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音楽をラジカセで聴く [雑感]


音楽をラジカセで聴くのは,安い楽器で音楽やるのと同じとの趣旨のページを見ました。「なるほど」と思う反面,全面的には賛同できない面もあります。ウチは主に音楽をラジカセで聴いているからです。それもかれこれ30年近く経とうかという代物です(V社の86年製)。台所に置いており,妻が家事中に聴くのと,食事中に聴く用途です。

生演奏とは違うという前提で聴いていますから,音が悪いのは折り込み済みです。「安い装置で聴いても音楽を深く理解している」などという気は毛頭ありません。だいたい,食事中生演奏を聴いたり,それに近いような高級オーディオで聴くと言うのは大変贅沢なことで,それが出来ないということです。そして楽器にお金をかけるか再生装置にお金(時間)をかけるかと言えば,当然前者だからです。

使用中のモノはFMラジオだけが生きていて,カセットはもちろん,CDもほぼ掛らない状態になっているので,更新を検討すべく,最近のそこそこの機械(C社の,元のより大きくて良い音がしそう)を借り来て,同じ場所に置いて試してみたのですが,これが全然ダメです。ポップスはずいぶん元気良く高音質で鳴るようですが,クラシックはまるでダメ。ギターもピアノもチェンバロの音も全然ダメで。リュートは元々のほわんとした音質のせいかそう悪い感じはしませんでしたが,ほぼ落第で,すぐお返ししました。

ラジカセといえども,ある程度は吟味する必要があるようです。
そういう意味では,「ラジカセではダメ」というのは,安い装置ではダメということなんでしょうが,正確に言えば,ポップス系を聴くことを前提にしている機械では,クラシック系の楽器を聴くと違和感があります。音が変で,和音の変わり具合とかがまるで分からないのですから,むしろ楽器以上に差があるかもしれません。

オーディオ機器を楽器的に捉えるのか,正確な電気-音響トランスジューサと捉えるのかというのは,永遠の課題だと思います。マニアの方々も沢山おられると思いますので詳細避けますが,高級オーディオの世界では,クラシック系とポピュラー系の機械の違いは歴然としていたと思います。少なくとも,スピーカーに関しては間違いなくあります。

音は,視覚などの他の知覚にもかなり大きく影響を受けるようです。
SP盤の音の方が良いという方も居るようです。それも一理あります。「音」の聴き方が各人かなり異なると言う事でしょう。セゴビアのSP時代の録音などでも歴史的な演奏としての価値は認めますが,正直素直には感動できません。一方真空管アンプの音が良いなんて単なるノスタルジアだという意見もありますが,デジタル時代の今こそ,むしろ聴きやすい音になると思っています。

音のどの部分,どの要素を聴いているのかによるのだろうと思います。
ラジカセにコントラバスの重低音やキラキラしたパーカッションやら透明なヴォーカルなど望んでいません。ギターやピアノの音がそれなりに違和感なく出ていれば十分と思っています。

芥川也寸志の「音楽の基礎」によれば,静寂こそ音楽の基礎と。作曲家は,気に入らない音を書いたら,消して静寂に戻してしまうと。へたな音(気に入らない音)なら,当然無い方が良いのです。

しかし,全くの無音状態でもまた精神に異常を来してしまう我々です。そういう,矛盾に満ちた身勝手な存在なので,安い楽器で音楽楽しんだって一向に構わないし,ラジカセで音を楽しんだって良いだろうと思うわけです。それに満足できるかどうかは,人それぞれで,そう一面的に切って捨てられない課題だと思うのです。優れた演奏家はまず例外なく良い楽器を使っていますが,その逆は必ずしも真ではありません。ましてや,それを再生装置にまで拡大して,さらには音楽の理解にまで言及出来るわけも無いのです。

新しい方のラジカセが全然ダメだと非難していた妻も,「先生こんな風に弾いてたんだ!」と,少しマシなオーディオ装置でチェンバロのCDを聴いた素直な感動を言っていました。

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てですこ

拝読して大型電器量販店のヘッドフォン売り場を思い出しました。某店ではヘッドフォンの試用ができます。自分のスマホやiPodなどを接続して普段聴いている音楽で試してみてください、という趣向です。リュートやアーチリュート、ビウエラなどのコンテンツを試している私はよほど変わり者ですが、高価なヘッドフォンもあまり真価がわかりませんでした。そもそももっと静かなところでなければ何もわからない気がします。ここで分かるのはポピュラー系の音楽に使用できるかどうか、だと思います。私が趣味の音楽を聴くということは、時代劇のロケのようなもので、邪魔なものがないところでしか無理のようです。とはいえ、普段は心頭を滅却して安物オーディオで、脳内補完をしています。
by てですこ (2014-05-02 11:57) 

Enrique

てですこさん、コメントありがとうございます。
いい装置を聞いてしまうと、やはりそれは欲しくはなるのですが、楽器をやる人間にとっては、楽器は一生もの、オーディオ装置は一時のものという感覚があり、安いもので我慢してしまうとところがあります。オーディオ装置に凝る方とは反対に、そちらにお金と時間を書けるよりも、楽器の方にリソースを振り分けたいと思うのだと思います。
私が見たページのオーディオ氏は、オーディオ装置=楽器、良い楽器を選ぶ=良い演奏家、良いオーディオ装置を選ぶ=良い演奏家といった論理を展開されていたようなので、一つ目くらいは納得できますが、二つ目以降は、そうかなー?と思った次第です。そして「音を想像で補う人は押し付け系の演奏家だと?」ちょっと待ってよと思った次第です。それぞれ立場はあるのでしょうけども。
総じて、安くても古い装置のほうが聞ける感じではあります。
かようにオーディオは難しいので、メンドウなことにタッチしたくないというのもありますね。
by Enrique (2014-05-02 14:30) 

アヨアン・イゴカー

ラジカセで聴くか、より大きな空間でステレオで聴くか、或いはヘッドフォンで聴くか。生演奏以外にはいくつかの楽しみ方がありますが、私の場合は、ヘッドフォンは耳に圧力が掛かるので苦手で、全く使用しません。それ以外は、まずは聴ければよしとしています。音質が悪くとも、まず音楽そのものを聴きます。私は、兎に角聴くことができればよい、そんな考えなのかもしれません。
私の母などは、若い頃から音楽に飢えていましたが、よい音響機器はなく、蓄音機、有線放送、真空管のラジオ、トランジスタラジオ。数十年前には夜などは、兄の作ったゲルマニウムラジオをイアフォンで聴く、そのようなこともしていました。今でも母はラジカセが好きです。
by アヨアン・イゴカー (2014-05-04 22:39) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさん、nice&コメントありがとうございます。
手軽に高音質で楽しめるのはヘッドホンやイヤホンですが、ヘッドホンだと耳が圧迫されて不快と言うのはあります。
音質はよければよいに越したことはありませんが、悪いと音楽やるのに本質的な影響があるとも思えません。
私もゲルマニウムラジオは良く作りました。普通は高感度なクリスタルイヤホンで聞くのですが、ゲルマニウムダイオードを二つ使った倍電圧検波と言う方法でマグネチックスピーカーをずっと鳴らしっぱなしにしていた時期がありました。AMラジオの小さな音でしたが夜聴いていると随分澄んだ音質だった記憶があります。
現在音楽媒体はいろいろありますが、ラジカセは最も重宝しています。アヨアンさんのお母様に大変シンパシーを感じます。
by Enrique (2014-05-05 05:27) 

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