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スタッカートの扱い [演奏技術]

奏法スラーに関して触れましたので,安易に使われやすいスタッカートに関してです。

ギターでは,指定が無くてもスタッカート奏法が使われるキライがあります。
むろんスタカートの指定の音をスタッカートにするのは当然な事ですが,そうでない音にまで独自の解釈で付けることもある様です。かくいう当方も以前の指導者からソルのOp.6-6の三度の連続はスタッカートで弾くのだと教わりました。確かにレガートで弾くのはかなり難しいので,スタッカートにしてしまえばラクですが,テヌート気味に弾く部分もアリなのでした。根拠不明???な因習だと思いますが,その理由としては,やはりセゴビアの影響が大きいのでしょう。大家は指定のないスタッカートで弾くなど朝飯前でした。

          Sorの練習曲 Op.6-6 冒頭
ギターはレガートに弾くことが非常に難しい楽器です。モダンギターはそこそこ音は伸びます。弦が跨がれば超レガートに音を重ねることもできますが,同一弦ではどうしても音と音の間に隙間が生じてしまいます。それでは不統一になってしまうので,スタッカートに揃えてしまうと言うのも一つの見識でしょう。スタッカートにした方が却ってつながって聞こえると言う逆説もあります。

しかし,ぷつぷつと音が切れる事は事実です。
ギターの真の音というのは案外知られていません。電子合成の「ギターの音」というのはろくな音ではありません。この程度の音と認識されているのか?と愕然とします。まるでギター奏法のピチカート(ミュート奏法)の様な音です。

ギターでは様々な音色が出ますから,「これがギターの音」というのは案外分かりにくいのです。だから大家が弾いたら,どんな奏法であれ,それがギターの音であり,華麗な音色変化なわけです。モダンギターを知り尽くした人の表現だから,それに従うというのも一つの行き方でしょうが,現在ではMarcin Dyllaの様な演奏家も現れ,ものすごくレガートに弾くという事も可能な時代です。理由が曖昧なままにスタッカートで弾くというのは賛成できません。

もっとも,ギターの譜面では音楽的な指示が少ないという原因も挙げられます。近現代のギター奏法に詳しく無い作曲家の場合,アーティキュレーションの指定などは難しいでしょう。


古典のギタリスト作品であるカルカッシのOp.60の1番のスケール練習曲には,冒頭に"stacc."と指示がありますので,当方最初見たときはなるべく切って演奏していました。佐藤弘和は,氏の校閲版の楽譜ではその扱いに関して,「レガート(スラー的奏法)ではないというくらいの意味だろう」としています。当方が先についた先生にこれについて質問したところ,「普通に弾けばスタッカート的になってしまいます。」という返答でした。当方の現在の考え方では,レガート奏法が難しいギターで「敢えて超レガートに弾く必要もない」くらいの事だろうと思います。むろん練習曲では,レガートにもスタッカートにも弾けるようにしておくのも大事とは思います。


擦弦楽器では弓奏とピチカートでは大幅な音の違いがありますが,それに比べ,ギターのピチカート(ミュート奏法)は普通に弾くのと大差無いと見做されるようです。「ギターはみなピチカートだろう」と。ギターではプツプツの音のピチカートですらそうなのだから,ギターでのレガートとスタッカートでも,一般音楽愛好者には然程大きな差ではないのかもしれません。いわば,楽器によりレガートとスタッカートの程度もかなり認識が異なると言う事でしょう。とはいえ,スタッカートの指示のないものまでスタッカートにするというのは,合理性を欠くとしか言いようがありません。前回の奏法スラーに関する取扱い同様,「むやみにスタッカートにしない」というのも,現代の良識的な演奏の心がけでしょう。
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