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糸巻き交換に関してのTips [楽器音響]

ナットの作成・交換について書きましたが,他に行う整備として,糸巻き交換があります。

そう難しいものでもないので,ご自分でやる方も多いのではないかと思います。
以前にも書いたので,一般的な注意事項と最近気がついた事を書いてみたいと思います。

ローラー軸間隔は35mmのものが標準ですが,まれに36mmとか39mmのものがあります。
当方の所有する楽器ではOribeが39mmです。製品ラインナップは少ないので,選択が制約されます。まず交換する楽器のローラー軸間隔(穴間隔)を確かめる事が重要です*。

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プラスネジの中級品。
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これはマイナスネジ。
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今はなきスペインの伝統Fustero。むろん?マイナスネジ。
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古いYAMAHAについている普及品。
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アメリカの高級品Sloane。
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ドイツの高級品Reischel。
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Oribeは軸間39mmでした。糸巻きは日本のGotoh。
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ちなみにVelasquezのReischelは軸間36mm。Hauserなどもその様です。
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国産楽器についたGotoh。軸間何と40mmでした。
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松岡良治についた多分Gotoh。最も標準的な軸間35mmです。
35mmが多いと思っているのですが,当方の楽器をざっとあたっただけでも,36mm,39mm,40mmと全ラインナップ?がありました。軸間はぴったり合わせる事が鉄則です(そうでない場合は独立型にしないといけません)が,取り付け穴の方はぴったり合うことの方が少なく,仮に同じものを取り付け直す場合でも,安い楽器で手抜きする場合を除いては,穴を一旦埋めてから下穴をあけるのが普通の方法です。

穴の埋め方は簡単です。爪楊枝**にタイトボンドなどを付けて軽く打ち込みます。24時間待たなくても1時間程度で実用強度に固まりますので,出っ張りを削り落として平らにします。ニッパーなどで余分を切る時には不用意に引っこ抜いてしまわない様注意します。

ここのビスは,ホームセンターなどでは売っていません。短い特殊なものです。高級な糸巻きですと,ビス自体にも金メッキなどがされています。新品の糸巻きには付属していますので,これを使いますが,中古楽器などで正規のものがない場合はFanaさんで買います。

高級なものは,たいがいマイナス穴の皿ネジですので,ぴったり合うマイナスドライバーで丁寧に扱います。普及品は丸頭のプラスネジですので割と気楽です。

下穴の開け方ですが,これが意外と難物です。穴の位置が前のものとしっかりずれていれば良いのですが,古い穴を埋めたところと微妙なずれ方の場合,運が悪いと穴が曲がって行きます。特にデザインすっきりのマイナス皿ネジの場合には注意が必要です。


今回良い道具を発見しました。
蝶番ドリルというものです。

同じような状況は蝶番取り付け時にも発生する事象です。
よくやるのが,蝶番をあてがって取り付け穴に沿ってぐるぐると鉛筆で丸を描いて,そのセンターにドリル穴を開ける事です。しかし大概ずれます。

鉛筆のぐるぐる丸が必ずしも穴の位置を再現していない事と,かりにそれが正確でも穴を開ける際のセンタリングのずれです。ドリル位置は物理的に矯正してやらないと,自然に行きたいところ(こちらが行かせたくないところ)に行ってしまいます。下穴をキチンと取り付け穴にセンタリングしたいわけですが,ボール盤を使ってもずれます。位置決めもありますし,位置が正しくても,キリが細いので,木目の柔らかいところに吸い込まれていきます。当方従来は楽器の場合には木工キリを使っていました。ドリルよりマシな様ですがやはりずれます。

蝶番ドリルは,ドリル外周のガイドを蝶番穴(楽器の場合糸巻きプレートの取り付け穴)にあてがって下穴をあけますので,取り付け穴にしっかりセンタリングされます。付属のドリル刃も細くて,糸巻きのビス用にもちょうど良いです。ただし,ガイドが太いと全く用をなさないので,ガイドのテーパーがプレート穴にしっかり掛かる一番細いものを使う必要があるでしょう。

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これは文字通りの蝶番ドリル。ガイドが太いので糸巻き取り付けには不適。もっと細いものを使うか,テーパー部を削る必要があります。

*一般的な35mmを買ってしまってから気がついた失敗談です。 **桜井正毅さんがおっしゃっていた方法です。大きな穴の補修ではないのでマホガニーなどネック材と同じものを使う必要も特に無いのでしょう。爪楊枝の材質は普通柳です。
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Ujiki.oO --> PC発注時の返品条件を宣言する?

とても Ujiki.oO にとって懐かしい話題です。
 幼少期より気管支や皮膚が弱くて、体力もなくて、通学もままならず、外で遊べないから友達も出来ず、近所の女の子の家で遊ばせてもらう。 親は心配し、全寮制の高校へ進学。 その寮に捨てられていたギターを拾って、木が割れて糸巻き器具が、だらりとぶら下がり、演奏できる状態ではありませんでしたが、何とか修復し、青春の時代にギターを鳴らし、身近で美しい音をいつも感じたのは、とても大切な経験でした。捨てられていたギターに巡り合った運命に感謝しています。
by Ujiki.oO --> PC発注時の返品条件を宣言する? (2022-06-19 09:50) 

Enrique

Ujiki.oOさん,
確かそういう話でしたね。ゴンチチのどちらかの方とか,拾ってきた楽器を使っている人もいます(さすがにクラシックギター奏者ではそう言う話は聞きませんが)。今はいやな時代でゴミ捨て場のものを持ち帰ると窃盗になる恐れがあるので,拾うのも注意が必要ですが,むろん学校の寮なら大丈夫でしょう。
ちょっとしたキズでも捨てる方もいますがもったいない話です。楽器なんて補修して百年でも二百年でも使えます。
糸巻きなどの部品は言うに及ばず,本体ぐちゃぐちゃでも修復は可能です。手間に見合う楽器かどうかだけの事ですね。
当方のメイン楽器は専門家に20万円ほどかけて修理してもらいました。
by Enrique (2022-06-20 06:04) 

EAST

Enroqueさん

糸巻も消耗品で交換が必要になるものなのでしょうか。
ギア部分がスムーズに回らなくなればグリスでもさすことで、糸巻自体が使えなくなることはないのかなと思っていました。
また、ローラー軸間隔が長くなると、3弦や4弦はブリッジとローラー間の距離が長くなり、弦の張りの強さなどに影響しそうな気もします。
ちなみに私が所有しているギターは新品で購入したのですが、製作時に穴を開ける位置を間違えたようで埋めた後があります。購入時にはそこまで見ずに気がつきませんでした。


by EAST (2022-06-24 13:18) 

Enrique

EASTさん,
私はケチな性格なので,糸巻きをまるまる捨てることは滅多にやりませんが,安い楽器についている品質の劣るものは,錆びたり動かなくなるとまるまる交換します(それしか方法がありませんので)。
多いのはグレードアップもしくは,既存のものの整備です。高級な糸巻きでも長く使うと,ギヤがすり減ってきますので,ギヤだけ交換します。中古楽器で変なネジなどを使っている場合は純正品に交換します。
穴位置で張力が変わると気にする方がいますが,張力は弦高が大半です。穴間隔の数ミリの違いで張力が変わることはありませんが,製作家も顧客から注文があれば商売ですから対応せざるを得ないのでしょう。好みの糸巻きをつけるためにわざわざ穴位置を埋めて変更するのは私は頂けません。
交換する際はもちろんの事,整備した糸巻きを戻す場合でもユルユルになったネジ穴は一旦埋めるのが正しいやり方ですね。そんなにユルユルでない場合はそのまま戻すこともありますが。
by Enrique (2022-06-26 11:34) 

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