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弦振動に関するコメント [音楽理論]

「アメリカで開始したクラシックギター」で,右手タッチに関する指摘があった。
私はクラシックギターに関しては教わる身分なのであるが,少しこんがらがった議論になっていると思われるので,弦振動の単純な動画などを公開した責任もあり,コメントしておく。

「アメリカで開始したクラシックギター」の方が指摘している点:
横振動(弦振動が表面板に平行)がよいと言うのは明らかに間違い。
確かにピアノでもチェンバロでも,張られた弦を響板に垂直に振動させている。

プロの方が指摘している点:
多分初心者が弦を引っ掻き上げて指板に衝突させる,いわゆるバルトーク・ピチカート状態になることを縦振動(その方はアルアイレ)の弊害とし,アポヤンド(その方は横振動主体と解釈)はそれがない,と。

アポアンド=横振動=音が良い
アルアイレ=縦振動=音が悪い(ただし,押し込みは例外)

と主張しておられるように見受けられる。ただ,アルアイレ・アポヤンドで縦・横どちらの振動でも可能とも言っておられるので,要は適宜使い分ければよいということだろうが,確かに分かりにくい。「アルアイレ・アポヤンドで縦・横振動どちらでも可能」,「楽器によっても異なる」という領域に入ると,論理的な議論は出来なくなる。

話を単純化すれば,表面板に対して弦の縦・横振動のどちらが良いかということになる。
横が良いという主張には,バイオリンなどの弦楽器からの類推があるのかもしれない。
弓で弾くこれらの楽器は横振動主体である。だから,ギターもそうだという主張になるのかもしれない。あえて想像を働かせば,

弦楽器=音楽的に良い=ギターもそうあるべき
鍵盤楽器=つまらない=ギターがそうではいけない

という発想があるのではないか。ギターは事実弦楽器であり,ビブラートやポルタメントが掛かる。それらの美点を存分に生かして演奏するのは,良いことだとは思うが,それと発音原理を混同してはならない。バイオリンなどは,駒が高く,「猫足」で弦の横振動を表面板の縦振動に変換している。だから,表面板の振動は中心軸が節になるような振動である。ギターは駒が低く横振動が縦振動に変換される要素が少ない。表面板の基本モードは太鼓の皮の振動と同じである。このことは現在では基本事項である。しかし,弦の横振動が表面板の縦振動に変換される要素が全くないわけでないところから,このような解釈(あるいは誤解)も生むのかも知れない。

話がやや複雑になるが,ピアノなどでは,主な音は弦の縦振動であるが,アタック音には弦の伸縮振動が,余韻にはエネルギー散逸の少ない弦の横振動が効くと言われている。また,ギターの弦の端末処理にスーパーチップが効くのは,弦の振動が縦横どちらであれ表面板を垂直に揺さぶるように作用する為であろう。これはレイズドフィンガーボードで表面板が弦に対して斜めになる効果と同じと思われる。しかしこれらの話はいずれも副次的な要素である。主体的に効く要素と副次的に効く要素のとらえ方が異なると,話がかみ合わなくなる。さらに「気持ち」の要素が入るとなおさらである。基本的な理解は共有すべきであろう。
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