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フレッティングの考え方(10) [音律]

古典音律によるフレッティングの具体例を示してきましたが,このシリーズもいよいよ大詰めになってまいりました。前々回,前回と純正音律に近いキルンベルガーIを取り上げましたが,今回は純正律の中の純正律,オイラー律を取り上げます。以下に弦長表を示します。以前示した音程表の分数比率をひっくり返しただけで非常にシンプルなことが分かります。

オイラー音律(C基準)の弦長表
音名
弦長比率
数値
C
= 1
= 1
C#
= 15/16
= 0.9375
D-
= 9/10
= 0.9
D
= 8/9
= 0.888888888888889
E♭
= 5/6
= 0.833333333333333
E
= 4/5
= 0.8
F
= 3/4
= 0.75
F#
= 32/45
= 0.711111111111111
G
= 45/64
= 0.703125
G
= 2/3
= 0.666666666666667
A
= 5/8
= 0.625
A
= 3/5
= 0.6
B
= 9/16
= 0.5625
B+
= 5/9
= 0.555555555555556
B
= 8/15
= 0.533333333333333
c
= 1/2
= 0.5

この音律はあまり五度圏と相性良く無さそうですが,無理に描くと以下の様になります(以前も描きましたが少し描き換えました)。全く左右対称になっています。またこれによるフレッティングも示します。
Microsoft Word - Colored五度圏・EulerC.png
FretMacroEulerC.png

音程比率がシンプルな一方,フレッティングのほうはやや複雑になっています。
オイラー律でも開放弦同士のウルフ問題が生じます。

この例では4弦D開放音を低い方(D-と表記)を使っていますので,5A・4Dの開放弦間は純正音程ですが,4D・3Gの開放弦間はシントニックコンマ分広い事になります。そのため例えばオープンコードのGコードは4D弦のナット近傍に発生する0+フレット(とでも言いましょうか)を押さえないといけません。仮にオープンコードは使わないにしても,クラシカル奏法ではベース音として開放弦が使えないと苦しいので,少なくとも低音弦6E, 5A, 4Dにエンハーモニック音程音(シントニックコンマ程度異なった音のペア)が来ない様にする必要があります。

そのためには,このC基準(D音にエンハーモニック音程音),次のG基準(A音にエンハーモニック音程音),さらに次のD基準(E音にエンハーモニック音程音)はダメで,やはりA基準からOKなことが分かります。以下にA基準のフレッティングを示します。
FretMacroEulerA.png

A基準では,低音弦6E, 5A, 4Dの開放弦はそのまま使えることになります。ただしその代わりに3Gと2Bにそれぞれ0+フレットを発生します。Emなどのオープンコードに制約が出るはずです。

オイラーではA基準でも開放弦間のウルフ問題は避けられません。ダブルフレットで2弦間のウルフは適宜避ける事は出来ますが,3弦間以上となるとなかなか複雑です(分割鍵盤でも同じ様なことが言えるのでしょうが)。この辺はやって見て実際の楽曲上でどうなるか試す方が早そうです。

えーいメンドウだ!とたどり着くのが,ちょうど最小刻みがシントニックコンマ前後になる53平均律です。この音律で刻んだフレットが,以下のものです。
53ET.png

これは12平均律と違って,主要音程がいずれも純正に近くなる音律です。オイラー純正律で発生するシントニックコンマ程度のキザミをほぼ忠実に再現しており,オールマイティなフレッティングと言えます。細かいフレッティングが弾けるかどうかやって見ないと分からないですが,フレットレスだと思えば案外平気かも?しれません(つづく)。
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