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個々の曲を習うだけのレッスンにならないために [演奏技術]

個別の曲の弾き方を習うというだけのレッスンはマズイ。ということをしつこく書いていますが,そうならないためには音楽の基礎知識もかなり重要でしょう。

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楽典始めとして音楽理論や音楽の歴史。
これらを無視すると,やはり「個別曲の弾き方を習う」というレッスンにから抜け出せないのではないかと思います。

生徒は最低限の知識は持つべきでしょうし,指導者への要望としては,なるべく音楽の標準的な用語や表現を用いて教えるべきで,独特な言い回しや普遍性のない表現は避けるべきです。生徒が標準的な用語を知らなければ,それを教えたり勉強を促すべきでしょう。

しかし,それを指摘したら,「学校の音楽なんて一番嫌いだったのに,なんでギターを習うのに楽典や和声の勉強をしなければならないの?」と答える生徒なら,指導者もやむなく,その生徒なりの教え方にならざるを得ないでしょう。良い生徒,もっと言ってしまえば,良い消費者になる事が能率の上がるレッスンには肝要なことです。


教師だって人間です。まず基本姿勢としては信頼関係を結ぶ事です。当日に休んで替わりのレッスンを要求するなど論外としても,まずは社会人としての良識に基づいた行動をとるべきで,未成年者だったら親の責任でしょう。

レッスンの内容に関しても,生徒が教師の指摘を真摯に受け止めて学ぶ姿勢であれば,どんどん効果の上がる教え方をするでしょうが,いくら指摘しても聞く耳を持たない人ならば,その生徒に合わせた付き合いにならざるを得ないでしょう。教師だって不毛なストレスを溜める行為はしたくありませんから。


表現に関してはいろんな例えがあるでしょうから,独特な表現になるのも止むを得ないにしても,音楽の標準的な用語や表現で言えるところまで,独特な表現をしていては進歩がありません。

例えば「楽譜を鵜呑みにしてはイカン」という事で,速度指定やアーティキュレーションを当たり前の様に無視するのも,独善にはまります。むろん,音楽は五線譜のみで表現しきれるものでもないですし,楽譜の間違いもあるかもしれませんから,「楽譜の鵜呑みはイカン」というのは一般論としては正しいですが,楽譜に明示してある事まで無視して,「ここはこう弾くのだ」と言うレッスンでは,むしろ真面目な生徒は言われるがままにするしか仕方がありません。そうすると,どうしても弾き方を曲ごとに個別に教わるという,普遍性のないレッスンにならざるを得ないのではないでしょうか。


むろんそうならないためには,生徒の側が,楽譜の読み方,和声,時代ごとの様式の理解などがないと,難しいものがあるでしょう。「小難しいことは音楽には関係ない。好きでやっているのに文句あるか!」と。その割には,関係なさそうな事を熱心に調べたりもされます。周辺知識も無いよりはあった方が良いでしょうが,まずは音楽の基礎知識が無いと,いくら難しい曲を弾いていても締まりません。

例えば,ギターで弾くバッハは独特な美しさがあり人気です。当方も独学初期に憧れましたが,あまりの難しさに挫折してピアノに走っていたことがあります。むろん,技術さえあれば(無くても)しつこく練習すれば弾くだけは弾けますが,拍子感すらない音を並べただけの演奏になりがちです。音楽の構造そのものが古典派以降の「伴奏とメロディ」ではないポリフォニーですし,和声論ではなく対位法です。むろん音大レベルの勉強をしなくても,鍵盤ならバッハの曲を沢山やることで,様式を実際的に身につけることは可能ですが,残念ながらギターで弾く場合はそうは行きません。初中級者でさっと弾けるようなものは量がないからです。そこは知識で補うしかないのです。

別にバッハ(後期バロック)に限ったことではなく,古典派なら古典派の,ロマン派ならロマン派の,近現代なら近現代の独特な様式があります。それを知るだけでも,特定の有名偏愛曲を手取り足取り習うという習慣から抜け出せるのではないでしょうか。


個々人の演奏という行為が,「曲をどの様に表現したいか」に尽きるとしても,音楽の基礎知識が無くては,指導者から個別曲を手取り足取り教わるしかなさそうです。ポップス系のレッスンではそうらしいのですが,クラシックギターのレッスンでもそういう方もいらっしゃるようです。むろん,どういうレッスンを受けようが個人の勝手ですし,個人で楽しむ分に何の問題もありません。どんどんやれば良いと思います。演奏をネットに上げるにしても,興味ある人が聴けば良いだけの事でしょう。

心ある指導者の方は,効率の良いレッスンの受け方を指摘しているわけですが,やはりそうでない方々もいらっしゃるということなのでしょう。当方も,自らの立場も顧みず,敢えて憎まれ口を叩いています。ギターでなるべく真っ当な音楽を楽しんでもらいたいという願いということです。むしろ,アマチュアですから営業に関係なく好きなことを言っているわけですが。
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