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フレットのどの辺を押さえるのがよいか [演奏技術]


ものすごく,基本的なテーマです。

先日の記事で,弦を押さえるのは意外と低荷重で良いということが分かりましたが,その小さな数値に半信半疑の方もおられると思います。あの計算は,フレットの直上を押さえて,弦がフレットに触れる時の荷重を求めていますから,まあ理論的最低荷重とでも言えましょうか。現実問題として,フレット直上を押さえて弾くと,かのYepesが得意だったファゴット奏法,一種のミュート音になってしまいます。普通に弾くには指頭が弦にかぶらない程度にナット側にずらさないといけません。
すなわち,フレット内のどのへんの位置を押さえるのが理にかなっているかという問題です。下図で示す,低フレット側への指の最適なずらし量xは如何に?ということです。なお,この図は分かりやすいようにデフォルメして描いていますが,実際はこんなに弦を押し込まなくても十分です。押弦位置がフレットの真ん中よりもナット側では,力が要るばかりで,弦のフレット巻き込み角がつかなくなるのが図形的にもわかると思います。
Neck.png

先日の押弦力の計算は楽器全体の弦長でのものでしたが,今度は弦がフレットの頂上に着いてから指板上に押し込まれると考えます。考え方は同じですから,押弦力は真ん中が最もラクということになります。しかし,ビレにくさというのは,フレットに当たってからの弦の押し込み量dではなくて,フレットを巻き込んだ弦の角度θだといえます。この観点で考察すると,フレットの真ん中が良いということにはなりません。

考え方は先日と同じで,先日の弦長Lが今回新たにフレット間隔になります。ただし,今度は押し込み量dでなくて,フレット巻き込み角θが同じならば,どの位置が最も押弦力が小さくて済むか?ということです。

ずばり言うと,やはりフレット直上すなわちx=0です。ここをかたいもので押さえれば,ほぼ先日算出した押弦力でいけます。ただし,柔らかい指頭で押さえると上で触れた様に,一種のミュート奏法になりますから,かぶらないギリギリのところが最も押弦力を必要としない事になります。

プラスアルファの力の絶対値は,どれだけ弦に角度を付けるかによって変わり,どれだけの角度を付けるとビレ無いか?というのは,弾く強さによっても変わるので,絶対値は出せません。

しかし,相対値は算出出来て,フレットの真ん中(x/L=1/2)ではギリギリ部分を押さえる場合の2倍の,フレットの反対側のナット寄り(x/L=3/4)では,4倍のプラスアルファ力が必要になります。

押弦のラクさから言えば,フレット直上ギリギリを押さえるのが基本だと思います。しかし,運指の関係でフレットのナット側寄りを弾かなければならない場合はプラスアルファの力が多く必要になります。

なお,フレット直上ギリギリではヴィブラートをは余り掛からないので,かける場合は,押弦はフレットの真ん中よりが良いと思われます。そうすると,プラスアルファの力が余分に要りますので,初心ではヴィブラートを掛けないのは,余分な力を入れない意味から合理的です。

当たり前の結論ですが,
・左手の押さえ位置がフレットぎりぎりならば,先日算出した程度の軽い押さえで良い
・押弦位置がフレット直上からナット側に移るにつれ,大きなプラスアルファの力が必要になる
・ヴィブラートを掛けるには,フレット真ん中よりが良い。ただしプラスアルファの力は2倍位必要
・押さえ位置がフレット直上からナット側にずれるに従い,押弦のプラスアルファの力は増える。特に真ん中からナット寄りになると急激に増える

と言う事が言えます。以上の事はある程度の経験者ならば体感的に体得している事だとは思いますが。
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