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タンスマンのカヴァティーナ組曲/スケルツィーノ(録音) [演奏]

久々のページ更新,久々の録音です。

タンスマンの「カヴァティーナ組曲」に取り組んでみて,これは難しい曲ですが,後半に行くにつれ,技術的には楽になって来る様な印象です。

さて,第三曲「スケルツィーノ」ですが,ナカナカ特徴的な曲です。

トレモロで始まる,メロディは単純ですが,後半神経質に上下します。ここはラに#がついた独特な旋法です。続く古風なフレーズ,ここは,ファに#がついていますが,ト長調というよりも,リディア旋法(Cリディアン)だと思われます。それを確かめるか様に旋律が音階的に降りて来ます。古典的な旋法であるためか,ここはなにか故郷に戻った様な感じがします。

続く経過句のような部分は6音の旋法を用いています。古典的な旋法やふつうの長短音階とは異なりオクターブで音の数が1つ少なくなっています。前半四小節と後半四小節とでは,同じパターンの6音の旋法を用いていますが,調性的な言い方で言えば調が異なります。この旋法に名前がついているのかどうか知りませんが,かりにこの旋法を「タンスマン旋法(タンスマニアン)」とでも名付ければ,前半4小節分はEタンスマニアン,後半4小節分はAタンスマニアンです。以下の1小節目と2小節目にそれぞれ示します。下の数字は音間の半音の数を示します。

Tansmanean.png
それらを同じ出発音Eに並べ直した下記の音の並びを前半と後半とで切り替えて,転調的な効果を出しています。ちなみ音間が全て2になっている6音音階ではこのような効果は出ませんが,この旋法では音間がイビツになっているため,ハゲシく効果があがります。
Tansmanean2.png

しかしそう考えると,元の譜面の前半[A]の四小節と後半[B]の四小節とで対応がずれている部分があります(下図の[A]からと[B]から)。この楽譜の通り弾いている演奏が多いですが,前半[A]の3小節目は明らかにおかしいです。原善伸先生は,前半[A]四小節内と後半[B]の四小節内で繰り返し箇所がズレているためそれらの箇所が取り消すべき小節であったとして,前半[A]の3小節目と後半[B]の4小節目をカットして演奏されています。

私は前半[A]の3小節目のみが間違いだと考え,後半[B]の四小節分から前半部分を上で見た旋法のルールで復元しました。復元箇所を小音符で示します。結果としては前半の3小節目とつづく4小節目の第1音のみの変更です。
ScherzinoSmall.png


つづくフレーズも特徴的なものです。#2つなので二長調と言ってもDイオニアンと言っても良いものでしょう。続いてさまざまな調性的色合いを変える経過的フレーズが続きます。以上を2回リピートした後,ミのオルゲルプンクトに乗った総奏のコーダがつきます。

この曲は,部分部分がパッチワークの様に組み合わされていますが,いずれもしっくり収まっていて違和感がありません。私の演奏はさておき,さすがの名曲だといえるでしょう。

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アヨアン・イゴカー

良い曲ですね。誠実な演奏、そんな印象です。
キリスト教、それもカトリックの建物、風景に合う曲ですね。タンスマンが旧教徒なのか新教徒か知りませんが、そう感じます。
by アヨアン・イゴカー (2013-03-10 22:42) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさん,nice&コメント有り難うございます。
もう少し「けたたましい」感じのほうが曲のイメージかもしれませんが,こんな風にしか弾けませんでしたが,お褒めいただき恐縮です。
タンスマンはユダヤ人でしたので,おそらくユダヤ教徒だろうと思います。ユダヤ人でポーランド出身,フランスに渡ってフランス語を話した。そんな人でした。前回のとは異なった写真を入れて見ましたが,教会の写真が多かったですね,思いのほか合うかんじでしたでしょうか。

by Enrique (2013-03-10 23:40) 

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