息子に楽典を教える(5) [音楽理論]
高校生の息子に教え出した楽典のつづきで,5回目です。
基本和音に加え,4つ目の音を加えたセブンスの和音の話をしましたが,今回はその他の音,いわゆるテンション・ノートを加えた和音などについて概要を述べます。
前回,基本のトライアド(3つ団子)に四つ目の音を付加して,テトラード(4つ団子)にする際,7の音を加える話をした。このセブンス・コードと言うのはドミナント専用コード(すなわちCのキーならばG7)として,主要三和音の一角をしめて広く使われる話をした。
今回は,更に音を加えた和音の話。Cについて書くが,すべてのルート音のコードに共通であることは前回同様。
和音の歴史は拡大の歴史。人間の欲望はとどまるところを知らない。
セブンスの次は何?
そう,ナインス(エイスではない)。オクターブがエイスだから,ナインスってオクターブ+全音。Cがルート音だと,D。
インチキ式*だけども,以下のような式で。
C9 = C + E + G + B♭ + D
B♭を加えた時点ですでに,Cのキーとはおさらばしていたが,これは更に拡張した響きだ。C7は,
C7 = C + E + G + B♭
だったので,
C9 = C7 + D
と言える。それに対して,Cadd9というのがあって,これは,B♭が無くてCコードに直接ナインスを加えたもの。すなわち,
Cadd9 = C + E + G + D
ナインスがあれば,イレブンスやサーティーンスもある。
このように,どんどん積み重ねていく系と,加える音を変えた系がある。
4つめに加える音を変えたものに,シックスのコードがある。上のインチキ式で書くと,
C6 = C + E + G + A
どっちを先にか迷ったのだけども,メジャーセブンスというものがある。
CM7 = C + E + G + B
普通のセブンスのB♭の代わりに,普通のBを加えたやつ。ちょっぴりおしゃれな響きで,結構つかうのでは。これはC7とは似て非なるもので,Cの代わりに使える。
さらに,紛らわしいものに,
Cm7 = C + E♭ + G + B♭
これは全然別物。トライアドのマイナーコードに,セブンス音を加えたもので,セブンスコードのマイナーコードバージョン。ハーモニックマイナーのスケール上ではC7ということになるはずだったが,これはナチュラルマイナー上で出来るコードということになるだろう。同様にマイナーのトライアドコードにも,ナインスやイレブンス,シックスなどの付加音を加えたものがそれぞれある。
ちょっと紛らわしいものに,マイナーメジャーセブンス。
CmM7 = C + E♭ + G + B
この辺が,「コードは難しい」ということになるのだろうが,ルールを知って整理して理解すればコードの構成音に関しては難しくない。上の2つは,Cmのコードに付加音を加えたものだ。むしろ,どんなところで使うかケーススタディしたほうが良いだろう。「あっ,こういう響き聞いたことあるぞ」となれば良い。もう一回やるのは面倒になって来たから,これ以外のものもざっと触れておく。基本は同じ。
ここまで見てきた,メージャーコードとそれに付加音を加えたコード,マイナーコードとそれに付加音を加えたコードに加え,オーギュメントコード(増和音),ディミニッシュコード(減和音)というトライアドと,それらに付加音を加えたコードも存在する。
オーギュメントCaugはメジャーコードの団子3つのフィフスの音を半音上げたもの。「スーパーメジャー」とでもいうもの。
Caug = C + E + G#
ディミニッシュCdimはマイナーコードのフィフスを半音下げたもの。まあ,「スーパーマイナー」とでもいうものだ。
Cdim = C + E♭ + G♭
あと,トライアドのサード音をフォースにした,sus4と言うものも,結構お目にかかる。Cに行くのをこれでじらす感じだ。
Csus4 = C + F + G
あと,時々出てくるもので,
Cm7-5 = C + E♭ + G♭ + B♭
なんてのもある。これは,Cdim7と同じかと思いきや,違う。こちらは,
Cdim7 = C + E♭ + G♭ + A
ディミニシュ・コードでは,音間隔をマイナーより更に縮めているので,4つめの音はマイナーセブンス(短七)でなくて,ディミニシュセブンス(減七)で,この場合A音だ。この辺はちょっとややこしいところだろう。
こんなところで,ポピュラー楽曲に出てくるコードは大体網羅したかな。以前触れたように,ハーモニーを支えるコードはどんどん拡大されて来たから,変わったものも入れると沢山ある。しかし,何事も基本を押さえておくのが大事。主要三和音だけでも結構いける。
ここまで,インチキ式で表したので,五線譜で書いた方が良いだろう。やはり五線譜は,一目でぱっと音を把握できるように工夫された合理的なものだ。和音とか扱う場合は,音の数が多くなるから,譜面に強くなっておくのが有利だろう。
コードは特殊なものを含めると少し多いが,整理して考え方を知ればさして怖くもないだろう。プレーヤーはコードネームをブラックボックス化して奏法を覚えて弾こうというのでも良い(おそらくコードネームの発明はそういう目的だろう)が,一度くらいは確認しておいてもいいだろう。
基本は一段目と二段目に示したメジャー系とマイナー系だ。基本のCおよびCmのトライアドに,追加された音が乗っかっていくのが分かるだろう。
それに三段目に示したオーギュメント系とディミニシュ系がある。最後にCsus4(掛留四度)を示した。これらの種類のトライアドにも,基本的にはメジャー系とマイナー系同様に付加音が乗っかっていく。
メジャー系とマイナー系はルート音に応じて12種類ずつあるが,オーギュメント系,ディミニシュ系は4種類づつしかない。これは5度圏で確認すると分かるが,ルート音を変えても転回すると同じコードになってしまうセットが発生するからだ。
重要なのは,どんなコードでもその機能を知ることだ。どのコードでも一応T,D,SDいずれかの働きがあるので,それを掴むこと。また,音楽のジャンルによっても良く使われるコードが変わるようだから,好きな分野のものから勉強すればいいだろう(つづく)。
*インチキな理由は,音とコードネームの判別がしにくいから。ここでは数字などがついているものをコード,記号のみのものを音としている。
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