミヨーなどとも親交があったのですね。生きた時代としては当然のことなのですが。美しい曲だと思います。
スペインの音楽には、時々少し東洋に通ずる感覚を感じます。イスラムの領土だったからかもしれません。
by アヨアン・イゴカー (2015-05-18 00:51) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさん,ありがとうございます。
全くおっしゃる通りだと思います。部分的には,日本の筝曲でもおかしくないようなところがあります。
スペイン音楽には,西洋と東洋の入り混じった独特なものがあるようです。入り交っているがゆえに,スペイン音楽でも色んなタイプがあると思います。ギラギラした激しいスペインっぽいものも多いですし,この曲の様な静謐な,東洋風だったり近代フランス風だったりするものもあります。
モンポウの生まれたバルセロナはフランスの影響の強いところだと思います。彼も実際にフランスで学びましたから,プーランク,ミヨーらの6人組と近い人だと思います。ここの土地の人は,洗練されたものを求める先取の気風があるように思います。
by Enrique (2015-05-19 06:07) 

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