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私の練習の仕方~難所のクリア~ [演奏技術]

弾いにくい場所がない曲ならすぐに仕上がるわけですが,どんな曲でも一か所は二か所は難所があるのが普通です。

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独学の学生時代などは,名曲の「さわり」だけを弾いてカッコつけたりしていました。例えば「禁じられた遊び」の冒頭6小節まではメロディの①弦以外は全部開放弦で行けるので,全くの初心者でも「結構いけるのではないか?!」とカン違いしますが,あっという間に引っかかります(この曲の罪なところです)。むろん,もっと易しい曲から段階を踏むことと,セーハの技術のマスターが必須です。これ自体も元は練習曲のようですから,これが「きちん」と弾ければ,同レベルの他の曲の演奏にも自ずと役立ちます。いわば,初心者にとっては「難所」であっても,きちんと基礎練習を積めば通常モードで演奏できるわけです。

一方,ギターを弾けない作曲家の手による近現代曲などは,古典的な練習曲の範疇から外れた難所だらけと言っても良いでしょう。シンプルな楽曲であっても,上級曲になります。経験者でも譜読みは初心者状態になってしまいます。

ピアノはディアトニック,もしくはクロマティックに鍵盤が並んでいるので,音階や半音階は得意です。一方複雑な和音をつかむのは結構中上級でしょう。それに対してギターは正反対。四度間隔で張ってあるので,ちょっとした押さえのバリエーションで和音がラクに弾けるので,ギター特有の伴奏専用のコード奏法というのもそこから出てくるわけですが,スケールやメロディ弾きの方が却って面倒という事になります。

要するに,ピアノで楽なことがギターでは難しく,ギターで楽なことが,案外鍵盤では難しいという事になります。そのため,鍵盤のみでギターを知らない作曲家の場合,非常に難しい押さえとバカみたいに易しいところとが隣り合わせという事が起こります。そこを苦もなくラクに弾けるようにしないといけないわけですが。

難所のクリア方法としては,
①運指の検討:非常に上手い運指が見つかって,すんなり行ける事もあります。これが一番良いと思いますが,そうとばかりとは行きません。

②分解練習:運指を検討しても弾きにくいが,運動機能的に無理ではない場合。バラシて練習します。下声のみ,上声のみ,内声のみといったようにです。和声間の分解です。鍵盤では片手練習というのもある程度効果的と思われますが,ギターの場合運指の問題があります。バラして楽な運指で弾いたのでは技術練習になりません。譜読みで各声部の音を覚えるためにはやりますが,技術練習としては極力合体した(普通の演奏の)運指でやります。各声部を独立に歌わせる(ギターでは非常に難しいことです)練習の際も,なるべく完成形の運指は変えずに,各声部の音の強さをコントロールできたら成功です。

③リズム・バリエーション:連打だったら回数を減らしてから徐々に増やしていくとか,わざと付点で弾いてみるとか,スタッカートで弾いてみるなど,いわば時間の分解です。もちろん,ゆっくり練習というのは下限なくやります。むろん難所のみです。

④運指の検討に含まれると思いますが,予め押さえておくという手も時々使います。これでキツイ押さえが何でも無くラクーになればしめたものです。しかしこれも,「何気なく」出来て成功です。如何にも「予め押さえていますよー」という風情は無粋です。

工夫をして難所を自然な流れに持っていくわけですが,「如何にもやってまーす」ではなくて,何気なく自然に行けなければいけません。上手い人というのは,ぱっと弾けている風情ですが,実は練習時のさまざまな工夫を感じさせないのが上手いのだと思います。

なにぶん,おめでたいシロートさんは,その辺の苦労が分かりませんから,「有名プロの方が弾いているあの曲が弾きたーい」と先生の元を訪れます。当然心ある先生は,基礎からの積み上げの練習に入ります。初心者が,有名プロが弾くかっこいい曲を1年や2年で弾けるわけもなく,そういう「曲」を弾ける音楽技術を教えるわけですが,その「曲」を教えてくれないなら「もう止める!」と,大変残念な結末になります。

何十年やってそれなりに基礎をやっているつもりでも,中々上手く弾けない曲は沢山あります。基礎練習を積むことはもちろんですが,難所のクリア方法の引き出しをどれだけ持っているか?が経験です。むろんタコの足の様に独立自在に動く様なスーパーハンドを持っている方なら別でしょうが。
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はなこ

なんでもないようなところで苦戦して、ここだけクリアしたらかなり良い仕上がりが期待できるのに?、などといつも頭を悩ませています

運転中にはいろいろな曲を聴いていて、果たして実現するかどうかわかりませんけど、弾いてみたい曲はどんどん増えていくものの、目の前の課題曲は遅々として進まず[泣き顔]

スーパーハンドのかけらでも良いので欲しいと思います
by はなこ (2023-06-15 13:20) 

Enrique

はなこさん,
弾きたい曲が沢山あるのは大変結構なのですが,曲たちは逃げて行きませんから,焦る必要はないと思います。
むしろ一部分の難所のクリアにほとんどの時間と努力を要する事もあります。当方は独学時代に難所をよく弾けないまま何となく弾いた様な曲は不良資産になってしまっています。引っ張り出すと悪いクセと共に思い出されますので,封印しています。はっきりいってマイナスな練習でした。
難所をスムーズにクリアする技術(の引き出し)を身につければ,曲はあっという間に仕上がる事になります。
by Enrique (2023-06-16 12:17) 

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