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楽譜印刷に適した用紙の厚みは? [演奏技術]

いまどきの楽譜事情
楽譜は,オリジナルなものを購入して使いますが,最近ではIMSLPを始めとしてネットからダウンロードしたものを弾いてみる場合もかなりあります。ちょっと弾いてみるだけならば,iPadやパソコンの画面のままででもいけますが,きちんと練習しようと思いますと,どうしてもプリントアウトしたくなります(運指その他書きこみもしたくなります)。

プリントアウトしたものを使う際,そのままですとこれのハンドリングが何ともよろしくありません。通常のプリンタ用紙(コピー用紙)のものですと,ペナペナして譜面台から落としたり,ちょっとした風でめくれたりとか。そこで,真面目に取り組もうというものは,A3で両面ページ印刷しています。それも,通常の薄いプリンタ用紙で両面印刷をしますと,裏写りする上に,ぺなぺなでめくりにくいですから,たまたま厚めの古い紙があったためそれを使っていました。これがちょうど良い厚みでしたが,これが底をついたので,新たにプリンタ用紙を求めようと思っていますが,ちょうど良い厚みはどの程度でしょうか?

用紙の厚みについて
まず,身辺の紙の厚みを測ってみました。
身の回りの紙の厚さ
種類厚さ
研究社の辞書の紙 0.040mm(小型)
0.049mm(大型)
普通のコピー用紙 0.088mm
薄めのチラシ
(コンサート等のチラシ)
0.11mm
今まで使って来た古い紙0.115mm
厚めのチラシ 0.13mm
名刺 0.18~0.22mm
ハガキ 0.22mm

上から二種類は500枚ほどを物差しで測って割り算しました。それ以降は,1枚をマイクロメータで測りました。

0.09mmと0.1mmでも結構感触は変わるようです。ましてや0.09mmと0.11mmとでは全く違います。材料力学を学んだ方ならばピンとくると思いますが,曲げ剛さは厚みに対して3乗で効きますから,わずかの厚みの差がめくった時の感触に大きく効くのです。例えば,0.088mmと0.111mmとでは,曲げ剛さが2倍も異なるわけです。厚みが2倍になれば,曲げ剛さは8倍ですから,これは全く別物です。

「コシがあってめくりやすく,簡単に飛ばない」という,ちょうど良い楽譜の厚みというのは結構微妙なものです。0.115mm程度が良いとして,0.110mm~0.120mmくらいが良いとしても,厚み10%弱のレンジが曲げ剛さでは30パーセント強のレンジになってしまいます。ただ,いくらうるさい事を言っても,入手できなければしようがありませんので,市販の紙を調べてみます。

楽譜印刷に適した市販用紙の厚みは?
もともと紙の厚みというのは,紙厚で直接決められるのではなくて重さで決められているのだそうです。繊維の束などもそうですが,こういうthinなものというのは,一枚や一本のthicknessではなくて,決まったひと山あたりのweightでいくようです。この手のものは,ぎゅっとやると縮みますから,重量で決めるいというのは尤もな事でしょう。

余談ながら,その観点でいうと,ガスは体積で測られますが,綿を升で測っているようなもので,なにやら不合理です。それでも体積で測るというのならば,圧力がきちんと決められていないと測る意味がありません。以前ガス会社に確認したところ,その圧力は1.03気圧なのだそうで,それならばと納得したものでした。
 
用紙の連量と厚さの目安
連量 厚さの目安 用途など
55kg 0.08mm 一般的なコピー用紙より少し薄い。
ページ数の多い冊子の本文など。
70kg
73kg
中厚口
0.08~0.10mm 一般的なコピー用紙と同程度。
新聞折込等のチラシ,冊子の本文用紙等。
90kg
厚口
0.09~0.13mm チラシやフライヤー,カタログ等冊子の本文用紙。
一般的な折込チラシより少し厚。
105kg
110kg
特厚口
0.10~0.16mm ある程度のしっかりした厚み。
商品パンフレットや会社案内など。
130kg
135kg
0.13~0.19mm しっかりした厚み。
冊子の表紙やポスター,商品パンフレットなど。
150kg
180kg
0.21~0.26mm 郵便ハガキとほぼ同じ厚さ。
DMやポストカード,冊子の表紙など。
220kg 0.25mm ハガキより厚く,かなりしっかりとした厚さ。
ポストカード,ページ数の多い冊子の表紙など。

さて紙の場合,四六版(788mm×1091mm)の用紙1000枚の重量(連量)で紙厚の種類が決まるようです。右に印刷屋さんのページから転載した表を示します。連量は,用紙の厚さを知る目安であり,同じ連量でも用紙の種類によって厚さが異なります。例えば,コート紙90kgは厚さ約0.10mm,上質紙90kgは約0.13mmなどです。

楽譜用に用紙を購入するには,ここでいう,「厚口」の上質紙90kgが良いのではないかと思います。表紙用ならば,その次に厚い「特厚口」くらいでしょうか。
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アヨアン・イゴカー

>IMSLPを始めとしてネットからダウンロードしたものを弾いてみる場合
たまに利用します。そして、全く同じ問題に直面し、次回は厚紙に印刷しようと思ったまま、未購入です。

>曲げ剛さは厚みに対して3乗で効きます
こういう法則性があるのですね。勉強になります。

職場で「特厚口」を使うこともありましたが、これでもいいですし、厚口でもよいのかもしれません。試したことがないのでまだ分かりません。
by アヨアン・イゴカー (2015-01-31 15:57) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさん,ありがとうございます。
厚みだけでなく紙質にもよりますが,「特厚口」を楽譜部分に使うと結構ゴワゴワすると思います。ピース楽譜くらいのしっかりさを求めるならば良いのかもしれません。私は楽譜部分は厚さ0.11〜0.12mmくらいの厚口で良いかなと思っています。本文にも書きましたが,紙の厚みは0.01mmの差がすごく効きますね。
by Enrique (2015-01-31 18:27) 

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